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2024/02/01

職場情報開示にむけて

このたびの厚労省労働制作審議会分科会で、「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」の作成について資料提示されていました。前々から話題にしていた、新卒向けの職場情報提供義務の中途採用版です。義務化なのか、またスケジューリング等はあきらかではありませんが、いよいよ始まるといったところです。資料から目についた開示事項等抜粋してみました。

  • 残業時間
  • 有給取得率
  • 賃金(含む手取低下しないか否か、中長期見通し)
  • 子育て支援(休業取得実績、時短制度)
  • 女性比率
  • 中途採用者割合
  • 人材育成支援
  • 在宅、テレワーク、兼業の可否
  • 配属部署、同世代入社者の声
  • 研修制度、フォロー体制、転勤の有無

開示に関しては、労(求職者)使、有識者から、いろいろな意見が上がっています。同じく目についたものを拾ってみます。記述に関しては筆者の主観がまじっています。

  • 企業単位のみならず配属先の情報の2本立てが重要
  • 開示できないなら、できないでその理由を併記して情報開示に前向きな姿勢を示すべき。改善の道筋を提示することも有用。
  • 情報開示は、求職者の就職先決定というよりも、検討対象選定に利用されている。
  • 研究開発に従事するに重要なのは就職先の研究対象であり、職場情報はさして重きをおいていない。
  • 社員数が少ないとデータに偏りが生じる
  • 提示するデータに各社で算出方法が異なる。算出方法や背景説明をあわせて明記すべき。
  • ネガティブな情報開示姿勢がかえって信頼を勝ち取る場合や、イメージギャップ解消につながる場合もある。
  • 多量の数値公開はかえって見たい情報にたどりつけない。情報更改頻度が落ちる、陳腐化といった問題がある。
  • 聞き出しにくい情報は、職業紹介業者をとおす、(採否を前提としない)カジュアル面接で聞き出すという手法もある。

労使それぞれ思惑言い分があるでしょう。かくされたネガティブ情報に失望を生むことで離職率高進する半面、あらかじめ開示しておくことがギャップ失望を生まずそういう企業なのだとの受け止めたかがすすみ、定着率に寄与する側面もあるとの理解がまたれます。開示できないしたくないそして企業努力もできない事業者は、求職者に見むきもされず労働市場から退出いただきたいものです。以下は、事前にアンケートした内容の抜粋です。

活用している情報源
  • 企業ホームページ
  • 求人情報サイト
  • ハロワインターネットサービス
  • ハロワ窓口
知りたい情報
  • 給与賞与額(年間収入)
  • 具体的職務内容
  • 始業終業時刻残業時間
  • 勤務地
  • 企業がもとめる人物像
  • 休暇取得実績
  • 処遇(賃金水準、昇進、配置)
  • 経営者の人柄考え方
  • 同僚上司となる人柄考え方
  • 1日の仕事の流れ
  • 職場環境
  • 出産育児介護復職にかかる支援
知りたくても調べられなかった情報
  • 職場の雰囲気、社風
  • 仕事内容
  • 経営者の人柄
  • 評価制度
  • 給与収入
  • 勤務時間残業時間
  • 定着率
手引きが公表されました
厚労省労働報道資料

(2024年2月1日投稿、2024年4月1日編集)

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雇用環境数値開示の意味するところ 

2023/12/06

労働条件通知書(有期・別紙)

令和6年4月からの雇い入れ時交付書面の追加項目です。有期雇用者の5年を超える部分がある雇用期間に対し交付する労働条件通知書には、無期転換後の労働条件について、雇用期間以外は同一ならその旨ですみますが、異なる箇所が多岐にわたるなら別紙にて明示せねばならず、その別紙記入例です。厚生労働省サイトに通知書別紙見本が掲載されています。更新後の労働条件通知書と一緒に渡しますので、別紙を同一あるいは似通った様式で渡すなら、峻別できるようにしておかねばなりません。

労働契約法18条に定められた無期転換権ですが、労働者の権利行使そのものが雇用主の承諾を兼ねていて、雇用主のリアクション必要としません。権利行使受けた有期雇用期間の終了翌日から無期雇用となります。しかも、労働者から宣言受けたなら直ちに雇入れ時交付書面をわたす義務が発生しますので、このタイプの別紙を作ってあれば表題「(別紙)」と冒頭文言を削除してしまえば、そのまま流用して交付できるでしょう。下記は別紙記載例で、空欄としている箇所は、無期雇用向けを参照ください。以下は施してありませんが、有期時と異なる条件部分は網掛けする、あるいは下記見本のように変更とある部分だけを記載する(その場合は冒頭文句にはっきり言及)なり工夫されるといいでしょう。

凡例
 記載は任意
白文字パート・有期雇用では記載必須項目、無期のパートなら必須
 令和6年4月からの記載必須項目
灰色文字記載にかえて何らかの明示をすればよい項目

無期転換前

労働条件通知書(別紙)
交付日      
雇用主      
職氏名      

本契約期間中に会社に対して無期労働契約への転換の申込みをしたときに成立する無期労働契約の労働条件は、下記のとおりです。

契約期間期間の定めなし 無期転換開始日 〇年〇月〇日
就業場所雇入れ時本社営業部法人営業課
変更の範囲本社ほか、全国支店営業所
従事業務雇入れ時法人営業および営業事務
変更の範囲営業全般(官庁営業、個人営業を含む)
就業時間等※始業・終業時刻
休憩時間
所定時間外労働
休日
休暇年次有給休暇転換前の保有日数、勤続年数を引き継ぎます。
代替休暇
その他休暇
◎詳細は就業規則〇条参照
賃金基本給
諸手当
所定外賃金
賃金締日
支払日
賃金支払方法
昇給
賞与
退職金
労使協定による支払賃金からの控除(あり)
退職に関する事項定年制あり(60歳定年)
継続雇用制度あり(70歳まで)
創業支援等□なし、□あり(  歳まで       )
自己都合退職の手続き(2週前に届け出る)
解雇事由及び手続き(就業規則参照)
◎詳細は就業規則第 章参照
労働者負担に関する項目
安全衛生に関する項目
職業訓練に関する項目
災害補償及び業務外傷病に関する項目
表彰制裁に関する項目
休職制度
その他社会保険適用(雇用保険(有)、健康保険(有)、厚生年金(有))
雇用改善相談窓口:総務部長
その他詳細は就業規則による
就業規則の周知方法配付PCより社内LANにて閲覧

※:シフト制、変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制といった勤務体系をとる場合は、厚労省記入例にならい、詳細に記載しなければなりません。


無期転換後

労働条件通知書
交付日      
           殿
雇用主      
職氏名      

会社に対して無期労働契約への転換の申込みをなされましたので、転換後の労働条件は、下記のとおりです。

契約期間期間の定めなし 無期契約開始日 〇年〇月〇日より
  

(2023年12月1日投稿、2024年1月26日編集)

関連サイト(厚生労働省)

令和6年4月労働条件明示の改正ルール 

無期転換ルールについて 

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労働条件通知書(有期雇用向け) 

労働条件通知書(無期雇用向け) 

2023/11/13

労働条件通知書(有期雇用向け)

無期雇用向けにつづき有期雇用の労働条件通知書記入例です。厚生労働省サイトに通知書見本が掲載されていますが、無期有期兼用になっています。有期雇用ならではの記載項目が圧倒的に多いものの、本来の有期雇用と、定年後再雇用の有期雇用とは峻別して記入する項目がいくつかあります。そこで、有期向け項目のうち定年後再雇用それ以外とにわけて記載例を作ってみました。振り分けの正確性は保証しません。

なお、有期雇用においては更新する場合も、更新を決める都度、交付書面を作成しての交付となります。あとの注意点は無期雇用向け冒頭で書いた記事のとおりです。下記記載例で、空欄としている箇所は、無期雇用向けを参照ください。【重要】記載項目間の整合性はとっていませんので、新規採用、継続雇用、更新時等状況に応じ書き換えてください。

凡例
 記載は任意
白文字パート・有期雇用では記載必須項目
赤文字有期雇用では記載必須項目
 令和6年4月からの記載必須項目
灰色文字記載にかえて何らかの明示をすればよい項目

定年後再雇用向け

労働条件通知書
交付日      
           殿
雇用主      
職氏名      
契約期間期間の定めあり 〇年〇月〇日~〇年〇月〇日
更新の有無□更新しない、□更新する場合がある、□自動更新
更新判断基準(上記、更新する場合あり、自動更新の場合)
□契約満了時の業務量、□従事業務の進捗状況、□勤務成績、態度、□遂行能力、□会社経営状況、□その他(       )
更新の上限あり(70歳誕生月末まで)
(労働局認定ある場合)〇〇労働局第二種計画認定を受けたことにより、定年後引き続いて雇用されている期間中、無期転換申込権が発生しません。
(認定受けてない場合で本契約に5年超の部分がある場合)本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをすることにより、本契約期間の末日の翌日( 年 月 日)から、無期労働契約での雇用に転換することができます。無期転換した場合の転換後の労働条件の変更の有無(□無 ・□有り(       ))
(認定なく本契約に5年超の部分もない場合)労働契約法第18条の規定により、有期労働契約(平成25年4月1日以降に開始するもの)の契約期間が通算5年を超える場合には、労働契約の期間の末日までに労働者から申込みをすることにより、当該労働契約の期間の末日の翌日から期間の定めのない労働契約に転換されます。
就業場所雇入れ時本社営業部法人営業課
変更の範囲本社営業部内
従事業務雇入れ時法人営業および営業事務
変更の範囲なし
就業時間等始業・終業時刻 
休憩時間 
所定時間外労働 
休日 
休暇年次有給休暇定年時の勤続年数、保有数を引き継ぎます。
時間単位年次有給休暇(あり)
代替休暇 
その他休暇 
◎詳細は就業規則〇条参照
賃金基本給 
諸手当 
所定外賃金 
賃金締日 
支払日 
賃金支払方法 
昇給あり(毎年4月10月、給与等級表による)
賞与あり(毎年6月12月、年平均2.2カ月(昨年実績))
考査期間により実施
退職金社内制度(なし)
中小企業退職金共済(なし)、企業年金制度(なし)
労使協定による支払賃金からの控除(あり)
退職に関する事項定年制なし
継続雇用制度あり(70歳まで)
創業支援等□なし、□あり(  歳まで       )
自己都合退職の手続き(2週前に届け出る)
解雇事由及び手続き(就業規則参照)
◎詳細は就業規則第〇章参照
労働者負担に関する項目 
安全衛生に関する項目 
職業訓練に関する項目 
災害補償及び業務外傷病に関する項目 
表彰制裁に関する項目 
休職制度 
その他社会保険適用(雇用保険(有)、健康保険(有)、厚生年金(有))
雇用管理の改善に関する相談窓口(総務部長)
その他詳細は就業規則による
就業規則の周知方法配付PCより社内LANにて閲覧
参考サイト(厚生労働省)
令和6年4月労働条件明示の改正ルール
第二種計画認定について

その他の有期雇用向け

労働条件通知書
交付日      
           殿
雇用主      
職氏名      
契約期間期間の定めあり 〇年〇月〇日~〇年〇月〇日
更新の有無□更新しない、□更新する場合がある、□自動更新
更新判断基準(上記、更新する場合あり、自動更新の場合)
□契約満了時の業務量、□従事業務の進捗状況、□勤務成績、態度、□遂行能力、□会社経営状況、□その他(       )
更新の上限あり(通算5年まで)
(本契約に5年超の部分がある場合)本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをすることにより、本契約期間の末日の翌日( 年 月 日)から、無期労働契約での雇用に転換することができます。無期転換した場合の転換後の労働条件の変更の有無(□無 ・□有り(       ))
(本契約に5年超の部分がない場合)労働契約法第18条の規定により、有期労働契約(平成25年4月1日以降に開始するもの)の契約期間が通算5年を超える場合には、労働契約の期間の末日までに労働者から申込みをすることにより、当該労働契約の期間の末日の翌日から期間の定めのない労働契約に転換されます。
就業場所雇入れ時本社営業部法人営業課
変更の範囲本社および県内支店営業所
従事業務雇入れ時法人営業および営業事務
変更の範囲上記に加え官庁営業、個人営業
就業時間等始業・終業時刻 
休憩時間 
所定時間外労働 
休日 
休暇年次有給休暇 
代替休暇 
その他休暇 
◎詳細は就業規則〇条参照
賃金基本給 
諸手当 
所定外賃金 
賃金締日 
支払日 
賃金支払方法 
昇給あり(毎年4月10月、給与等級表による)
賞与あり(毎年6月12月、年平均2.2カ月(昨年実績))
考査期間により実施
退職金社内制度(なし)
中小企業退職金共済(なし)、企業年金制度(なし)
労使協定による支払賃金からの控除(あり)
退職に関する事項定年制なし
継続雇用制度なし
自己都合退職の手続き(2週前に届け出る)
解雇事由及び手続き(就業規則参照)
◎詳細は就業規則第〇章参照
労働者負担に関する項目 
安全衛生に関する項目 
職業訓練に関する項目 
災害補償及び業務外傷病に関する項目 
表彰制裁に関する項目 
休職制度 
その他社会保険適用(雇用保険(有)、健康保険(有)、厚生年金(有))
雇用管理の改善に関する相談窓口(総務部長)
その他詳細は就業規則による
就業規則の周知方法配付PCより社内LANにて閲覧

(2023年11月15日投稿、2023年12月1日編集)

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2023/11/01

労働条件通知書(無期雇用向け)

無期雇用の労働条件通知書記入例です。厚生労働省サイトに通知書見本が掲載されていますが、無期有期兼用になっています。有期雇用ならではの記載項目が圧倒的に増え続けたため、それを載せなくてよい無期雇用向けが見えなくなっています。そこで、有期向け項目をそぎ落とし無期雇用に特化した記載例をアレンジしてみました。

労働基準法15条1項に定められた雇入れ時交付書面のことですが、法令項目が網羅されていれば、表題は雇用契約書、労働条件通知書、雇入れ通知書等なんでもかまいません。枠組みも自在。なんだったら適用する部分にアンダーライン引いた就業規則の交付でもOKです(その場合は雇い主と宛名の表示、雇い入れる旨の文言の書き添え必要でしょう。)。いずれであれ入社時に交付では遅く、雇うと意思表示した段階で労働者の手に渡っていなければなりません。いわゆる内定通知書も雇う意思をもって交付なら該当しますので、法令項目網羅してあるかです。また網羅するところ「詳細は就業規則参照」と記載した場合は、就業規則も通知書とあわせて交付書面になります。

凡例
 記載は任意
白文字パート・有期雇用では記載必須項目、無期のパートなら必須
 令和6年4月からの記載必須項目
灰色文字記載にかえて何らかの明示をすればよい項目
労働条件通知書
交付日      
           殿
雇用主      
職氏名      
契約期間期間の定めなし 入社日 〇年〇月〇日
(試用期間 入社後3カ月、試用期間後の労働条件の変更:なし)
就業場所雇入れ時本社営業部法人営業課
変更の範囲本社ほか、全国支店営業所
従事業務雇入れ時法人営業および営業事務
変更の範囲営業全般(官庁営業、個人営業を含む)
就業時間等始業・終業時刻午前8時45分~午後5時15分(所定7時間30分労働)※
休憩時間正午から60分
所定時間外労働あり(月平均5時間程度)
休日毎週日曜土曜日、国民の祝日、春季夏季年末年始年等10日前後
◎詳細は就業規則〇条参照
休暇年次有給休暇入社時5日付与、勤続6か月5日付与
時間単位年次有給休暇(あり)
代替休暇なし
その他休暇リフレッシュ休暇(有給)ほか
◎詳細は就業規則〇条参照
賃金基本給月給    円
諸手当歩合給   円~ (計算方法:過去3カ月売上実績に応じて毎月支給
所定外賃金時間外/法定超 月60時間以内:25% 60時間超:50%
休日労働 法定休日:35% 深夜:25%付加
賃金締日月末日
支払日当月25日
賃金支払方法希望する銀行口座への振り込み
昇給あり(毎年4月10月、給与等級表による)
賞与あり(毎年6月12月、年平均4.5カ月(昨年実績))
考査期間により実施
退職金あり(勤続1年以上、退職金規定による)
労使協定による支払賃金からの控除(あり)
退職に関する事項定年制あり(60歳定年)
継続雇用制度あり(70歳まで)
創業支援等□なし、□あり(  歳まで       )
自己都合退職の手続き(2週前に届け出る)
解雇事由及び手続き(就業規則参照)
◎詳細は就業規則第 章参照
労働者負担に関する項目なし
安全衛生に関する項目安全衛生委員会(あり)労働安全衛生規定参照
職業訓練に関する項目就業規則参照
災害補償及び業務外傷病に関する項目労災上乗せ補償、疾病見舞金あり
表彰制裁に関する項目就業規則参照
休職制度あり(休職規定参照)
その他社会保険関係(雇用保険、健康保険、厚生年金 完備)入社時から適用
雇用改善相談窓口:総務部長
その他詳細は就業規則による
就業規則の周知方法配付PCより社内LANにて閲覧

※:シフト制、変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制といった勤務体系をとる場合は、厚労省記入例にならい、詳細に記載しなければなりません。


(2023年11月1日投稿、2023年12月1日編集)

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2023/02/05

虚偽求人企業ともくされないために

平成30年1月改正職業安定法が施行されました。

その中に、虚偽の労働条件を提示して求人することは前から処罰対象であったのですが、それに加えてハロワーや職業紹介業者に同じく虚偽求人をたてることも刑事処罰対象となりました(法65条10号、懲役6月、罰金30万円)。

たてた求人票をみて応募してきた求職者と面接等折衝するうちに、就業条件を変更、特定、追加、削除したくなるでしょう。特に、「給与 20万円から25万円」と求人票に記載してある場合、応募してきた求職者の給与を22万円と決定することは、ここでいう「特定」に当たります。

そのことを本人へ伝えるのに口頭説明ですますのでなく、あわせて書面を用意しておき「提示」でなく書面「交付」が必須となっています。本人希望すれば、書面に換えて、ファックス、電子メール等でも交付可能です(施行規則4条の2第4項)。これが免罰要件となるのですから、確実に実施したいものです。

書面形式としては、新旧対比表といった形で、求職者にわかりいい方法をとるなど工夫が望まれます。

新旧対比表のイメージ

     様

この度は弊社求人にご応募いただきありがとうございました。あなたのご要望をうけ就業条件につきましては、下記の通り変更しますので、なにとどご検討のほどお願い申し上げます。

項目
給与額(特定)20万円~25万円22万円
通勤手当(変更)月限度額2万円まで同3万円まで
試用期間(取消)入社後6カ月(なし)
転勤範囲(追加)長野支店限定本社、長野支店に限定

最悪、雇入れを伝えるときの交付義務書面、労働条件通知書に該当箇所をアンダーラインをひいておくなりして、求人票からの変更等の部分だと言い渡しておく必要があります。

(2023年2月10日投稿)

2023/01/06

2022.12労政審議会報告

昨年暮れの労働政策審議会労働条件分科会で長らく審議され、ネットニュースでは裁量労働制の拡充といった報道がなされました。でも労務畑に従事している部門には読み捨てならない制度が導入されるようなので、概略をいくつか紹介してみたいと思います。主に労働契約法、労働基準法改正による無期転換、雇入れ通知書、就業規則にかかわる部分です。

出典:厚生労働省 報道資料R4.12.27より

1.無期転換ルール関連

有期雇用者への無期転換ルールの追加として、無期転換権発生する更新契約において「転換権発生」する(した)ことと「転換後の労働条件」が、労基法15条交付書面(以下「交付書面」)への記載事項(以下「書面事項」)となります。転換権行使後の労働条件明示も同様。

更新上限規定の「有無」、有りなら「その内容」も交付書面の書面事項。契約後に更新上限規定の新設・期間短縮する場合の事前説明を、労基法14条紛争防止基準に盛り込む。

無期転換後の労働条件決定で考慮した均衡事項の説明を努力義務化

2.契約関係の明確化

交付書面の記載事項に「『就業場所』・『業務』の変更の範囲」を追加

いわゆる人事異動において、交付書面の書面事項のうち「変更する点」を書面にて明示することが努力義務 ⇒ 義務化は今後の検討課題

「就業規則の備え付け場所の周知」といった周知方法の明示を義務化 ⇒ 周知のあり方は今後の検討課題

短時間正社員にはパート有期労働法の均等均衡待遇条項の適用があること、適用とされていなかった無期契約社員への展開

コメント

有期雇用者の更新して5年を超える部分の期間中に、無期転換権が発生しますが、その行使を促せるよう使用者からの雇入れ時交付書面に明示する義務を設けるものです。なお、有期雇用にあっては更新時ごとに雇入れ書面交付となります。

無期転換後の労働条件を変更する場合を、交付書面はもとより就業規則等に明示しておくことは論をまちません。

無期転換を阻む目的で、更新回数等に上限を就業規則等に設けてある場合は、交付書面への記載事項とするのは当然でしょう。その上限を後出しで設ける、設けてあった期間を短縮するというズルについても、説明責任を課しています。

次に、その交付書面に雇入れ時の就業場所、業務内容を記載すればよかったものを、さらに一歩踏むこんで将来転勤させる場合の範囲、業務転換させる場合の範囲も雇入時の交付書面への記載事項となります。これは地域限定社員とかがポピュラーになった反面、限定の有無をとわず雇入れた人員を配置転換させようとして紛争になるケースがあとを絶たないからでしょう。

その人事異動ありきで雇入れた労働者に対しては、異動の際の書面明示も義務化を見据えて努力義務の位置づけです。労務管理のしっかりした企業であれば、人事異動は辞令交付してきたから問題ないでしょうが、業務ごとに賃金ベースが異なるいわゆるジョブ雇用なら、それについての記載をどうするか、という側面があるのでしょう。

就業規則の周知についても、人事部長のひきだしにしまいこんでいるようなケースにあって、周知と言えるのか裁判で衝突するからでしょう。周知するだけでなく、周知方法の周知です。

パートと有期労働者は、均等均衡待遇における保護に置かれていましたが、フルタイムの有期雇用者が無期に転換した場合、せっかく切り替わったのに正社員との待遇差については、とりのこされていました。その面に光をあてようというものです。

パブリックコメントに意見募集されていました。労基法施行規則改正による令和6年4月施行です。

追補

令和5年3月30日、労基法施行規則改正が官報に公布されました。同時に特設サイトが設けられました。

1年後の令和6年4月施行です。その時点以降の雇入れる労働者への労働条件通知書、有期雇用(更新者を含む)への労働条件通知書の改定が必要です。そのひな形も掲載されています。

有期雇用無期雇用
雇い入れ後の就業場所、従事内容の変更の範囲
更新上限の有無
(有ならその上限内容)
無期転換権発生の表示
転換権行使後の労働条件変更の有無
(有ならその労働条件の内容)
就業規則を確認できる方法

4/24付けパブリックコメントで、職業安定法施行規則改定の方法にて、求職者に労働条件開示項目に次の条件を追加することに、国民の意見を求めています。とりまとめ後、6月公布、来年4月施行の予定です。

  • 有期契約更新基準、あれば更新上限
  • 就業場所、従事業務の変更の範囲

(2023年1月6日投稿、2023年5月10日編集)

2022/12/03

退職届と退職願

よく似た提出物ですが、機能的に異なると言われています。

退職届

令和4年11月30日

株式会社 ど・ぶろぐ政策所
代表取締役 一心 不乱 様

営業部第二営業課
新進 気鋭

このたび、一身上の都合により、令和4年12月15日をもちまして、退職いたします。

以上


退職願

令和4年11月30日

株式会社 ど・ぶろぐ政策所
代表取締役 一心 不乱 様

営業部法人営業課
破竹 之勢

このたび、一身上の都合により、令和4年12月15日をもちまして、退職いたしたく願い出ます。

以上


縦書きのサンプルです。

退職届    

このたび、一身上の都合により、
令和四年十二月十五日をもちまし
て、退職いたします。

令和四年十二月一日

管理部管理課  
勤倹 力行

株式会社 ど・ぶろぐ政策所
 代表取締役 一心 不乱 様

受理されれば実質的な違いがあるわけではありません。またタイトルによるのでなく、文面中身内容によります。願とありながら、中身が通告なら相手の同意は無用。ここでは、その内容にそって「退職届」「退職願」として見ていきます。「退職届」は一方的通告、対して「退職願」は、受け取る相手方の了承を願いでる手続きです。後者は遺留されたり拒否される余地を残しているといえます。その書面が人事権者のもとに届くまでは、撤回が可能とも言われています。「退職届」の一方的通告では、相手方の同意は必要なく、使用者に渡れば解約成立です。ただし懲戒事案があり、退職日までに懲戒処分の可能性はあります。

さて雇用契約関係の解除にあって労働者からする退職届、退職願とパラレルな関係にあるのは、雇用主からする解雇、退職勧奨です。

退職届相手に対する一方的通告。相手に達すれば解約の効力が発生する。解雇
退職願相手に対する解約の申込。相手が同意すれば解約の効力が発生する。退職勧奨

解雇や退職勧奨を受けて退職願をだせ、という詐術に乗ってはいけません。ただし勧奨に対しては、「一身上」を「御社の退職勧奨を受けて」と事実関係を明記する退職届は可能です。退職勧奨は拒否できますが、解雇なら拒否しても一方的通告ですので、通告受けたことをもって効力が発生します(なお労基法上は解雇予告、予告手当支払という要件を満たすことを要求しています)。成立したものを労働者が拒否しても無意味で、最終的には民事裁判で不当解雇として争うことになります。出せと言われた書面について、まずはそれを言い渡してきた方、意思表示をした使用者側に解雇証明書という書面を出させるものです。労基法22条によりすみやかに出せと要求しましょう。

参考記事

退職証明書・解雇証明書 


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2022/11/13

雇入通知書の記入例

厚生労働省が見本としている雇入れ通知書があります。呼称は、労働条件通知書、雇用通知書、雇用条件通知書、さまざまです。

雇用主からの質問で、正社員として雇用するのだが「期間の定めのなし」にまるして、入社日を記述しなくていいのでしょうかという問いかけを見かけたことがあります。

法令で定まった様式はありませんので、法令項目が網羅されていれば可です。記入例を参考に、不要な部分を削除抹消、必要と思われる部分が紛争防止に資するなら記入されるといいでしょう。

無期雇用の記入例です。

契約期間期間の定めなし 入社日 ○年○月○日(試用期間 入社後3カ月)

これが有期雇用となると、この欄への記載項目が増えます。

契約期間期間の定めあり(○年○月○日~○年○月○日)
1 契約更新の有無更新する場合がある
2 契約更新の判断基準・期間満了時の業務量 ・会社の経営状況
・勤務成績、態度 ・遂行能力

有期雇用も、定年後再雇用で労働局から2種認可を受けている場合です。

契約期間期間の定めあり(○年○月○日~○年○月○日)
1 契約更新の有無65歳まで更新し、以降2により判断する
2 契約更新の判断基準・期間満了時の業務量 ・会社の経営状況
・勤務成績、態度 ・遂行能力
有期雇用特措法労働局の認可により定年後引き続き雇用されている期間は、無期転換申込権が発生しません

次に始業、終業時刻等の記載例です。変形労働、フレックス等適用しないのでしたら、余計な記事は抹消してしまいましょう。

始業・終業時刻、休憩時間、所定時間外労働始業・終業時刻午前8時45分~午後5時15分(所定7時間30分労働)
休憩時間正午から60分
所定時間外労働あり(月あたり5時間程度)


(2022年11月13日投稿)

【参考記事】

労働条件通知書(有期雇用向け) 

労働条件通知書(無期雇用向け) 

雇用契約書と雇い入れ通知書 

求人票、雇い入れ通知書、就業規則 

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2022/08/20

雇用保険料推移

雇用保険料率の推移を記録しておきます。今年度後半の2022年10月から値上がる変則的な処置は、雇用保険制度にとって初めてでしょう。

日付雇用保険料率(千分の)
失業給付部分(a)2事業保険(b)(a+b) 
労働者負担分(労使折半)(使用者負担)
S22.4.1112222
S24.4.1102020
S27.4.181616
S35.4.171414
S45.4.16.513※213
S50.4.1510313
S53.4.15103.513.5
S54.4.15.5113.514.5
S56.4.15.511314
S57.4.15.5113.514.5
S61.4.15.511314
S63.4.15.5113.514.5
H4.4.14.593.512.5
H5.4.1483.511.5
H13.4.16123.515.5
H14.4.17143.517.5
H17.4.18163.519.5
H19.4.1612315
H21.4.148311
H22.4.16123.515.5
H24.4.15103.513.5
H28.4.148311
H29.4.13639
R4.4.1363.59.5
R4.10.15103.513.5
R5.4.1(決定)6123.515.5

注記:農林水産業(※3)、清酒製造業及び建設業の失業給付保険料率は労使双方1/1000ずつの上乗せ。建設業の二事業保険料率については、さらに1/1000の上乗せ。

※2:昭和50年の法改正で、これまでの失業保険が雇用保険に名称変更、2事業保険料を事業者に全額負担させる形で始まる。

※3:園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖および特定の船員を雇用する事業を除く。一般料率を適用。

(2022年8月20日投稿、2023年2月8日編集)

関連項目

雇用保険制度の沿革 


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2022/05/28

特定受給資格者、特定理由離職者

特定受給、特定理由、よくにた言葉ですが、前者と後者の一部は会社都合ともいわれており、雇用保険の失業給付(基本手当)を受給するうえで、給付制限がつかず、給付日数も特段厚い。それ以外の特定理由離職者は、給制限は付つかないものの、給付日数は一般と同じと、制度的にもこみいった内容となっています。下表に区分けがわかるようにまとめてみました。離職されて上段のどの区分に属するといった具体的なことは、ハロワーの認定のさい照会ください。

離職理由待期
期間
給付制限受給資格
被保険者期間
基本手当
給付日数
特定受給
資格者
倒産・解雇(重責を除く)により離職7日
あり
なし下記に加え離職前1年間に6か月手厚くなる(離職時年齢・被保険者期間による)
特定理由
離職者
更新希望ながら雇用期間満了により離職上に同じ※2
正当な理由により離職被保険者期間による
その他定年・期間満了により離職離職前2年間に12か月
自己都合退職2カ月※1
重責解雇3カ月

※1:令和2年10月1日以降の過去5年間に2回を超える自己都合での離職の場合、3か月間

※2:離職の日が平成21年3月31日から令和7年3月31日までの期限付き暫定措置。到来のつど延長されてきました。

(2022年5月28日投稿、2023年10月20日修正)

※タイトル及び文中、「特定理由資格者」を「特定理由離職者」に修正しました。

参考記事

自己都合か、会社都合か 

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2022/05/22

求人票、雇い入れ通知書、就業規則

 たまに、雇入れ時に就業規則を交付すればいいか、という質問を見かけます。求人条件の提示とその異同を見てみましょう。

求人票雇入通知書就業規則
職業安定法5条の3,規則4条の2第3項労基法15条1項、規則5条労基法89条
従事すべき業務内容従事すべき業務内容 
契約期間契約期間 
 有期の場合更新基準 
試用期間  
就業場所就業場所 
始業終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日始業終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換始業終業時刻、休憩時間、休日、休暇、就業時転換
賃金額(臨時の賃金賞与を除く)賃金の決定、計算、支払い方法、締め日、支払日、昇給賃金の決定、計算、支払い方法、締め日、支払日、昇給
 退職(解雇事由を含む)退職(解雇事由を含む)
 退職手当(範囲、決定、計算、支払い方法、支払い期)退職手当(範囲、決定、計算、支払い方法、支払い期)
 臨時の賃金、賞与、最低賃金臨時の賃金、賞与、最低賃金
 労働者負担とする食費、作業用品労働者負担とする食費、作業用品
 安全衛生安全衛生
 職業訓練職業訓練
 災害補償、業務外傷病扶助災害補償、業務外傷病扶助
 表彰制裁表彰制裁の種類程度
 休職制度
適用される社会保険  
労働者を使用する事業者名  
派遣労働者として雇用する旨  
受動喫煙防止措置  
  労働者すべてに適用される定め

就業規則に、たとえば就業場所の明示がありませんが、事業所単位でそこに働く労働者に集団的に規律する規則ですので、性格を異にしており、明示の必要はないわけです。雇入れ時に就業規則を交付してすますには、あなたを労働者として雇う旨、従事させる業務内容、契約期間に関する事項、就業場所、賃金額といった個別に適用される項目を補充する必要があります。中には就業規則でなく、求人票交付でいいかという質問も同様に、雇う旨、中列にあって左列にない事項の補充が必要でしょう。

労働条件の相違

求人票と雇入れ通知書の相違は、職業安定法違反虚偽求人企業として、刑事処罰の対象です(懲役6カ月、罰金30万円)。


65条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

八 虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者

九 虚偽の条件を提示して、公共職業安定所又は職業紹介を行う者に求人の申込みを行つた者


ところが雇入れ通知書と事実の相違は、刑事処罰の対象でなく、即日退職の権利を労働者に付与しているだけです。通知書そのものの不交付は30万円の罰金です。


(2022年5月22日投稿、2023年2月18日編集)

関連項目

労働条件通知書(有期雇用向け) 

労働条件通知書(無期雇用向け) 

雇用契約書と雇い入れ通知書 

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2022/04/14

労働保険・社会保険の任意適用

労働保険は、おもに労災保険と雇用保険とで構成されています。強制適用ながら、わずかに任意適用と言って、適用が強制されず、事業主が手続きすることで適用となる事業があります。保険適用の手続きしていない事業主に雇われていても、労働者である限り、業務上被災、通勤災害による労災保険給付は労働者が請求すれば保険給付されます。ところが任意適用で未適用の事業主雇われていれば、労災保険給付されません。そこで、任意適用の事業をリストアップしておきます。労災と雇用とではわずかに違いがあるようです。


労災保険の暫定任意適用事業

個人事業者で5人未満の労働者を使用する
 ・農業(特定の危険又は有害な作業を主として行う事業を除く)
・畜産
・養蚕
・水産(総トン数5トン以上の漁船による事業を除く)
・林業の個人事業者で常時労働者を使用しないか、しても年間延労働者数が300人未満

雇用保険の暫定任意適用事業

個人事業者で5人未満の労働者を使用する
 ・農林の事業(土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採他)
・畜産、養蚕又は水産の事業(動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖他)

社会保険の任意適用

これが社会保険(健康保健・厚生年金保健)の任意適用となるとよくわからなくなります。法人は強制適用ですが、

種別5人未満5人以上
法人事業全事業強制適用
個人事業※下記の事業任意適用強制適用
※以外の事業任意適用
a製造業、b土木建築業、c鉱業、d電気ガス供給事業、e運送業、f清掃業、g物品販売業、h金融保険業、i保管賃貸業、j媒介周旋業、k集金案内広告業、l教育研究調査業、m医療保健業、n通信報道業

a~nの事業で5人以上使用する個人事業は強制適用。そして「※」以外の事業とは何なのか、そこで、年金機構の説明は

・個人事業者で5人以上使用する事業所で、サービス業の一部(クリーニング業、飲食店、ビル清掃業等)や農業、漁業等の事業

となっていました。令和4年10月からは、5人以上使用する士業(弁護士事務所等)は強制適用となります。ということは9月まではサービス業の一部に属していることになります。

なお社会保険には、事業所の任意適用のほかに、被保険者としないケースを定めています。

日々雇入れられる者引き続き1カ月超えて使用される場合、1カ月超えた日から被保険者となる
2カ月以内の雇用契約2カ月超えて使用される見込みのある場合は、雇入れ当初から被保険者となる
所在が一定しない事業に雇用される者例外なし
季節的業務(4カ月以内)4カ月超える見込みの場合は、雇入れ当初から被保険者となる
臨時的事業所(6カ月以内)同上(6カ月)

(2022年4月14日投稿、2023年10月2日編集)

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2021/11/03

2025年4月65歳定年義務化の虚実

2025(令和7)年4月65歳定年義務化なのかという質問をよく見かけます。

ネットニュースで読んだことはありますが、厚労省サイトにはそんな記述はありません。高年齢者雇用の解説で、65歳定年70歳定年を義務付けるものではありません、とひきつづき掲載されています。

ことの出所は、高年齢者雇用安定法が平成25年に改正された折、改正前の労使協定を保持していることを条件に、いわゆる年金年齢(男性)にそってその労使協定の効力を認める経過措置があります。この経過措置が2025年3月で終わるのですが、それをこじつけてか同年4月65歳定年義務化とすりかえ報道しているのが、実情のようです。しかし、60歳定年(正確には60歳未満定年の禁止)をさだめた同法8条にいささかの変更もありません。

順をおって説明してみます。

改正法年表にも書きましたが、平成25年同法の改正のその前の改正、平成16年改正法により、これまでの努力義務だった65歳までの雇用の場提供が義務化されました。事業者に課せられた選択肢は、

  • 定年制の廃止
  • 65歳定年
  • 65歳までの安定した雇用の場提供

です。最後の選択肢は、60歳から64歳までの定年制の会社が選択し、制度整備せねばなりません。制度としては、希望者に対し有期雇用による再雇用、定年延長といったものです。この選択肢にオプションがあって、客観的選別条件を定めた労使協定を事業所過半数労働者代表とで結ぶことで、定年後雇用継続を希望する者全員をひきつづき雇い続けるか選別することを許されていました(改正後数年間は、締結できなかった労使協定にかえて就業規則に規定して、猶予期間中に労使協定締結を目指すことを条件に認められていました。)。

すなわち客観的な基準を設け、それに達しない労働者は、継続雇用を希望しても、雇わなくてもよいとするものです。客観的条件、たとえば出勤率8割以上とか、評価Bマイナス以上といったものです。上司の推薦のあるもの、会社が必要とするものといった恣意的主観的条件は認められていません(客観的条件との並置は可能。たとえば出勤率8割に達していないが、会社が必要とする者という判断で継続雇用)。

そして平成25年同法改正で、それまで認められていた選別条件を定めた労使協定を結べなくなりました。そのかわり、改正前に結んであった労使協定をいわゆる年金年齢にあわせて選別年齢を順次後ろ倒しする運用に改変すれば、有効とする延命措置を改正法附則に設けました。

(参考)年金開始年齢(男性)

H25年4月1日~H28年3月31日61歳S28.4.2~S30.4.1生まれ
H28年4月1日~H31年3月31日62歳S30.4.2~S32.4.1生まれ
H31年4月1日~R4年3月31日63歳S32.4.2~S34.4.1生まれ
R4年4月1日~R7年3月31日64歳S34.4.2~S36.4.1生まれ
R7年4月1日~65歳S36.4.2~

それが会社によって今現在有効に存続しており、生年月日(S28.4.2~S36.4.1)によりいわゆる年金年齢(特別支給の老齢厚生年金受給できる年齢・男性)に達した労働者の中で、選別条件に達していない者が希望しても再雇用をしなくともよいのです。

その対象とならないS36.4.2以降生まれのグループに対しては、彼ら64歳となる2025年4月には選別労使協定が失効しますので、雇用主は希望する者65歳まで雇う場を提供せねばなりません。これをなぜか65歳定年完全実施とかマスコミ等がミスリードしたわけです。65歳定年義務化なら、3択を改め同法8条65歳未満定年の禁止と定めないとつじつまがあいません。

細かいことですが厳密には雇い続ける義務ではなく、安定した雇用の場提供義務ですので、希望者におうじ雇用条件を提示すればよく、定年退職者が気にくわなくて破談となっても、提供した雇用主は義務を履行したことになります。この提示する雇用条件につていは、就業規則に列記しておくことが望ましいです。裁判例ですが、パートの週1か週2の条件提示では義務をはたしたことにならないという判示があります。


さて現行法ではすでに70歳までの「就業の場提供」義務が努力義務として令和3年4月施行されています。詳しくは上の厚労省リンク先(70歳定年)をごらんください。

おまけ

上表の、右枠は2年刻みなのに、左枠はなぜ3年刻みなのか不思議だというのです。右枠は生年月日、対して左枠は現行スケジュール期間です。記事にも書いたように、最後の生年月日グループが、スケジュール期間に達するときが64歳で、問題の65歳に至るにはあと1年歳とるのに必要なので、見かけ上左枠は3年(2年たす歳とる1年)刻みなのです。

S36.4.2日生まれの人は、R7.4.1に64歳に達し、65歳になるにはもう1年あります。その前日生まれの人は、R7.3.31に64歳に達し、選別条件に達していないとして、65歳になるまでの1年雇用しなくてもよい労使協定適用とできます。


最後にもう一つ、60歳未満定年の禁止をうたった同法8条を65歳未満定年の禁止に改正してはじめて65歳定年義務化といえます。その改正をするには、一気に65歳すると経済混乱を招きますから、上表にもあるように3年刻みで1歳ずつあげて、12年かけて65歳にもっていくことになるでしょう。今から改正して12年後では2025年にとても間に合わないです。


(2021年11月3日投稿 2022年7月3日編集)

2021/04/25

退職証明書・解雇証明書

退職する労働者の求めに応じ、退職証明書を発行せねばなりません。退職事由が解雇ですと、解雇証明書となるでしょう。いずれも労働基準法22条に使用者の義務として課しています。なお、記載内容は法定されており、それ以外のことを記載することは禁止されています。また労働者の求めであっても法定事項以外の記載に応じる必要はありません。なお労働者の請求をうけたら速やかに交付する義務があります。それが退職前でも同様です。退職してずいぶん前で、証明を要求してくる退職者がいても、退職日からみて時効の2年経過していないなら、応じる義務があります。次に法定項目を網羅した書式例を掲載します。

退職証明書

        殿

以下の事由により、上記の者は当社を令和  年  月  日(最終在職日)付けで退職した(する)ことを証明します。

令和  年  月  日

事業主氏名または名称
(使用者職氏名)
使用期間令和  年  月  日 ~ 令和  年  月  日
従事した業務の種類 
当社における地位 
賃金額        円
退職事由
1.自己都合退職(2を除く)
2.当社の勧奨による退職
3.定年退職
4.契約期間満了退職
5.移籍出向による退職
6.その他(     )
7.解雇
※該当する番号に〇をつける
退職が解雇の場合、その解雇事由
・天災その他やむを得ない理由により、事業継続が不可能となったため解雇(就業規則第〇条第〇号該当)
(具体的事実:               
※労働者が請求しない項目は斜線抹消する。
解雇証明書

解雇証明書として労働者から請求を受けた場合は、解雇事由として、就業規則記載のどの解雇事由に該当するか、そしてそれに該当する具体的事実をあわせて記載せねばなりません。また解雇事由は就業規則に記載しておかねば、解雇相当の事由であっても、解雇する事由なしとして扱われます。刑法にかかれていない行為を処罰できないのと同等です。今一度就業規則にあらゆる事象を想定して網羅対応させてあるか点検されるといいでしょう。

  • 天災その他やむを得ない理由により事業継続が不可能による
  • 事業縮小等事業場閉鎖による
  • 職務命令に対する重大な違反行為
  • 職務について不正行為
  • 勤務態度、勤務成績の不良
  • 相当期間の無断欠勤
雇止め証明書

有期雇用者を雇止めした場合、有期雇用者の求めに対し「解雇証明書」に代えて雇止めした理由を記した「雇止め証明書」の交付が、紛争防止基準に盛り込まれています。法定義務ではありませんので、法定事項以外、記載するかは任意となります。

(2021年04月25日投稿 2023年10月24日編集)

関連記事

労基法の有期雇用契約 

退職届と退職願 

就業規則案内見本 

表の表示が崩れる場合は、横長画面か、ウェブバージョンでご覧ください。

2020/12/15

雇用契約書と雇い入れ通知書

求人票をみて応募してきた求職者に採用時交付する書面の説明です。

雇用契約をはじめ各種契約の成立には、保証契約といったごく一部を除き、双方の意思が合致すればよく、書面のやりとりといった形式行為は不問です。意思が合致したからといって雇用契約するうえでは、あとから言った聞いてないの争いになりやすく、これでは労働者の保護にかけるので、労基法は使用者に雇入れる労働者への書面交付義務を課して民法(契約法)を修正しています。

雇用契約書と雇い入れ通知書、どちらも労基法15条雇用契約を締結するときに交付しなければならない書面としての役割をはたしています。どちらをもってするかは、雇い入れ側の任意です。「働き始めた」ときに交付でなく「締結に際し」ての交付ですので、採用面接の場で働き始めるのも含め、「あなたを雇います、来週から来てください」と言い終わらないうちに、労働者の手元に交付書面がなければなりません。来週の出社してもらってからの交付では遅すぎます。

さてその交付書面ですが、通知書は一紙片、契約書は双方自署(記名押印)といった違いから生じる、メリットデメリットがあります。通知書は、厚労省からモデル雇入れ通知書があり、そのひな形に従えば法定項目を網羅できる半面、交付した証拠が残らないというデメリットがあります。契約書はその逆で、交付した書面が双方の手元に残るものの、モデルとなる契約書ひな形はありませんので、法令項目を書き洩らすおそれが多分にあります。そこで表面は契約書タイプで重要事項を、そして裏面は雇い入れ通知書にて法令項目を網羅するという形がスマートでしょう。

網羅するも細部は「就業規則何条参照のこと」と書くことができますが、その場合は契約書(通知書)の交付と共に就業規則もいっしょに手渡さねばなりません。また契約書にサインさせるだけさせて回収し、本人の手元に同文を交付してなければ、交付義務を果たしたことにはなりません。

記載すべき事項は労基法施行規則5条に列記されています。
1 労働契約の期間に関する事項
1の2 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
1の3 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
2 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
3 賃金(退職手当、臨時の賃金、賞与、を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期に関する事項
4 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

施行規則には続きがありますが、書面記載範囲はここまでです。以下は明示すれば足ります。

3 昇給に関する事項
4の2 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
5 臨時に支払われる賃金、賞与及び第8条各号※に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
6 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
7 安全及び衛生に関する事項
8 職業訓練に関する事項
9 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
10 表彰及び制裁に関する事項
11 休職に関する事項

※8条各号の賃金とは1カ月を超える期間をもってする

1 出勤成績によつて支給される精勤手当
2 一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
3 奨励加給又は能率手当

なお、短時間労働者(パート)、有期労働者に対しては、上の事項のほか、昇給・賞与・退職金の有無、相談窓口を記載しないといけません。悪名たかい固定残業代制も賃金計算の方法ですので記載となります。

事実と相違する記載はいけないことは言うまでもありません。その場合、労働者は是正を求めることなく即日退職することができ、使用者にとってはこれまでかけた採用コストを回収できない痛手となります。またハロワークに立てた求人票と雇い入れ通知書が相違する場合は、虚偽求人企業としてこちらは刑事処罰の対象となりましたので、細心の注意が必要です。

求職者と接して、求人票記載の労働条件を変更したい、取り消したい、確定したい、付け加えたいといった、採用面接の過程で多々生じることでしょう。その場合は、口頭で了承を得るだけでなく、書面で新旧対比表にするなど交付せねばなりません。最悪、雇い入れ通知書に、相違部分をアンダーラインを引くなどして、求人票と違う部分があると、説明しておくことで、刑事処罰から免れることとなっています。こういった書面主義は、いいかげんになされてきた採用過程への警鐘であり、求職者への丁寧な対応が求められています。

求人時に明示する事項と、雇入れ時交付書面に記載する事項にずれがあります。

求人時
(職業安定法)
雇入れ時
(労働基準法)
二 労働契約の期間に関する事項一 労働契約の期間に関する事項
 一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
一 労働者が従事すべき業務の内容に関する事項
三 就業の場所に関する事項
一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二の二 試みの使用期間に関する事項 
四 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
五 賃金(臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則第八条各号に掲げる賃金を除く。)の額に関する事項三 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期
 四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
六 健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険、雇用保険の適用に関する事項 
七 労働者を雇用しようとする者の氏名又は名称に関する事項 
八 労働者を派遣労働者として雇用しようとする旨 
九 就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項 

採用担当者はそれなりのスキルと配置部署との綿密な意思疎通が必要だということでしょう。

対比表にせよ、通知書にせよ、雇用者となる側と、雇われる側の齟齬をすこしでもせばめ、労使紛争に発展することを回避し、採用コストを低減させたいものです。


(2020年12月15日投稿 2022年4月14日編集)

関連項目

労働条件通知書(有期雇用向け) 

労働条件通知書(無期雇用向け) 

求人票、雇い入れ通知書、就業規則

2020/08/15

雇用環境数値開示の意味するところ

就労実態等に関する職場情報

新卒採用においては義務となっており、中途採用でも試行中の雇用環境数値、御社は胸張って開示できますでしょうか。

  1. 募集・採用に関する状況
    • 過去3年新卒(中途)採用数
    • 同 離職者数
    • 過去3年間の新卒(中途)採用者数の男女別人数
    • 平均勤続年数
    • 平均年齢
  2. 職業能力開発取り組みの有無、ありならその内容
    • 研修・自己啓発支援・メンター制・キャリアコンサル・社内検定
  3. 職場定着取り組み実施状況
    • 月平均所定外労働時間
    • 有給休暇平均取得数
    • 育児休業取得者数/出産数
    • 役員、管理職に占める女性の割合

最後をのぞき、1と3は男女別に開示することとなっています。全社分と募集か所(採用職種別)とにわけて記載できます。1~3のそれぞれ最低一つ数値内容を出すことが義務となっています。差し支えのない企業はすすんで全面開示するでしょうから、なにかにつけ伏せておきたい数字のある企業は、要注意企業と目され採用コストの上昇となります。下記に例示してみました。職探ししている人が、複数候補に迷っているうちに、次に開示されている数字の意味するところをみて、求職者はどちらの会社を選択することになるでしょうか。

過去3年採用数

 前々々年前々年前年
A社564
B社356

過去3年採用離職者数

 前々々年前々年前年
A社554
B社010

前年の月平均残業時間数年平均有給取得数平均勤続年数
A社35.8時間6.0日4.2年
B社11.2時間15.5日14.6年

業種により同業者はよく似た傾向を示すとはいえ、入社したての新入社員(中途を含む)に早やばやと逃げ出される企業はろくでもないということを、世間にしらしめることになるでしょう。なお、過去3年の数値については、当分新卒者に限ってのデータ公表となります。近いうちに中途も併記した公表となるでしょう。(雇用環境数値と題していたのを若者雇用促進法のパンフにならい本見出しを改めます。)

中途採用数値

2021年4月1日から施行になりますが、中途採用数値公表が大企業に義務付けられます。過去3年にわたって正社員採用数にしめる中途採用の割合を、インターネットに公表させることになりました。1年度がおわっての更新を義務付けています。

昔からの上場企業は、新卒採用一本やり、社内育成、毛並みをそろえて同期を競争させての年功序列でした。そこを中途採用をうながし正規間の同一労働同一賃金や、多様性をもたせる意味合いがあるのでしょう。一方中小企業は元から中途採用が活発だったこともあり、適用は当分ない見込みです。

ISO30414

国際標準化機構により、従業員に関する人的資本情報の定量化、分析、開示に関するガイドラインが2018年に定めされました。財務諸表、事業報告といった開示資料では表しきれなかった企業のもつ人材を指標化をめざしたものです。11項目58指標あり、すべてを開示する必要はありませんが、企業ごとにかかえる問題点に取り組むにあたり、目に見える指標を選択することができます。もちろん、社外に公表する、あるいは社内資料として用いる、のはそれぞれの企業がなにを目指すかによるでしょう。ここでは一例をあげておきます。なお、各国の採用形態と日本とでは相違しそぐわない項目があるのも確かです(例:重要ポストの内部登用率。日本ではなぜ外部から登用しないのかということになるでしょうか)。

  • 倫理コンプライアンス研修を受けた従業員割合
  • 提起された苦情の種類と件数
  • 一人あたりの採用コスト
  • 管理職一人あたりの部下の数
  • 従業員の定着率
  • 採用にかかる平均日数
  • 従業員1人あたりの研修受講時間

(2020年08月15日投稿 2021年10月3日編集)

2019/02/16

障害者雇用納付金(調整金)

法定雇用率の算出に当たって、ながながと手引書に解説されていますが、要領が得ないと嘆きの声をよく聞きます。

分母には、雇用した障害者を含む総労働者数、たいして分子は障害者数ですが、分母と分子では、数える概念が違ってきています。

分母は、契約・所定上の人数です。週30時以上働くと契約したなら1人とカウントします。週20時間以上(30時間未満)なら0.5人となります。

一方、分子は、対象期間の働けたのか実績が加味されます。就業規則にさだめた年次有給休暇や休職でやすんだのであれば、1人は1人とカウントできますが、そうでなければ書かれてある処置に従って減数となります。

分母と分子の扱いの違いを頭にいれて、もう一度手引書を確認してみてください。なお、分子で減数した場合、分母も減数させるようです。

その上で、不足に対して納付金を納め、超過に対して調整金が支給されます。実際は、月ごとに上で求めた雇用数を年累算し、同様に月ごとに上で求めた雇用障害者数を年累算、その差の人数に、納付金額(調整金)をかけて納付(支給)となります。

例)
年累算法定雇用数:1248人
年累算障害者雇用数:1245.5人

1248-1245.5=2.5人不足  2.5×納付金単価5万円=12.5万円納付

例示は計算の都合上僅少差としましたが、年間つうじて1人不足ですと、納付金は60万円相当になります。

この法定雇用率ですが、実勢を反映させるため5年おきくらいに見直しがなされます。
分子:対象障害者数(就業者+求職者数)
分母:全就業者数+全求職者数
また最低1人雇わねばならない企業の最低雇用数は、この法定雇用率の逆数から求めます。
1÷2.3%=43.478…人 ⇒ 43.5人(43.0人だと、法定雇用率を乗じても1人に達しないので、0.5人刻み切り上げで表示)。現行2.5%になりましたので、切りのいい40人以上雇用企業が対象となります。

法定雇用率(民間)の推移
期  間法定雇用率
昭和51年10月から昭和63年3月まで1.5%
平成10年6月まで1.6%
平成25年3月まで1.8%
平成30年3月まで2.0%
令和3年2月まで2.2%
令和6年3月まで2.3%
現  行2.5%
  令和8年7月から(予定)2.7%
カウント対象の推移
 昭和51年10月~昭和63年4月~平成10年7月~平成18年4月~平成30年4月~
身体障害者カウント対象
知的障害者 カウント可能カウント対象
精神障害者 カウント可能カウント対象

身体障害者雇用はS51.10から、知的障害者はH10.7から、精神障害者はH30.4からそれぞれ義務化。それ以前はみなしとしてカウント可能としていました。

(2019年2月16日投稿 2024年4月14日編集)

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