2020/12/30

年次有給休暇の付与日数

年次有給休暇の付与日数は、正社員(フルタイムまたは週所定30時間以上)、短時間の別に応じ、勤続年数、過去1年間(入社時は6カ月間)の出勤率8割(=出勤日数÷所定勤務日数)を満たす労働者に対し、付与日の雇用契約形態に応じ、付与しなければなりません。前倒しで付与する場合は、前倒しした期間は全出勤したものとして出勤率計算します。なお赤字の日数を付与された労働者は、付与してから1年内に使用者に課せられた最低5日時季指定義務対象となります。


付与日数

通常の労働者(週5日契約労働者、週30時間以上契約労働者を含む)の付与日数(0.5,1.5…は、0年6カ月、1年6カ月…を表します。)

勤続年数(年)0.51.52.53.54.55.56.5
付与日数(日)10111214161820

上記以外の労働者(週4日以下かつ週30時間未満契約)の付与日数

勤続年数(年)0.51.52.53.54.55.56.5
週所定労働日数年間所定労働日数
4日169日~216日10121315
3日121日~168日1011
2日73日~120日
1日48日~72日

年間所定労働日数とは、契約から週所定日数を算出できない不規則勤務の場合に用います。


8割出勤率の計算方法

付与日の前日からさかのぼること1年の期間で出勤率を計算します。勤続6カ月の場合は、その入社半年間で判定します。法定付与日より前倒しで付与する場合、前倒しで未経過期間は、全出勤したものとして算入します。(例:法定付与日7月1日のところ5月1日に前倒し付与する場合、5/1~6/30の間の所定労働日は全出勤扱い)

分子に入れる日数分子に入れなくてよい日分母分子に入れない日分母分子に入れるか入れないかは事業者が決めることができる日
・所定労働日の出勤日数
(遅刻、早退した日も含みます)

所定労働日にあって
・年次有給休暇取得日
・労災で休業した日
・産休育休、介護休業した日
・代休日※
・休日労働した日
・欠勤日
・休職期間
・使用者責めの休業
・ストライキ
・生理休暇ほか
分母に入れる日数分母にいれなくてよい日
・その労働者の所定労働日・所定休日(法定休日を含む)
※代休日は、労働日にあって休んでいい日と使用者が認めた日であって、欠勤した日でない。なお、労働日と休日を事前に入れ替える正規の振替休日であれば、労働日となった日の勤務状況をみる。


(2020年12月30日投稿 2022年12月13日編集)
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年次有給休暇の時季指定義務(規定例) 

計画年休 運用上の論考 

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2020/12/15

雇用契約書と雇い入れ通知書

求人票をみて応募してきた求職者に採用時交付する書面の説明です。

雇用契約をはじめ各種契約の成立には、保証契約といったごく一部を除き、双方の意思が合致すればよく、書面のやりとりといった形式行為は不問です。意思が合致したからといって雇用契約するうえでは、あとから言った聞いてないの争いになりやすく、これでは労働者の保護にかけるので、労基法は使用者に雇入れる労働者への書面交付義務を課して民法(契約法)を修正しています。

雇用契約書と雇い入れ通知書、どちらも労基法15条雇用契約を締結するときに交付しなければならない書面としての役割をはたしています。どちらをもってするかは、雇い入れ側の任意です。「働き始めた」ときに交付でなく「締結に際し」ての交付ですので、採用面接の場で働き始めるのも含め、「あなたを雇います、来週から来てください」と言い終わらないうちに、労働者の手元に交付書面がなければなりません。来週の出社してもらってからの交付では遅すぎます。

さてその交付書面ですが、通知書は一紙片、契約書は双方自署(記名押印)といった違いから生じる、メリットデメリットがあります。通知書は、厚労省からモデル雇入れ通知書があり、そのひな形に従えば法定項目を網羅できる半面、交付した証拠が残らないというデメリットがあります。契約書はその逆で、交付した書面が双方の手元に残るものの、モデルとなる契約書ひな形はありませんので、法令項目を書き洩らすおそれが多分にあります。そこで表面は契約書タイプで重要事項を、そして裏面は雇い入れ通知書にて法令項目を網羅するという形がスマートでしょう。

網羅するも細部は「就業規則何条参照のこと」と書くことができますが、その場合は契約書(通知書)の交付と共に就業規則もいっしょに手渡さねばなりません。また契約書にサインさせるだけさせて回収し、本人の手元に同文を交付してなければ、交付義務を果たしたことにはなりません。

記載すべき事項は労基法施行規則5条に列記されています。
1 労働契約の期間に関する事項
1の2 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
1の3 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
2 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
3 賃金(退職手当、臨時の賃金、賞与、を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期に関する事項
4 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

施行規則には続きがありますが、書面記載範囲はここまでです。以下は明示すれば足ります。

3 昇給に関する事項
4の2 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
5 臨時に支払われる賃金、賞与及び第8条各号※に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
6 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
7 安全及び衛生に関する事項
8 職業訓練に関する事項
9 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
10 表彰及び制裁に関する事項
11 休職に関する事項

※8条各号の賃金とは1カ月を超える期間をもってする

1 出勤成績によつて支給される精勤手当
2 一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
3 奨励加給又は能率手当

なお、短時間労働者(パート)、有期労働者に対しては、上の事項のほか、昇給・賞与・退職金の有無、相談窓口を記載しないといけません。悪名たかい固定残業代制も賃金計算の方法ですので記載となります。

事実と相違する記載はいけないことは言うまでもありません。その場合、労働者は是正を求めることなく即日退職することができ、使用者にとってはこれまでかけた採用コストを回収できない痛手となります。またハロワークに立てた求人票と雇い入れ通知書が相違する場合は、虚偽求人企業としてこちらは刑事処罰の対象となりましたので、細心の注意が必要です。

求職者と接して、求人票記載の労働条件を変更したい、取り消したい、確定したい、付け加えたいといった、採用面接の過程で多々生じることでしょう。その場合は、口頭で了承を得るだけでなく、書面で新旧対比表にするなど交付せねばなりません。最悪、雇い入れ通知書に、相違部分をアンダーラインを引くなどして、求人票と違う部分があると、説明しておくことで、刑事処罰から免れることとなっています。こういった書面主義は、いいかげんになされてきた採用過程への警鐘であり、求職者への丁寧な対応が求められています。

求人時に明示する事項と、雇入れ時交付書面に記載する事項にずれがあります。

求人時
(職業安定法)
雇入れ時
(労働基準法)
二 労働契約の期間に関する事項一 労働契約の期間に関する事項
 一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
一 労働者が従事すべき業務の内容に関する事項
三 就業の場所に関する事項
一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二の二 試みの使用期間に関する事項 
四 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
五 賃金(臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則第八条各号に掲げる賃金を除く。)の額に関する事項三 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期
 四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
六 健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険、雇用保険の適用に関する事項 
七 労働者を雇用しようとする者の氏名又は名称に関する事項 
八 労働者を派遣労働者として雇用しようとする旨 
九 就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項 

採用担当者はそれなりのスキルと配置部署との綿密な意思疎通が必要だということでしょう。

対比表にせよ、通知書にせよ、雇用者となる側と、雇われる側の齟齬をすこしでもせばめ、労使紛争に発展することを回避し、採用コストを低減させたいものです。


(2020年12月15日投稿 2022年4月14日編集)

関連項目

労働条件通知書(有期雇用向け) 

労働条件通知書(無期雇用向け) 

求人票、雇い入れ通知書、就業規則

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