2021/10/31

年次有給休暇の付与数と保持数の変転


ある人の年次有給休暇の保持数の変転について具体例をあげて説明します。ここでは、平成31年1月1日入社、勤続0.5年からの法定付与で説明します。毎年8割出勤率はみたしているものとします。また時効は付与してから2年で消滅するものとします。

付与日勤続0.5年   保持数
R1.7.110日付与   10日
 5日取得勤続1.5年   
R2.7.1残5日11日付与  16日
 4日取得 勤続2.5年  
R3.7.1残1日消滅残11日12日付与 23日
  11日取得4日取得勤続3.5年 
R4.7.1 残0日残8日14日付与22日
 勤続4.5年 5日取得  
R5.7.116日付与 残3日消滅残14日30日
  勤続5.5年 7日取得 
R6.7.1残16日18日付与 残7日消滅34日
 16日取得3日取得勤続6.5年  
R7.7.1残0日残15日20日付与 35日
  15日取得1日取得勤続7.5年 
R8.7.1 残0日残19日20日付与39日
 勤続8.5年 19日取得  
R9.7.120日付与 残0日残20日

40日

新規付与から減数する方式で、保有数の推移を表にしてみました。毎年の保有数が増えないことは一目瞭然です。

付与日勤続0.5年   保持数
R1.7.110日付与   10日
 5日取得勤続1.5年   
R2.7.1残5日11日付与  16日
  4日取得勤続2.5年  
R3.7.1残5日消滅残7日12日付与 19日
  3日取得12日取得勤続3.5年 
R4.7.1 残4日消滅残0日14日付与14日
 勤続4.5年  5日取得 
R5.7.116日付与 残0日残9日25日
 7日取得勤続5.5年   
R6.7.1残9日18日付与 残9日消滅27日
 1日取得18日取得勤続6.5年  
R7.7.1残8日消滅残0日20日付与 20日
   16日取得勤続7.5年 
R8.7.1 残0日残4日20日付与24日
 勤続8.5年  19日取得 
R9.7.120日付与 残4日消滅残1日

21日

別の人の例を別の形にて説明してみます。先に説明した労働者有利な付与、消化のさせかたでの推移です。

勤続0.5年目
10日付与
                     
勤続1.5年目
6日取得4日繰越11日付与、残15日
                                           
勤続2.5年目 
5日取得10日繰越12日付与、残22日
                                                         
勤続3.5年目
5日取得5日時効消滅12日繰越14日付与、残26日
                                                                   

(2021年10月31日投稿、2023年9月15日編集)

関連記事(休暇)

年次有給休暇制度の詳細 

年次有給休暇の付与日数 

年次有給休暇管理簿 

年次有給休暇時季指定義務の事業主対応 

年次有給休暇の時季指定義務(規定例) 

計画年休 運用上の論考 

表の表示が崩れる場合は、横長画面か、ウェブバージョンでご覧ください。

2021/10/09

労働法関連の改正時期一覧

労働関連法規の改正時期の一覧です。改正法が施行された時期はわかった範囲で追加します。労働法の回答をしていると、いつから施行になるのか、なったのかを押さえておかないといけないことがままあります。

労働基準法
公布時期内容施行時期
R5/3/30
  • 雇入れ時交付書面記載事項
  • 裁量労働制の拡充
( 施行規則変更による。交付書面裁量労働制
R6.4.1
R2/3/31
R2.4.1
H30/7/6
  • 年次有給休暇の年5日使用者への時季指定義務
  • フレックスタイム制の清算期間3カ月拡張、総枠時間の例外労使協定化
  • 高プロ制導入
  • 36協定の時間外協定限度時間数の法定化、休日労働を含め絶対上限時間の設定(中小企業R2.4より適用、建設、自動車運転、診療医師、新製品技術開発はR6.4より一部適用)
  • 時間外月60時間5割増し賃金の中小猶予廃止(同R5.4より適用)
H31.4.1
H24/10/26
  • 有期雇用契約締結時における更新の有無および判断基準の交付書面への記載が、法令上の義務に
(紛争防止基準から施行規則へ移行による変更
H25.4.1
H20/12/12
H22.4.1
H19/12/5
H20.3.1 
H18/6
  • 女性の坑内労働禁止ほか緩和
 
H15/7
  • 有期雇用の期間上限1年を原則3年(例外5年)に延長
  • 1年超契約の1年経過後任意即日退職を可能
  • 大臣告示として有期雇用の締結更新雇止めの基準
  • 解雇濫用法理、解雇事由明示
  • 就業規則に解雇事由明記
  • 裁量労働制の改正
H16.1.1
H11/12
  • 中央省庁改革により労働大臣を厚生労働大臣に変更
 
H10/9
  • 契約期間の上限
  • 労働条件の明示
  • 退職証明に退職事由を追加
  • 変形労働時間制の整備
  • 労使協定により一斉休憩解除
  • 時間外労働の限度時間の基準
  • 企画型裁量制と労使委員会
  • 年次有給休暇、2年6カ月超えて2日逓増
  • 就業規則の別冊制限の撤廃
  • 周知義務に労使協定労使委員会決議をくわえる
  • 8条の業種列記を別表へ
H11.4.1
H9/6
  • 多胎妊娠の産前休を10週から14週に延長
  • 女性の時間外休日深夜労働の見直し
 
H5/7
  • 一部猶予を除き週40時間完全実施(H6/4)
  • 1年単位の変形労働時間制の導入
  • 割増賃金率を政令で決める
  • 裁量労働制の対象業務を省令で定める
  • 年次有給休暇制度 初回勤続6カ月に短縮
  • 同 出勤率において育休を出勤扱い
 
H3/5
  • 育休法制定により育休期間の平均賃金計算の期間賃金控除
 
S62/9/26
  • 法定労働時間の短縮(週40時間へ順次短縮)
  • 各種変形労働時間制の導入
  • 事業場外、裁量労働制
  • 年次有給休暇制度の改正(6日から10日へ)
  • 短時間労働者への比例付与、計画年休、不利益取り扱い禁止
  • 通貨以外の賃金支払
  • 退職手当の就業規則記載、時効を5年に延長
S63.4.1
S60/6
  • 女子保護規定の見直し
S61.4.1
S51/5
  • 雇入れ時賃金の明示が書面交付義務となる
 
S47/6
  • 労働安全衛生法の制定により、43条から55条を削除
 
S40/6
  • 労災保険法の大幅改正により労基法との関係を整理
 
S34/4
  • 最低賃金法の制定により28条~31条を削除
 
S33/5
  • 第7章技能者育成の規定が、職業訓練法にとりこまれる。
 
S27/7
  • 社内貯金、賃金控除、年次有給休暇賃金の労使協定方式を取り入れる。
 
S22/4/7

労働基準法公布

S22/9/1(一部11/1)
制定前
  • M44 工場法 制定 T5施行
  • M38/7 鉱業法施行
  • T11 健康保険法制定
  • S13 商店法制定
 
労働契約法
公布時期内容施行時期
H30/7/6
  • 不合理労働条件の禁止を、パート有期労働法に移記(働き方改革法による)
R2.4.1
H24/8/10
H25.4.1
H19/12/5

労働契約法公布

H20.3.1
高年齢者雇用安定法
公布時期内容施行時期
R2/3希望者を70歳まで働ける就業の場提供を努力義務とするR3.4.1
H24/9/5原則希望者全員の65歳までの雇用を義務化。例外措置として施行前に締結してあった労使協定があれば、厚生年金報酬比例部分支給開始年齢にあわせ引き上げることで選別適用可能に。義務違反企業名公表H25.4.1
H16これまで努力義務だった65歳までの雇用確保措置の段階的義務化(厚生年金定額部分支給開始年齢引き上げにあわせる(施行当時62歳))。例外措置として労使協定締結で、選別条件設定を可能に。締結不調でも、施行後3年(中小は5年)間就業規則での規定化を可とする。H18.4.1
H1265歳までの雇用確保措置を努力義務化
(参考)公的年金制度の改正。2013年度から2024年度にかけ厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢を60歳から65歳へ段階的に引き上げる(女性は5年遅れ)
H12.10.1 
H660歳未満定年制を禁止。努力義務だった60歳定年の義務化が始まる。
(参考)公的年金制度の改正。2001年度から2012年度にかけ厚生年金の定額部分の支給開始年齢を60歳から65歳へ段階的に引き上げる(女性は5年遅れ)
H10.4.1
H1定年後65歳までの雇用継続の努力義務が新設 
S61「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」を全面改正した「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(「高年齢者雇用安定法」)により60歳定年が努力義務にS61.10.1
育児介護休業法
公布時期内容施行時期
R3/6/9
  • 有期雇用の取得要件緩和
  • 育休取得の個別勧奨周知の努力義務から義務化(以上R4.4.1施行)
  • 出生時育児休業の創設(出生8週内に4週以内の休業
  • 育児休業の分割取得可能に(前項を除き2回可能)
  • 休業申し出2週前に短縮
  • 休業延長の開始日要件緩和
  • 休業中の就業可能に
  • 育休取得の個別勧奨周知の努力義務から義務化へ
  • 取得状況の公表義務付け(対象1,000人超企業R5.4.1施行)
R4.10.1
R1
  • 子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得が可能
  • 同 全労働者の取得が可能
(施行規則改正による)
R3.1.1
H29/3/31
  • 育休最大2歳まで延長可能に
  • 育休取得の個別勧奨周知の努力義務
  • 未就学児の育児目的休暇設置の努力義務
H29.10.1
H28/3/31
  • 93日の介護休業3分割取得を可能に
  • 子の看護休暇・介護休暇の半日単位を可能に
  • 介護短時間勤務を利用開始3年内2回取得可能に
  • 介護の所定外労働免除の新設
  • 有期雇用の育児休業・介護休業取得要件の緩和
  • 特別養子等育児休業の対象に
  • マタハラ等防止措置の義務化
H29.1.1
H21/7/1
  • 3歳までの短時間勤務制度制定義務化
  • 未就学複数児の子の看護休暇10日
  • 1歳2カ月までのパパママ育休プラス
  • 8週までの父育休再度取得可能
  • 子の擁護者のいる育休取得不可の廃止
  • 介護休暇の新設
H22.6.30(100人以下企業H24.7.1)
H16/12/8
  • 有期雇用者に適用
  • 育休期間の1歳半まで延長
  • 子の看護休暇義務化
H17.4.1
H13/11/16
  • 時間外労働の制限
  • 短時間勤務制度措置(3歳未満まで伸長)
H14.4.1
H7/6/9
  • 介護休業をとりこむ
H7.10.1
H3/5/15

育児休業法制定

  • 育休1年
  • 短時間勤務制度措置(1歳未満)義務化
H4.4.1(30人以下企業H7.4.1)
S61
  • 勤労婦人福祉法が男女雇用機会均等法に
 
S47
  • 勤労婦人福祉法 育児休業等育児に関する便宜の供与の努力義務
 

  育児休業法に関する厚労省サイト

(2021年10月9日投稿 2024年3月1日編集)

関連項目

労働者派遣法の沿革 

雇用保険制度の沿革 

古いままの就業規則 

労働契約法の変転 

2021/10/02

年次有給休暇制度の詳細

年次有給休暇をどう付与運用するかは、就業規則の絶対記載事項のひとつとして規定しておかねばなりません。単純に付与する日数を決めるだけでなく、種々のケースに対応できるように、これまでの法改正を踏まえ、また将来の改正にも柔軟におうじられるよう、制度設計しておく必要があるでしょう。

そのための理解の一助として、労働基準法制定当初から、制定法をめぐる労基署と本省との質疑応答に目をとおしておくことも有益です。お読みになるときは、下記投稿編集日付当時の内容であることにもあわせて注意されてください。内容の正確性については通達本文が優先することとし、このサイトの文章は理解の足掛かりにされてください。

年次有給休暇の通称略称を{有給」「有休」と表現される場合が多いですが、ここでは「年休」と略して記載しています。通達は法令ではありませんのでのちの裁判により否定されることもあります。確定裁判により、通達が補強または変更されて発出することがあります。基発:労働基準局長名の通達、基収:同職の疑義に答えてする通達です。一部学説等からアレンジして補足しています。

概要

休日は労働義務のない日ですので、休日に年休を取得することはできません。使用者責めの休業日に年休を与えなくても違法ではありません。逆にその日に労働者の請求で年休を認めてもさしつかえありません。年休の昨年付与の繰り越し分と当年付与分とがある場合、取得によりどちらを先に減数するかは、当事者の取り決め(就業規則など)によります。

「時期」でなく季節を意味する「時季」という用語からして、まとまって休暇取得を予定した法制度です

入社時付与

法定の入社半年経過する前に年休付与することも可能です

一斉付与の扱い

  • 法定付与:各人の入社日を基準に勤続6カ月経過後に初回付与、以後1年ごとに出勤率8割以上の労働者に法定数を付与
  • 一斉付与:法定付与にかえて全労働者に一律の基準日を設け年休付与する制度。初回は6カ月経過前基準日と6カ月経過の遅い方にあわせる、あるいは年2回基準日といったパターンもあり。
  • 分割付与:初年度の一括して与えるのでなく、法定日数の一部を基準日以前に付与し、残りを基準日までに付与する制度

一斉付与、分割付与にあたって8割出勤算定の期間が1年(入社時は6カ月)より短縮された場合、短縮された期間は全出勤したものとして計算します。次年度以降の付与日は、初年度の繰り上げた期間分繰り上げ、またはさらに繰り上げて付与します。すなわち次回付与は1年内に付与しなければなりません。逆に言えば、合間が1年超えてからの付与は違法となります。分割付与の起算日は最初の付与日となり、その1年内に次回付与とします

法定を超える年休付与

法定の付与数を超えて付与する会社独自の付与日数の年休は、法とは異なる労使間で定める取り扱いとできます。それが、法より劣っても差し支えありませんブログ者注:法定の年休より劣った取扱(例:1年で消滅)にすると、年5日時季指定義務の控除対象とならないと考えられ、そちらから優先して労働者の取得が進むと時季指定義務の障害となりえます。法定と同一または法定消化後付与としておくことがおすすめです。ただし就業規則変更するにも合理的理由が必要です。また法定を超える日数に対しては、買取も可能となります。

付与における勤続年数

継続して雇用関係にあるかどうかは実態に即して判断します。次の場合は継続しているものとして扱い、年休付与の勤続年数は通算します。

  • 定年退職後、引き続き嘱託等で再雇用(相当期間空いている場合を除く)
  • 法21条に該当する労働者を引き続き雇用している場合
  • 臨時工が有期契約更新し引き続き6カ月経過した場合
  • 在籍出向者
  • 休職中の者が復職した場合
  • 非正規労働者を正社員に登用した場合
  • 解散した会社を包括的に新会社に承継した場合
  • 全員解雇し、一部再採用して事業を継続している場合

8割出勤率関係

遅刻早退しても、労働日の一部に出てきたことにより、出勤した日として扱います。賞与規定や退職金規定によく見られる「遅刻早退3回につき1欠勤に換算する」ということはできません。

8割出勤率を求める際の全労働日とは、計算期間中の暦日数から、就業規則等できめられた所定休日数をのぞいた日数とします。労働者ごとに異なることがあります。所定の休日に労働させた日は、全労働日に含まれません

労働者の責に帰すべき事由によらない不就労日は、出勤率の算定に当たって出勤日数(分子)に算入すべきものとして全労働日(分母)にも含まれ、すなわち全出勤したものとします。たとえば解雇無効の判決確定、労働員会の救済命令による使用者の解雇取り消しによる、解雇日から復職日までの不就労働日数

当事者間の衡平の観点から出勤日数(分子)、全労働日数(分母)に含まれないもの

  • 不可抗力による休業日
  • 使用者起因する経営管理上の休業日
  • ストライキ等争議行為による不就労日

勤続6か月目からの1年間、出勤率8割未満で付与日数0としたとします。次の勤続1年半からの1年間、出勤率8割以上での付与は11日でなく12日です

出勤率計算にあたって、年休でお休みした日は出勤したものとして扱います

法定の産前産後休業期間中は出勤扱いですが、出産予定日に遅れて出産し6週を超える産前休業も、出勤扱です

生理日休暇日を欠勤と扱うか出勤と扱うかは雇用契約、就業規則、労働協約によります

法37条代替休暇と年休は別物です。1日代替休暇した日は、年休8割出勤率算定にさいし、全労働日数に加えません

出勤率8割に満たない労働者への付与数0日は新規付与についてであって、繰り越してきた分には影響しません

スト等でいったん解雇され、のちに取り消しを受け復職した労働者には、いわゆる解雇期間中は事業主責めの休業全出勤したものとして扱います。その出勤率算定の1年間所定労働日が0となる者は、年休付与はありません

短時間労働者への比例付与

年度の途中で契約勤務日数の変更が行われた労働者には、次回付与基準日に所定契約日数と勤続年数に応じた新たな付与をすればよく、保持している日数に調整は入りません

計画年休関係

労使協定による計画年休日において労働者は時季指定権を、使用者は時季変更権を共に行使できません

計画年休協定で盛り込む事項として、

  • 一斉休業の場合は、具体的な日付
  • 班別の交替付与の場合は、班ごとの日付
  • 個人ごとの付与の場合は、期間、手順

入社日に5日、6カ月後の基準日に残り5日分割付与する労働者に、入社6カ月内に計画付与する年休はありません

一斉休業の計画年休に、年休の日数を保持しない労働者を休ませた場合、使用者責めの休業手当の支払となります

計画日前に退職する労働者には、計画日分の年休を取得できます

計画年休にあてがう年休は、個人が保持する5日を超える部分です。足りないもしくは年休がない労働者には、付与日数を増やす等の措置が必要ですブログ者注:この他に、特別の有給休暇、休業手当の支払い、出勤させて労務提供させるといった施策もあるでしょう。

5日を超える部分は、新規付与分のみならず繰越分を含みます

時間単位年休

実施する事業所において労使協定締結により導入できます。日単位で取得するか、時間単位で取得するかは、労働者の意思によります。労使協定締結により実施する場合でも、就業規則「休暇」として時間単位年休に関する記載が必要です。時間が単位ですので、時間未満の分刻みの制度とすることはできません。

労使協定の記載事項として

  • 対象労働者の範囲
  • 時間単位年休を与える日数(最大5日)
  • 1日分の時間数(所定労働時間。うち時間未満切り上げ。日ごとに一定しない場合は、年間平均所定労働時間をもってする)
  • 1時間以外を単位とする場合の時間数

利用目的に限定を設けることはできません。時間単位も時季変更権の対象です。日で請求して時間でとらせること(逆も同様)は時季変更権の行使でありません。時間単位をとれない時間帯を定めること、1日にとれる時間数の上限をさだめることはできません(ブログ者注:下限は労使協定でさだめることができます。ただしその単位時間数倍の取得となります。)。時間年休は計画年休の対象になりません。休暇時間の賃金は、その日の所定労働時間で除した額です。従前からの半日年休に変更はありません

5日をこえて時間年休取得させる場合またはした場合、会社独自の有給付与とし、法定付与数から減じることはできません。会社独自付与をもって分単位とする運用はできるでしょう。

年5日の時季指定義務

法定の10日以上付与した日から1年が対象です。その1年内に労働者が5日先行して取得した場合、計画年休で5日以上取得した場合は、使用者の義務は免れます。前倒しで10日以上付与する場合は、その日からの1年となります。その1年が経過するまでに新たに10日以上付与して重複期間が生じる場合、最初の付与日とあとから付与した1年が終わる期間の長さに比例按分した日数でもってすることができます。入社時分割して付与する場合は、10日に達した日からの1年とし、達する前に労働者が取得した日数もカウントできます。半日年休については、労働者が取得希望する分については対象とします。使用者が時季指定するにさきだって、労働者の意見を聞き、意見にそった指定をすることが望まれます

時季指定は、1年の期首に限らず、当該機関の途中でも可能です。対象となる労働者は、繰越をふくめた保持日数でなく新規付与が法定の10日以上の労働者です。時間単位で指定することは認められません。労働者が自ら取得した半日単位で取得した日数は0.5日としてカウントします。半日単位での指定は、労働者に意見を聞き労働者が希望した場合に限ります。時間単位の取得は、5日義務にカウントされません。育休から復帰した労働者にも期末までに時季指定の対象となります(復帰して期末までに5労働日に満たない場合を除く)。先行して5日取得した労働者に、時季指定することはできません。逆に時季指定が先行して、その指定日より前に労働者が取得5日に達しても、先行した時季指定は、労使の特段の定めがないかぎり有効です。特別の有給休暇は、時季指定義務の対象とならなりません。だからといってその特別休暇を廃するには、合理的理由が必要です。時季指定義務の対象労働者の範囲、指定方法についても、就業規則の記載事項です

短時間労働者への比例付与で、法定の10日未満のところ上乗せして10日以上付与しても、年5日指定義務の対象となはならない

高度プロフェッショナル労働者も時季指定義務の対象です

入社日が不明な者

本人に問合せる、同僚の証言を取り付けるなど、入社日を確認をしてください

2日にわたる勤務者

  • 1昼夜交替勤務は、1勤務を2労働日として扱います。
  • 交替勤務の日を跨ぐ場合、常夜勤者は、当該勤務を含む始業から継続24時間を1日として扱えます。
  • 交替勤務で番方変換日に連勤、超過勤務する場合、労働時間の長さにかかわらず1労働日として扱う

半日年休

年休は1労働日を単位とするから、使用者は半日単位で付与する義務はありません

長期療養と休職

私傷病で長期療養にさいし年休取得はできます。一方で、労働義務がないとする休職期間中に年休を請求することはできません

振り替え

労働者が欠勤したあとから労働者の求めにより年休に振り替えることは違法でなく、就業規則にその定めを記載する必要がある

育児休業との優劣

育児休業を後出しで申し出てきた労働者が、先行した年次有給休暇を取り消さない限り、先行の年休が優先され、賃金支払い日となりますブログ者注:休業申し出と計画年休の労使協定締結も同様に、申し出と締結の後先によるでしょう。協定が先なら労働者の取り消しはできず、協定の計画日が優先、ただし協定に計画期間だけがあり具体的に休む日を個別労使協議となるならその協議と育休申し出の後先によることになるでしょう。

ストライキと年休

正常な労使関係にあっての休暇取得ですので、次のいずれでも差し支えありません。

  • ストライキ目的での休暇請求に対し、使用者は拒否すること
  • 年休指定した日に実施されたストに参加した場合、取得を認めないこと
  • スト参加後、その日を年休に振替請求したことを認めないこと、あるいは認めること

解雇(退職)との関係

労働者は解雇予告を受けたら、在職中に行使しないと年休の権利は消滅します

使用者は解雇予告日(最終在職日)を超えて時季変更権を行使できません

ブログ者注:通常の退職における退職日との関係においても同様でしょう。退職者に退職日まで全休されるのをふせぐ最善の対策は、業務を属人化させないで共働対策をとる、業務のマニュアル化および最新化、そして何よりも付与したその年のうちに全部使い切らせることです。事業継続リスクを軽減するイロハを常に志向するにつきるでしょう。

時季変更権の行使

事業の正常な運営を妨げるかは、個別、具体的、客観的に判断します。事由消滅後は速やかにあたえなければなりません。変更権は、労働者の意に反して行使すること、年度をまたいでの行使も可能です。

派遣社員と年休

派遣社員の年休行使対し、時季変更権を行使できるのは、派遣元です。派遣先の事情にでなく、派遣先に代替社員を送り込めない、といった派遣元の正常な運営をさまたげるかで判断することになります

休暇日賃金関係

休暇日の賃金は、就業規則にあらかじめ次の3つの中から選択して規定し、賃金を支払います。

  • 通常働いた時間分の賃金
  • 平均賃金
  • 健康保険の標準報酬日額

平均賃金の場合、日額満額支給であって、6割を乗じることはありません。標準報酬日額を選択するには、事業所ごとに労使協定締結を要します。

通常の時間分の賃金には、時間外割増賃金は含みません。月給者については、所定の労働時間働いたものとして減額しないで所定の賃金を支払えば、休暇日賃金をかさねて計算する必要はありません

変形労働時間制の時給者に支払う休暇日の通常の時間分の賃金とは、各日の所定時間分の賃金です

平均賃金算出にあたって、週払い、月払いのたとえば家族手当、通勤手当が含まれる場合、休暇日賃金から当該手当の1日分相当分を差し引いて支給してよく(差し引く計算は労基法規則19条による)、計算せず2重払いしてもかまいません

平均賃金算定する3カ月間に年休取得日と、休暇日賃金を含みます

通常の賃金と歩合給の関係

法規則25条6項を適用する歩合給総額を総労働時間で除し、1日平均所定労働時間を乗じた額を計算するにあたり、6項中「賃金がない場合」とは欠勤等で労働日が0日で歩合給0円のケースを指します

年休と買い上げ

買い上げを予約し、年休を与えない、もしくは日数を減じることは法違反です

退職にあたって未使用分を買い取ることまでは違法ではないですが、取得抑制をまねき好ましくありません。法定を超える付与日数の未消化分に対しての買取はさしつかえありません。

年休の時効

年休の未取得分は、2年の時効が認められます

繰り越さないと就業規則に定めても、時効にかからない分は消滅しません

入社日に5日、6カ月経過後に残りの5日を付与した場合の時効起算日は、それぞれ付与した日となります

近時の労基法改正で、時効が5年(当面3年)に伸長されましたが、年休権は2年のままです。伸長されたのはあくまで金銭債権ですので、年休行使し、お休みし、休暇日賃金が支払われなくて、はじめて時効3(5)年が適用されます(支払日が改正法施行後の部分から)。

年次有給休暇管理簿

  • 時季(取得日付)
  • (取得)日数
  • 基準日(付与日のこと、付与から1年内に第2基準日もあれば併記)

を労働者ごとに明らかにした帳簿を作成し、3年保存しなければなりません。賃金台帳、労働者名簿と合わせて作成することもできます

(2021年10月2日投稿 2023年9月1日編集)

投稿記事ピックアップ

猶予事業の36協定

2024年3月末日をもって、次の業種、業務の労働時間規制猶予が切れます。旧法で36協定を結べていたものが、新法適用となります。全面適用というわけで無く、適用されない部分もあります。その説明は別の機会にして、 建設事業 自動車運転業務 診療医師 結んでいる36協定がど...