2021/04/29

変形労働における時間外労働の把握2

法定労働時間の例外である変形労働時間では、時間外労働を

その日の所定労働時間を超えて働いた時間、ただしその日の所定労働時間が8時間以下の日は法定労働時間の8時間を超えて働いた時間法定休日労働を除く(以下同じ)
その週の所定労働時間を超えて働いた時間、ただしその週の所定労働時間が40時間以下の週は法定労働時間の週40時間を超えて働いた時間日においてすでに時間外労働とした時間を除く
変形期間変形期間※における法定労働時間の総枠 ( = 暦日数※ × 40 ÷ 7))を超えて労働した時間日、週においてすでに時間外労働とした時間を除く

の3段階で把握します。

なお変形期間の総枠だけで時間外を判定することはできません。かならず、日、週、変形期間の3段階での判定に付します。週については就業規則に規定してなければ、暦に従い日曜に始まり土曜日で終わります。なお、法定休日とした日(0時から24時まで)の労働はこのカウントには入りません。

それでは具体的に数字をあげて見ていきましょう。(カッコ書きで週累計時間を記載していますが、週の時間外労働算出する計算過程をわかっていただけるように列記しました。)

 所定労働時間
実労働時間
時間外労働の部分
週(週累計)
 1水8:008:000:00(8:00)
 2木8:008:000:00(16:00)
 3金8:008:150:15(24:00)
 4土休日8:000:008:00
 5日休日休日0:00(0:00)
 6月9:009:000:00(9:00)
 7火9:009:000:00(18:00)
 8水9:009:000:00(27:00)
 9木9:009:000:00(36:00)
10金9:009:150:15(45:00)
11土休日3:110:003:11
12日休日休日0:00(0:00)
13月7:007:000:00(7:00)
14火7:007:000:00(14:00)
15水7:007:000:00(21:00)
16木7:007:150:00(28:15)
17金7:008:250:25(36:15)
18土休日4:350:000:50(40:00)
19日休日休日0:00(0:00)
20月8:008:000:00(8:00)
21火8:008:000:00(16:00)
22水8:008:000:00(24:00)
23木8:008:000:00(32:00)
24金8:008:150:15(40:00)
25土休日2:350:002:35
26日休日休日0:00(0:00)
27月6:006:000:00(6:00)
28火6:006:000:00(12:00)
29水6:006:000:00(18:00)
30木6:006:000:00(24:00)
31金6:008:450:45(32:00)
この月時間外合計1:5514:36

次に週ごとの数値を再掲してみましょう。

 週の所定労働時間(a)週の法定総枠(b)実労働時間(c:日で時間外とした部分を除く)週における時間外(cーmax(a,b))
第1週24:0022:5132:008:00
第2週
45:0040:0048:113:11
第3週35:0040:0040:500:50
第4週40:0040:0042:352:35
第5週30:0034:1732:000:00
   14:36

週別に解説しましょう。7日未満の端数週となる第1週、第5週はこのあとで説明します。

第2週:所定>法定、所定45時間を超えた3時間11分がこの週の時間外労働。
第3週:所定<法定法定40時間を超えた50分が時間外労働。
第4週:所定=法定、法定40時間を超えた2時間35分が時間外労働。

次に端数週は、法定労働時間40時間をその端数週の暦日数でもとめた時間数に置き換えします。通常の労働時間制ですと、日、週の2段階ですが、変形労働時間制は変形期間ごとに清算しますので、同期間をまたぐ週はそれぞれに切り分けての計算となります。

第1週:4日×40時間÷7=22.857(22時間51分)
第5週:6日×40時間÷7=34.285(34時間17分)
第1週:所定(24:00)>法定(22:51)、所定24時間を超えた8時間が時間外労働。
第5週:所定(30:00)<法定(34:17)法定34時間17分を超えた部分はない。
この変形期間の法定総枠 177:08(31日×40÷7=177.142)
総実労働時間:197:31

この総実労働時間から、日、週で時間外とした時間を控除し、法定総枠との比較で、変形期間での時間外労働を求めます。

197:31ー16:31(=日1:55+週14:36)=181:00
181:00ー177:08=3:52(変形期間総枠超え部分)

結果、この変形期間の総時間外労働:

20:23(=日1:55+週14:36+変形期間3:52)

【ご参考】

暦日数×40時間÷7日
暦日数計算値時間:分
(分未満切り捨て)
28日160.000160時間00分
29日165.7143…165時間42分
30日171.4286…171時間25分
31日177.1429…177時間08分

暦日数計算値時間:分
(分未満切り捨て)
1日
5.714…5時間42分
2日11.428…11時間25分
3日17.142…17時間08分
4日22.857…22時間51分
5日28.571…28時間34分
6日34.285…34時間17分
7日40.00040時間00分

最後に、フレックスタイム制で認められている総労働時間のうち法定総枠(31日の月なら177時間8分)超えたところから時間外労働とするのを、1カ月単位、1年単位の変形労働時間制にあてはめるのは間違いです。上の例では、たまたま一致したにすぎません(197:31-177:08=20:23)。たとえば月間所定労働時間160時間の月に毎日こつこつ45分残業し時間175時間に達したとします。フレックス制ではなるほど時間外労働0分ですが、変形労働時間制では、日8時間超えの45分20日残業したので、15時間分の時間外労働が発生しています。

(2021年4月29日投稿 2022年8月14日編集)
関連記事(労働時間)

時間外労働のカウント 

変形労働時間制の時間外労働の把握 

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2021/04/25

退職証明書・解雇証明書

退職する労働者の求めに応じ、退職証明書を発行せねばなりません。退職事由が解雇ですと、解雇証明書となるでしょう。いずれも労働基準法22条に使用者の義務として課しています。なお、記載内容は法定されており、それ以外のことを記載することは禁止されています。また労働者の求めであっても法定事項以外の記載に応じる必要はありません。なお労働者の請求をうけたら速やかに交付する義務があります。それが退職前でも同様です。退職してずいぶん前で、証明を要求してくる退職者がいても、退職日からみて時効の2年経過していないなら、応じる義務があります。次に法定項目を網羅した書式例を掲載します。

退職証明書

        殿

以下の事由により、上記の者は当社を令和  年  月  日(最終在職日)付けで退職した(する)ことを証明します。

令和  年  月  日

事業主氏名または名称
(使用者職氏名)
使用期間令和  年  月  日 ~ 令和  年  月  日
従事した業務の種類 
当社における地位 
賃金額        円
退職事由
1.自己都合退職(2を除く)
2.当社の勧奨による退職
3.定年退職
4.契約期間満了退職
5.移籍出向による退職
6.その他(     )
7.解雇
※該当する番号に〇をつける
退職が解雇の場合、その解雇事由
・天災その他やむを得ない理由により、事業継続が不可能となったため解雇(就業規則第〇条第〇号該当)
(具体的事実:               
※労働者が請求しない項目は斜線抹消する。
解雇証明書

解雇証明書として労働者から請求を受けた場合は、解雇事由として、就業規則記載のどの解雇事由に該当するか、そしてそれに該当する具体的事実をあわせて記載せねばなりません。また解雇事由は就業規則に記載しておかねば、解雇相当の事由であっても、解雇する事由なしとして扱われます。刑法にかかれていない行為を処罰できないのと同等です。今一度就業規則にあらゆる事象を想定して網羅対応させてあるか点検されるといいでしょう。

  • 天災その他やむを得ない理由により事業継続が不可能による
  • 事業縮小等事業場閉鎖による
  • 職務命令に対する重大な違反行為
  • 職務について不正行為
  • 勤務態度、勤務成績の不良
  • 相当期間の無断欠勤
雇止め証明書

有期雇用者を雇止めした場合、有期雇用者の求めに対し「解雇証明書」に代えて雇止めした理由を記した「雇止め証明書」の交付が、紛争防止基準に盛り込まれています。法定義務ではありませんので、法定事項以外、記載するかは任意となります。

(2021年04月25日投稿 2023年10月24日編集)

関連記事

労基法の有期雇用契約 

退職届と退職願 

就業規則案内見本 

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2021/04/18

復代理人

復代理人という制度があります。委任状の記載例が工事入札くらいしか見当たらないので、忘備録程度に作っておきます。

A:委任者
B:代理人
C:復代理人


委任状


(委任者)

住所
氏名    A     (印)

私は、下記の者を代理人と定め、次の権限を委任します。

年  月  日

1.○○の交付申請およびその受領に関する一切の件
2.復代理人を選定する権限

(受任者)

住所
氏名    B

受任者Bは、下記の者を復代理人と定め、上記1の権限を委任します。

年  月  日

(受任者)

氏名    B     (印)


(復代理人)

住所
氏名

委任状作成して、委任者Aに自署押印してもらうとき、表記の例で記名しておきます。Bに他用ができてほかの人に代わって行ってもらうときに一番下の空欄を利用することになるわけです。

(2021年4月18日投稿 2021年4月30日編集)

2021/04/03

高年齢雇用継続給付金

同一労働同一賃金とやらで、将来的には縮小廃止の方向がきまっています(※)が、簡単に制度説明してみます。


60歳になる前の最後の半年間の月平均賃金をベースに、60歳から65歳に達するまでの月々の賃金額が75%(低下率)を割り込むと、給付金が発生し、低下率61%で最高の給付率(15%)に達します。低下率に応じ給付率が算出され、算出された給付率(~15%)を月額賃金に乗じて給付額がはじき出されます。


ベースとなる60歳前賃金額には、下限額と上限額が決まっています。下限額を割り込む場合は下限額が、上限額を上回っている場合は上限額が60歳前到達賃金となります(*1 例:到達賃金が480千円なら上限額の478,500円(R4/8~R5/7値)に置き換わる。)。これら月額賃金には月割りの通勤手当も込みとなります。ただ6カ月定期券等でまとめて支払われるときは、60歳到達前賃金には含まれますが、60歳後の月々の賃金に計上されるのは、最初に支払われるときからとなります。


それをベースに60歳後の月々の支払賃金が何%低下したか低下率が求められ、それに応じて給付率が定められます。なお欠勤等で賃金を受けない部分があると、その部分は賃金支払いを受けたものとしてみなし賃金額でもって、低下率を算出します。それに対する給付率は実際の賃金に乗じます。

給付率に毎月の月額賃金を乗じた額が給付金となりますが、これにも最低支給額と最高支給額が決められており、最低支給額を下回ると給付金は0円、最高支給額を上回るとある計算式の下で減額となります(*2)。また特別支給の厚生老齢年金を受けていると、年金のほうが調整減額となります。

これら下限額、上限額、最低支給額は毎年8月に見直されます(表4参照)。2021年8月の上限額が一気にさがったのも、2020年のコロナ禍により労働市場へのダメージがいかに大きかったかがわかります。

60歳以降65歳前までの各月賃金額*1 ÷ 60歳前平均賃金月額 = 低下率%

低下率%(61%~75%) ⇒ 給付率%(15%~0%)

*1 × 給付率% = 給付額*2

*1+*2の和に限度額あり。上回ると限度額。各月賃金そのものが限度額を上回るときは、支給されない。(ブログ者注:現行計算過程では、この制限に達するケースはないと思われます。)

*2に最低支給額あり。下回ると0円

【表1】各月賃金同一で、60歳前賃金がことなる場合

60歳前賃金(千円)(a)480440400390
各月賃金(千円)(b)290
低下率(=b/a)60.4%65.9%72.5%74.4%
給付率(c)15.0%9.01%2.25%0.56%
給付額(円)
d(=b×c)
43,50026,1296,5250(*1)
補填率(=d/a)9.06%5.94%1.63%0%

注*1)最低支給額を下回ったので給付額は0円(上限額、下限額、最低支給額はR4/8当時の額をもって計算)

【表2】各月賃金が増減する場合

60歳前賃金(千円)(a)350
各月賃金(千円)(b)210230250260
低下率(=b/a)60.0%65.7%71.4%74.3%
給付率(c)15.0%9.24%3.27%0.62%
給付額(円)
d(=b×c)
31,50021,2528,1750(*1)
補填率(=d/a)9.00%6.07%2.34%0%

注*1)最低支給額を下回ったので給付額は0円(上限額、下限額、最低支給額はR4/8当時の額をもって計算)

概算にて説明しますと、最大乗率適用する15%は、6割賃金に乗じますので、40%カットに対し9%補填(=60歳前賃金×0.6×0.15)という関係です。60歳前賃金が上限額こえてますと、補填率は低まります。給付率15%でも、各月賃金に乗じますので、賃金そのものが低ければ支給額は低まります。


手続きは定年に達したとき、マイナンバー、本人確認(免許証コピー)、通帳コピーをそろえ勤務先に依頼してしてもらいます。以後、65歳に達するまでふた月に1度のペースでの手続きになります。なお受給資格の要件の一つに、有効な被保険者期間が5年以上ある必要があります。過去に失業して求職手続きをしたり、被保険者資格をもたずに1年あけた場合、過去の期間がリセットされ、0年スタートとなります。再就職して65歳になるまでに、被保険者期間5年を満たせば受給開始となりますが、60歳到達前賃金はその5年達成時点前の半年間の賃金額をベースとします。


最後によく受ける相談で多いのは、60歳定年後年金給付金を多くもらえる方法はどうしたらいいのかという問い合わせです。支払われる給与、もらえる年金給付金だけでなく、差し引かれる社会保険料・税金も視野にいれてトータルに考えないとあとあと大損となってしまうかもしれません。そこまでいうと人それぞれですし、なんともいえません。ある専門家に言わせると、月収26万円の人と、同36万円の人とでは、最終手取りはほとんどかわらないとか。もちろんリタイアしたあとの年金も勘定にいれたたらまた違ってくるでしょう。

こういった仕組みをいったん脇に置いて、給付金だけを平たく説明すると、ある範囲の給与が前月より1000円増える(減る)と、給付金は500円減る(増える)関係にあります。賃金手取り+受給額の合計の伸びは緩やかに増え(減り)する関係にあります。そうすると以上の説明からして、給付金・年金など目もくれずにかせげるときに目一杯稼いでおくのが正解と言えるでしょう。働けどかせげないときに差し伸べられる制度だと。なお欠勤等は、出勤したものとしてみなしての賃金額に補正されますので、欠勤分減給がそのまま低下率にはなりません。

相対額は以上のとおりですが、絶対額で説明すると、60歳前5年の被保険者期間があり、同じく60歳前の半年間、平均月額が上限額(48万6千円あたり)以上の賃金を受け、60歳以降、上限額の61%相当賃金(29万6千円あたり)を受けるなら、最大の受給額(約44,400円)となります。

【計算流れ(概算)】

296千円÷486千円=61%(低下率)
低下率61% ⇒ 給付率15%
296千円×15%=44.4千円

【表3】 詳細な計算流れは次のとおりとなります。

低下率(%)=月々の賃金額(月割り交通費・みなしを含む)÷60歳前到達賃金額×100

給付率(%)=(-183×低下率(%)+13725)÷(280×低下率(%))×100

月額賃金290千円、60歳前賃金470千円で計算してみますと

低下率=290000÷470000×100=61.702⇒61.70

給付率=(-183×61.70+13725)÷(280×61.70)×100=14.088⇒14.09

支給額=290000×14.09÷100=40,861

低下率・給付率(%)は小数点以下第3位を四捨五入、支給額は円未満切り捨て

【表4】過去7年の上限額、下限額、最低支給額の推移

 aの上限額aの下限額最低支給額
R5.8.1~486,30082,3802,196
R4.8.1~478,50079,7102,125
R3.8.1~473,10077,3102,061
R2.8.1~479,10077,2002,059
R1.8.1~476,70075,0002,000
H30.8.1~472,20074,4001,984
H29.8.1~469,50074,1001,976
H28.8.1~445,80068,7001,832

【表5】高年齢雇用継続給付制度の変遷

年次1995(平7)年4月2003(平15)年5月2025(令7)年4月
支給率月額賃金の25%(最高)同15%(最高)同10%(最高)
支給非対象逓減率85%以上同75%以上左同

※制度化された1995年当時は給付率25%。令和7年度に給付額が半減し、令和12年度からは廃止される予定です。

お断り:本ページは、制度理解の助けを目的とし、正確な内容についてはハロワーの説明を受けるか、ハロワー配布手引き、厚生労働省サイト高年齢雇用継続給付Q&Aをご覧ください。

(2021年4月3日投稿・2023年7月27日編集)

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