2017/10/15

変形労働時間制の時間外労働の把握

変形労働時間制における時間外労働は、日、週、変形期間の3段階で把握します。

その日の所定労働時間を超えて働いた時間、ただしその日の所定労働時間が8時間以下の日は法定労働時間の8時間を超えて働いた時間法定休日労働を除く(以下同じ)
その週の所定労働時間を超えて働いた時間、ただしその週の所定労働時間が40時間以下の週は法定労働時間の週40時間を超えて働いた時間日においてすでに時間外労働とした時間を除く
変形期間変形期間※における法定労働時間の総枠 ( = 暦日数※ × 40 ÷ 7))を超えて労働した時間日、週においてすでに時間外労働とした時間を除く

この各段階ではみ出した時間が、時間外労働となります。

注意・(変形)週休制における法定休日労働は、このカウントにいれず、135%割増計算の時間に算入します。一方、法定外休日労働は上の労働時間に算入します。法定休日はいつかについては、別ノート(法定休日とはいつか)に記載したので、ご参照ください。

※変形期間(暦日数):就業規則(労使協定)でさだめた期間
・1か月単位なら、2日~28日、月(28日~31日)

・1年単位なら、月を超え(29日~)、年(平年365日、閏年366日)以内の一定期間を変形期間とする。なお、1年単位における時間外労働は、日・週・年(変形期間)の3段階で把握するのであって、月ごとに把握することはありません。

週の起算については、次に述べるような特定をしていなければ、暦週の日曜にはじまり、土曜に終わる1週間です。ただし変形期間の第1週は1日(起算日)の曜日から土曜日まで、最終週は日曜日から末日まで、その週の端数日数でもとまる40時間を換算した総枠でもって、上の週40時間を読み替えたうえで、比較します(例:2日×40÷7=11.428時間を上の「週40時間」のところに置き換えて比較)。

これとは別に就業規則で次のように規定して週を把握することも可能です。すなわち毎月起算日から7日ごと、すなわち毎月1日起算なら1日~7日、8日~14日、15日~21日、22日~28日、そして29日から始まるそれぞれ1週間とする。この場合は、29日から末日までが、先に述べた端数週となります。この端数週が月末だけしかないため、曜日週でカウントする時間外労働時数と微妙に異なることがあります。なおこの場合でも、(変形)週休制の週の設定は動くことはありません。

このように、変形期間ごとに時間外労働を確定、清算します。

一方、変形労働時間制をとらない通常の法定労働時間における週において、賃金計算期間をまたいでも、第1週は前月の最終週の就労時数データ、たとえば法定休日を満たしたか、日の時間外としていない週累計労働時間といった、週間就労データをひきずってくることになります。同一週だからです。これに対し、変形労働時間制は、変形期間の末日で時間外労働を清算してしまうため、同一週でも次の変形期間の第1週は別週の扱いとし、7日ない週は端数週として扱います。

変形労働時間制の時間外労働の把握2において、具体的に数字をあげて変形労働時間制における時間外労働の把握を説明しました。

(2017年10月15日投稿 2022年8月14日編集)

関連記事(労働時間)

時間外労働のカウント 

変形労働における時間外労働の把握2 

産前産後休業、育児休業

産前産後休業

産前産後休業は、出産予定日前6週(多胎14週)から休み始められる労働者の権利(いつから休み始めるかは妊婦労働者がきめる)、出産日翌日から産後休業が始まり8週までが休ませる使用者の義務となります。実際の出産日は産前休業日に含まれます。予定日通りに出産することはなく、早く生まれれば、それだけ産前休業は短くなり、遅く生まれればそれだけ産前休業は伸びます。育児休業のような入社1年未満労働者利用不可といったことはありません。なお産後6週を経過後、休業者が希望するのでしたら医師の意見をもらって軽易な作業につくことができます。

育児休業

希望すれば産後休業の終わる翌日から1歳(さらに半年、そして2歳まで)育児休業に入れます。男性労働者も配偶者の出産日から育児休業に入れます。そのためには、休業開始ひと月前に申し出が必要です(会社が制度設計するならひと月より短い期間前申し出を可能とすることも)。なお、勤続1年未満不可といった資格判定は申出日を基準にして判断します。

休業中の年次有給休暇

上のこれらの期間は法定の制度、労働者の就業義務を免除しますので、法定の年次有給休暇を取ることはできませんが、工夫すれば、産前6週の前に年次有給休暇をあてて早くから休業にはいればいいことになります。なお次期年休付与の8割出勤率算定で、産休育休とも出勤扱いとなります。これは法で保証しています。

休業中の賃金

年次有給休暇以外の休業期間を、有給にするか無給にするかは企業が独自に決められますので、特別休暇と称して有給(年休ではない)にするのは、一向に差し支えありません。無給がほとんどで、ある程度の期間を区切って有給にしているところもあるでしょう。産休中は健康保険(出産手当金)から、育休中は雇用保険(育児休業給付金)から賃金の補填があります。

育児休暇

育児休暇とまちがって呼びやすいですが、「育児休業」とは別に「子の看護休暇」があり、育児するためのスポットの休暇でなく、あくまで病気看護・予防接種といった目的のためのもので、育児の休暇ではありません。ただH29.10施行改正法では、育児のための休暇を設けることが、雇用主の努力義務となりました。

よく見かける質問

妊娠予定の労働者からする質問ですが、いつから産休育休をとれるか、勤め先となる入社1年内育休拒否とのかねあいです。

産前休業は出産予定日を基準として6週(多胎14週)前ですが、産後休業は実際の出産日の翌日から8週の休業開始です。 

出産予定日が今年の10月10日としましょう。産前休業をがいつから始められるか計算に迷うところがありますが、曜日を手掛かりに6週さかのぼってみるといいでしょう。

出産日は、産前休業の範囲にいれるというルールがあります。今年の10月10日は月曜でその日が産前休業の最終日、6週前の始まりは火曜日(「火曜に始まり月曜におわる週」と週を単位にしてとらえる)にあたり、8月30日火曜日が産前休業の開始日と見当がつきます。

産前休業 8月30日~
10月10日
出産予定日10月10日

次に、産後休業ですが、実際の出産日の翌日開始です。出産前の段階では、産後休業は予定ですので、10月10日出産予定日に対し、翌日11日(火)開始の8週後である12月5日(月)までが、出産前の段階での産後休業予定期間となります。ここでは予定日から2日遅れることの12日水曜日に出産となったとしましょう。

出産日10月12日
産後休業10月13日~
12月 7日
出産予定日 10/10(月)産前休業開始日 8/30(火)
282930319/1
10
11121314151617
18192021222324
25262728293010/1
101112131415
実際の出産日 10/12(水)産後休業最終日 12/7(水)
101112131415
16171819202122
23242526272829
303111/1
101112
13141516171819
20212223242526
2728293012/1
10

翌10月13日(木)産後休業開始、「木曜にはじまり水曜の1週間」を単位に、8週後の水曜に終わるので、12月7日水曜日と見当がつきます。ちなみに、希望しての6週経過の職場復帰日は11月24日木曜日からです。軽作業してよいとのお医者さんの意見書を取り付けましょう。

育休の話にもどします。産後休業12月7日に終わるので、翌12月8日(木)から育休開始となります。

その1カ月前育休申出という会社のルールだとすると、おそくとも産休中の11月8日に申出なければなりませんが、入社がその1年以上前に入社(たとえば去年の11月8日入社)していれば、産後休と育休の合間をあけずにとれることになります。合間が空くなら年次有給休暇をあてさせてもらうか、欠勤となります。

(2017年10月15日投稿、2022年11月3日編集)

関連記事

2022年4月育児介護休業規定の見直し漏れ 

育児休業給付金の計算 


表の表示が崩れる場合は、横長画面か、ウェブバージョンでご覧ください。

労働協約と労使協定

似た用語なのか、裁判の判決理由でも誤用されてます。そこで両者の違いをまとめてみました。

労働協約とは、労働組合と使用者との間で結ぶ、労働条件他の合意書面です。根拠法は、労働組合法14条以下。合意すればどんな内容でも締結可能で、弱小少数組合でも労働組合であれば使用者と締結できます。合意事項は、その労働組合員と使用者を拘束し、締結組合に所属しない非組合員は対象外です(ただしその事業場の労働者4分の3以上組織組合を除く)。また労働組合のない事業所において、労働協約は結べません。

労使協定は、事業場の過半数労働組合、がなければ事業場過半数労働者代表とで結ぶ、使用者の違法行為への事前免責書面です。根拠法は、労働基準法他、 労働各法にあります。法令に規定している内容しか結ぶことができず、事業場ごとに、過半数組織労働組合と締結、当該組合がなければ、その事業場の過半数を代表する労働者代表を選出する必要があります。結べば、その事業場で行われる労働犯罪に対して、司直は手出しできません(例:届け出済み36協定により法定労働時間を超え協定時間まで働かせたこと)。しかし、労働協約と違い、労働条件の合意書面ではありませんので、免責された触法行為を労働者に命じるには、別途就業規則等発出根拠が必要です。

法令に根拠のない案件を労使協定と題して結んでも、その書面に免罰効果も、また集団的労働条件の合意書面にもなりません。就業規則に反しないのであれば、署名した労働者の個別労働条件の合意書程度の効果しかありません。

労働協約労使協定
根拠法:労働組合法根拠法:労働基準法ほか労働諸法令
労働組合と使用者との間で結ぶ労働条件他の合意書面使用者の触法行為への事前免責書面
労働組合、労働組合でありさえすれば弱小組合とも締結可事業場の過半数労働組合、がなければ事業場過半数労働者代表を選出のうえ締結。事業場過半数を制しない労働組合は不適格
締結した労働組合と使用者を拘束。労働組合員がその事業場の労働者4分の3以上だとその事業場労働者にも適用。それ未満は非組合員には不適用。免罰効果は締結事業場の全使用者に適用。協定だけでは民事上の権利義務は生じず、別途、労働協約、就業規則に規定が必要。
合意すればどんな労働条件を内容とすることができる法令に規定された事項以外を締結しても効力は発生しない

(2017年10月15日投稿、2022年5月9日編集)


関連項目

労働者過半数代表 

就業規則制定(変更)届 

労使協定の協定項目 

労使協定 

裁量労働制と残業代

裁量労働制は、何時間働こうと、残業代0円と、誤解されておりますが、全く違います。残業代(深夜・休日労働を含む)ウハウハな制度です。この制度を正確に理解した使用者は、労働者をだまして使うか、導入をあきらめるかです。

残業代といっても次のいくつかに分けられます。

平日(勤務日)残業

  これは、協定時間(1日のみなし時間)が8時間こえた時間を協定すれば、月間所定勤務日数倍した1.25割増賃金支払いとなります。
  協定時間を8時間以下と協定すると、実際の8時間超えて勤務しても、これについては残業代はつきません(※)。実態として残業しまくりの事業場は、次期協定時に実態にあった協定時間を締結することです。できなければ、協定締結決裂、通常の法定労働時間制に移行させましょう。使用者のいいなりになっていはいけません。

休日労働(法定外休日労働)

これは、協定時間(1日のみなし時間)分の賃金支払いとなります。日8時間、週40時間超えたところは、1.25倍の支払いとなります。ですので、1日8時間と協定してあれば、たとえ1分出社しても8時間分の労働としてカウントします。

休日労働(法定休日労働)

これについては、協定してなければ協定時間(1日のみなし時間、たとえば8時間)分の、別途協定してればその時間分の休日割増賃金支払い(1.35)となります。

深夜労働

上のいずれの勤務であれ、深夜(22時から翌朝5時)にあたる部分は、深夜割増の0.25部分支払いとなります。

注意

法定休日と法定外休日の違い、区別の仕方は、当ブログに書いてありますので、参照ください。

結局のところ※を拡大解釈して、オール残業代0円と誤解してるのです。休日、深夜労働でガッポガッポとなり、使用主はたまったものではありません。


(2017年10月15日投稿 2021年9月11日編集)



法定休日とはいつか

法定休日がいつか、この記事をお読みになる前に、ご自身の勤務先がどれにあてはまるか判断するガイドとして、要点を冒頭に書きます。

  • 週の起算曜日の定めの有無

あればその曜日、なければ日曜日が起算曜日となります。

  • 4週4日の変形週休制の適用の有無

あれば4週の起算日の定めがあるのでその日付から4週ごとに区切った枠内で判断、適用なければ原則の週休制ですので、週ごとに判断します。

  • 法定休日の曜日等特定する記述の有無

あればその日がその週(4週)の法定休日であり、それ以外の休日は法定外休日。

  • いずれの休日労働であれ35%以上の割増を支払う旨の記述の有無

法定休日を特定したものとして扱います(詳細は後述)。

以上の観点を、お勤め先の就業規則に記載がないか前もって洗っておいてください。以上で法定休日を特定できなければ、いつが法定休日か、引き続き下記の記事をお読みください。

休日とは

労基法35条に定める休日とは、週1日(以下「週休制」という)、また例外として4週4日(以下「変形週休制、または変形休日制」という)をさし、それ(ら)を法定休日といいます。それ(ら)以上に付与する休日を法定休日と言います。これら休日とは、使用者が指定する労働者の労務提供義務を免除された日のことです(広義の「所定休日」)。これら休日以外の日は、労働日となります。

休日(所定休日:広義)法定休日
法定外休日
(所定休日:狭義)
労働日

また休日は、暦日の0時から開始して24時間継続して与えなければなりません。これについては交替制等いくつかの例外があります。なお、労基法でいう休日とは前者の法定休日をさします。法定休日は0時からはじまるので、法定休日の前日から労働している場合、前日24時をもって前日始業からの労働は終わり、法定休日0時からのあらたな労働が開始されたものとして扱います。法定休日労働には時間外労働という概念はありません。日8時間超えてもすべて法定休日労働です。これが法定休日ですと、前日からの労働は0時をまたいで続いているものとして扱います。また法定休日労働が24時に達すれば、翌日が法定休日でない限り、法定休日労働は終わり、翌日0時のあらたな勤務の開始となり、日や週の労働時間のカウントに入ります。

一斉に休ませる休憩時間とは違い、休日を従業員全員にいっせいに与える義務はありません。年中無休の事業場では、各人別の休日カレンダーを組むことになりますが、あくまでも各人ごとに週休制(または変形週休制)を厳守せねばなりません。

代休や年次有給休暇とは

労働者が労働日の中から日を指定して休む日ですので、使用者が与える休日とは違います。代休・年次有給休暇をとってもその日は労働日のままで、休日にはなりません。別途その週(4週)に休日が確保されてなければなりません。

公休とは

公休という用語は、労働法関係にはありません。使用者のさだめるところによりますので労基法は関知しません。労基法は最低基準ですので、公休をどう定めるにせよ、労基法に反することはできません。

週とは

就業規則等に特に定めがなければ、暦に従い日曜にはじまり、土曜に終わります。変形週休制の場合は、4週の起算日を就業規則に規定しておかねばなりません(例:令和2年4月1日より開始)。任意にとった4週や、月に置き換えることはできません。

法定休日とはいつか

法は、週最低1日、または4週4日と定めているだけです。就業規則等で曜日特定してあればその日が法定休日となり、それ以外の休日は、法定外休日となります。

就業規則等で定めていない場合は次のとおりとなります。

法定休日がいつか特定してなくても、就業規則にいずれの休日労働に対しても、35%以上の割増賃金を支払う、との規定を設けてある場合は、週の最後の休日(変形週休制の場合は4週最後の4休日)を法定休日と定めたものとして扱います。(H6.1.4基発1号)

そういった定めもない場合は次のとおりとなります。

週の休日のうち、最初にやすめた休日がある場合、その日をもって法定の休日を与えたことになるので、他の休日は法定外休日となります。変形週休制の場合は実際にやすめた4休日を4週の最初から数えることになります。

週の休日が複数あり、週の休日をすべて労務に服した場合は、週の最後の休日が法定休日となり、その最後の休日も休めず労務に服したなら、法定休日労働として35%割増賃金の支払い対象となります。変形週休制も同様で、4週の最初から休日労働しており休めた休日がない場合、4週の最後にのこった4休日が法定休日となり(途中やすめた休日があれば、その日は法定休日としてカウントします)、労務に服した日は、35%割増賃金支払対象となります。なお、週枠(4週枠)が月や賃金計算期間をまたいでも、月や期間の切れ目に影響されず、その週枠(4週枠)での判断となります。

法定休日に労務に服し、35%以上の割増賃金を受けたなら、使用者は労働者を休ませたと同義になるので、追加の休日や代休を付与する義務は労基法上、使用者にありません。また代休を与えることでもってしても、割増賃金支払い義務が消滅するわけではありません。

以上みてきたことは、 Wikipedia「休日」(労働基準法)にも図表入りで解説されていました。

そのwikipedia 休日の記事が全面書き換えとなりましたので、古い記事を当ブログに転載しましたのでご覧ください。

労働基準法における休日 

36協定との関係

正式には「時間外労働、休日労働に関する労使協定」といいます。協定届(A4横長の所定様式)の中央枠下段に、休日労働に関する協定内容を記載させます(枠内上段は時間外労働。)。

この欄は、法定休日労働の協定内容のことです。法定外休日労働は法定労働時間を超えた部分につき枠内上段の時間外労働に含まれます。下段記載欄のひとつに「所定休日(広義)」はいつか、記載させますが、単なる労基署の参考事項です。

よって記載可能な法定休日労働の月間最大日数は理論上次のとおりとなります。

週休制で法定休日が

  • 曜日固定の場合:月5回まで
  • 曜日不特定の場合:月6回まで

変形週休制では

  • 曜日固定の場合:月5回まで
  • 曜日不特定の場合:月8回まで

また2019年4月労基法改正で、特別条項を記載させる36協定様式があらたに設けられたとともに、月100時間、複数月平均80時間も盛り込まれました。これらには、法定休日労働時間を含んでの判断となります。2010年改正時は、時間外月60時間超5割増し賃金対応につき法定休日を特定しておくメリットがありましたが、今回の改正では逆に特定しておくメリットがなくなったと言えるでしょう。なんとなれば、特別条項発動しようにも、時間外+法定休日労働ですでに限度時間超過していて、発動できないというケースもあり得るからです。その場合は、月の変わり目まで定時でかえらせ残業させないか、法定休日が曜日特定されているなら、その日に働きに出るかです(協定回数内に限る)。

給与計算期間との関係

法定休日に35%割増賃金つけて支払う、としているだけの就業規則(支払規定)の場合は注意が必要です。すなわち月(給与計算期間)の切れ目が週(4週)を跨いだ場合、いつが法定休日であるか、前月の勤怠データーを引っ張り出して、その月の最終週(4週制なら前月4週の起算日)からの休日労働の動向を把握しておかないと、正しい判断ができません。法定休日が確保されたとしても、週40時間超えがないかのチェックもかかせません。前月データーとの突合せから免れるには、いずれの休日労働にあっても、35%割増賃金を支払う、としている会社もあります。そうすると最初にも述べたように、その週の法定休日がいつかを押さえたうえで月間時間外60時間超えの50%割増もまた煩雑な処理になります。

(2017年10月15日投稿 2022年8月29日編集)

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労使協定

労働諸法にいう労使協定の締結について、締結手順について記載します。多くの使用者は便宜的にえらんだ代表とはいえない労働者に盲目的にサインさせて済ませていますが、有効期間中に紛争に発展して否定されては、使用者の免罰効果が生じず、労働犯罪者として処罰されかねません。

注意 なおここに記載した事項についてはなんらの保証を与えるものではありません。

まず、労使協定で誤解のもっともたるものは、「本社で締結すれば、支店・工場、末端の営業所に至るまで有効である」ということはありません。こういったパターンで有効に締結する手順も後述します。企業全体で過半数組織組合があっても、ある事業場で、労働者の過半数にたっしていないない事業場には効力はありません。そういった事業場には、別途下にのべる過半数労働者代表を選出する必要があります。

また、労働協約と区別がつかない、あべこべに使用する人がいます。労働協約とは、労働組合との合意文書のことです。その組合が事業場の労働者過半数を占めており、かつ労働諸法で言及のある協定であってはじめて、労使協定であり労働協約といえます。労働諸法に定めのない条項を過半数組織組合と締結しても、それは労働協約ですが、労使協定ではありません。また過半数に達していないのに、書面にしても協約ですが、労使協定を締結したことになりません。

前置きが長くなりましたが、手順です。

1.締結する協定内容を事業場に周知し、過半数の信任を得た代表を選ぶように促します。

ここでの過半数を計算する総労働者数は、その事業所の正社員、パートアルバイトを含みます。部長といった法41条管理監督者でも労働者数に入ります。派遣されてきている労働者は含みませんが、派遣されよそで働きに出ている自社社員を含みます。また在籍出向社員は、受け入れ送り出し双方に含みます。以上は、いわゆる選挙権で言う投票権者です。その数を集計して事業所の過半数がいくらであるか計算することになります。

次に立候補者にあたる被選挙権者に、法41条管理監督者を選ぶことはできません(ただし例外有)。いわゆる管理職者もこのましくないでしょう。この選出過程で、周知された内容を吟味させる意味合いもあります。複数立候補者が競い合うことで、自分の意見にそう立候補者を選ぶ、という民主的過程が大事です。なお、選挙権者は、その事業場に所属していることが絶対要件ですが、一方被選挙権者に管理監督者でない者という制約以外はありませんので、支店の従業員が、立候補した本社の同僚を選出する、というケースも可能です。

互助会代表を指名するのは不可、という解説が見受けられますが、会社が推薦指名したうえで、上の選出過程に会社が関与せずに事業所労働者過半数の信任をえさせれば、何の問題もありません。問題なのは、選出過程を踏んでないことです。

2.選ばれた代表と、協定内容を協議します。持ち帰りたい、ということであれば拒否できません。事業所規模によりますが1週間なり10日なり期限を切るといいでしょう。締結拒否されればそれまでです。

3.合意に達すれば署名押印します。協定書のそれぞれの控え、正副2部とりかわすようにします。協定書は就業規則同様、周知義務がありますので、事業場の労働者の見えるところに掲示するなりします。労基署届け出義務のある協定は、協定届を作成、届け出します。

協定の代表例(*は労基署要届け出、類似の制度を含む)

労働基準法関係
・賃金控除
*36協定(届け出受理が効力発生要件)
*変形労働時間制
・フレックスタイム制
・年次有給休暇の計画取得

育児介護休業法関係
・育児介護休業対象外労働者

高年齢者雇用安定法
・継続雇用の選定基準(H25.3.31までに締結のこと)

派遣法

・標準賃金(派遣元)

・受け入れ可能期間の延長(派遣先)

助成金関係にも労使協定がうたわれていますが、上の手順が必要です。

最後に、本社の協定が各事業所にも共通としたいなら、各事業所においても、本社選出代表を指名推薦したうえで、各事業所で過半数信任の選出過程を踏ませれば、企業単位の統一した協定書の締結が可能です。ただし、届け出義務のある協定は、届け出に耐える書面にして、事業場ごとの労基署に届け出ておくことが肝要でしょう。届け出を要しない場合でも、後々の紛争に備え、選出過程をふんでいることの証憑を残しておくことも必要です。

(2017年10月15日投稿、2021年12月26日編集)


関連項目

労働者過半数代表 

就業規則制定(変更)届 

労使協定の協定項目 

労働協約と労使協定 

変形労働時間制と休日の関係

変形労働時間制と法定休日(週休制・変形週休制)とは別個の制度であって、次に述べる以外、両者の関連は無いです。前者は労働時間の、後者は休日の制度です。後者は

週休制:1週最低1日の休日(法35条1項)付与を義務付け、こちらが原則。
変形週休制:4週の起算日を就業規則等に特定することにより、特定4週ごとに最低4休日をもけることで法を満たし、原則である週休制の例外となる(法35条(2)、規12条の2(2))。変形休日制ともいう。

の2つに分けられます。



変形労働時間制と週休制の両者がわずかにかかわるのは、1年単位の変形労働時間制において、週休制をさらに制約した休日設定を求めているところにあります。通常は6連勤を最長とし休日をはさまなければなりません。さらに繁忙期として特定期間を協定にもりこめば、週1日の休日をあたえればよいというのであって、これは週休制そのものです。よって、1年単位の変形労働時間制においては、変形週休制は組めない。(なお、1年単位の変形労働時間制の6連勤における週の刻みは、週休制の起算曜日とは別に、変形期間の初日の曜日とすることに注意。)


また、1か月単位の変形労働時間制を組めば、自動的に変形週休制が適用される、ということもありません。変形期間を4週にしているならともかく、暦月を単位にすれば、4週の区切りとずれていくのが自明であり、労働時間制とは別に、4週ごとに法定休日4日を要求される。月4日と言い換えるのは誤りである。さらに就業規則では4週の起算日の明記を要求されている(労基法規則12の2(2))。任意に区切った4週ではない。起算日の記載がない就業規則の元では、原則の週休制でしかない。

1年単位にしろ、1か月単位の変形労働時間制にしろ、週の起算日は変形期間初日の曜日起算となり、これは労働時間のカウントに用いられる(*)。しかし休日の週は変形労働時間制の初日が何曜日はじまりとなっても、かわることなく同一曜日不変である。よって労働時間をカウントする週と、休日がいつあるのか判別する週区切りとはずれても支障はない。

注意

*週の起算曜日固定で、変形期間の第1週を7日未満で労働時間をカウントすることも可能。この場合の週法定労働時間は、7日未満日数で求まる時間に置き換える。 暦日数×40÷7

以上みてきたとおり、変形労働時間制は労働時間の制度、週休制とは別物です。

(2017年10月15日投稿 2021年4月30日編集)


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