2023/02/19

月間時間外60時間超5割増賃金適用

2023年4月から中小企業に、月間60時間超時間外労働5割増し賃金が適用されます。これは2010(平成22)年4月改正労基法で施行されてはいたのですが、中小企業だけ適用が猶予されていたものです。先の働き方改革法でとうとう猶予条項も2023/3/31をもって削除となりました。月間60時間超とは61時間目をいうのでなく、60時間を1秒でも過ぎた部分をいいます。

さて、適用日と賃金計算開始日が同一ならいいのですが、末日締め以外の会社もすくなくありません。この場合60時間カウントはどうなるかというと、H22年当初のパンフレットに言及ありますので、引用しておきます。

Q4.改正法の施行日である平成22年4月1日をまたぐ1か月については、どのように計算すればよいですか。
A4.施行日である平成22年4月1日から時間外労働を累積して計算をします。例えば、「1か月60時間」の計算における1か月を、毎月21日~20日としていた場合、平成22年4月1日~4月20日までの時間外労働時間数が60時間を超えた部分について50%の割増賃金を支払う必要があります。
改正労働基準法のあらまし 11ページ  4.施行日をまたぐ1か月について

平成22年とあるのは、令和5年と読み替えてください。面倒なら3月中の賃金計算開始日からカウントしての60時間超部分から5割増し賃金とするのも労働者有利となる限り可です。就業規則に移行措置として明確にしておきましょう。

中小企業の定義はこちら。時間外労働の上限規制 わかりやすい解説5p

よく似たケースで、2023/4適用前に資本金・従業員数基準の内どちらか遅いほうで大企業該当になった時点での適用になるわけですが、考え方としては施行日と賃金計算開始日のずれと同様です。

Q14  改正法施行後、増資や労働者数の増加により中小事業主に該当しなくなった場合において、どの時点から引上げられた割増賃金率が適用されるのか。また、賃金計算期間の途中に中小事業主に該当しなくなった場合、どの時点から60時間の算定を行うのか。
A14  改正法の施行後において、中小事業主でなくなった時点から割増賃金率の引上げが適用となる。賃金計算期間の途中に中小事業主に該当しなくなったときは、その時点以降の1か月60時間を超える時間外労働について、5割以上の率で計算した割増賃金の支払が必要となる。
労働基準法Q&A(H22/4改正)

(2023年2月19日投稿)

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2023/02/10

月間時間外集計

時間外労働の計算するにも、どうもいりくんでいて一筋縄には行かないのでしょう。そこで練習問題を作ってみました。マス目の左肩は日付、右下は実労働時間(簡便にするため分単位はなし)を記載してあります。2重線で囲んだ範囲が月内となります。(※試作品のため集計間違い等修正することがあります。)

 
Ⅰ 週  12345
Ⅱ 週6789101112
10
Ⅲ 週13141516171819
Ⅳ 週20212223242526
11
Ⅴ 週2728293031  
11

毎週休める休日をいれてますので、法定休日労働を考慮することはありません。実労働時間の日8時間超えをピックアップ、そして日で時間外としなかった時間を週集計して40時間超えを捕捉してみてください。週は日曜始まり、変形労働時間制を取っていないものとします。

 
Ⅰ 週  12345

第1週、毎日定時で帰って日々の時間外はありませんが、土曜日がこの週の6勤務目ですので、この日の8時間が週40時間超えの時間外労働となります。

 
Ⅱ 週6789101112
10

第2週、週全体でみると40時間に収まっていますが、火曜日にした2時間時間外労働を、木曜に早帰りさせたとしても帳消しにはなりません。火曜の最後の2時間を時間外労働とカウントします。

 
Ⅲ 週13141516171819

第3週、毎日7時間労働で、日において時間外はありませんが、週累計で42時間となり土曜の7時間の内最後の2時間が時間外労働。週の時間外労働2時間となります。

 
Ⅳ 週20212223242526
11

第4週はどうでしょうか。日においては、
24日11-8=3
25日 9-8=1
計4時間時間外労働しています。次に週の累計するとき、24日、25日の両日、時間外とカウントした時間を除外して週集計します。ですので
8+7+7+(11-3)+(9-1)+8=
8+7+7+   8  +  8  +8=46
週40時間超えは6時間となり、土曜8時間の最後の6時間が時間外労働となります。あわせて10時間時間外労働です。

単純にこの週足し合わせて50時間になるのですから、40時間超え10時間とすればいいように思えます。それではいけないことを、次の週で説明してみます。(おなじく第2週で日を度外視した週累計では40時間ちょうどですので、時間外労働がないことになってしまいます。)

 
Ⅴ 週2728293031  
11

第5週も前週と同じように時間外労働したとします。しかしこの週の途中に月を跨ぎます。日のカウント、週のカウントは前週同様ですが、日のカウントのうち当月内は31日のみの3時間、それ以降の日、週超えのカウントは翌月に持ち越しとなります。

それでは時間外の週別集計表を作ってみました。この月の時間外労働は計25時間となります。

 前月計上当月計上翌月計上
 
Ⅰ 週  12345  
Ⅱ 週6789101112
10
Ⅲ 週13141516171819
Ⅳ 週20212223242526
11
Ⅴ 週2728293031  
11

2023年4月中小企業の月間60時間超5割増賃金支払適用開始されるところ、月の集計に関する解説記事がネット上に見当たらないのが気になるところです。 調べてみたら月間時間外時間集計は、平成22年改正労働基準法のあらまし7ページ以下のほうが詳しいです。 時間単位の説明でしたが、分単位も交えた説明は下記の「時間外労働のカウント」をご覧ください。

(2023年2月10日投稿、2023年3月2日編集)

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表の表示が崩れる場合は、横長画面か、ウェブバージョンでご覧ください。

2023/02/09

古い最低賃金推移データ

厚生労働省サイトに最低賃金の最新および経年データが掲載されています。 平成14年以前のデータを同サイト内に見つけましたので、加工して掲載しておきます。発効日等はリンク先を参照ください。コピペして、CSVファイル化すれば、エクセル等で利用できるでしょう。京都府(北)に数字があがっている年度の、京都府は「京都府(南)」となります。年度の「元」は平成1年です。2002度から表示単位は、日額から時間額単独となる。それ以前日額を8で割った少数点以下表示がある。

(2023年2月10日投稿、2023年3月11日追記)

年度,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,元,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14
北海道,277,295,314,336,359,380,394,403,418,430,440,453,472,495,520,542,559,572,586,598,611,622,628,633,637,637
青森,261,279,297,318,339,358,369,381,395,407,416,429,446,468,491,512,528,542,554,566,579,590,595,600,604,605
岩手,261,279,297,318,339,358,369,381,395,407,416,429,446,468,491,512,529,541,554,566,579,590,595,600,604,605
宮城,271,289,307,328,349,368,379,391,405,417,426,440,456,479,502,523,540,554,569,581,591,602,607,613,617,617
秋田,262,279,297,319,339,358,369,381,395,407,416,429,446,468,491,512,528,542,554,566,579,590,595,600,604,605
山形,262,280,298,319,340,359,370,382,396,408,417,429,447,468,491,513,529,542,554,566,579,590,595,600,604,605
福島,266,284,302,323,344,362,374,386,400,412,421,433,451,472,496,517,534,546,558,571,584,595,600,606,610,610
茨城,283.5,302,320.5,343,365,385,397,410,424,437,447,460,479,502,527,550,567,581,593,606,621,632,637,642,646,647
栃木,284,302,320,343,365,384,397,409,424,436,446,459,478,501,526,548,566,581,593,606,620,632,638,643,648,648
群馬,284,302,320,343,365,384,397,409,424,436,446,459,478,501,526,548,565,579,593,606,620,629,635,639,644,644
埼玉,297.5,316.25,336,360,384,405,417,430,446,459,470,484,503,527,553,577,595,611,625,638,652,664,669,673,677,678
千葉,299,318,337,361,384,405,417,430,446,459,469,483,503,527,553,576,594,609,623,635,650,662,667,672,676,677
東京,345,365,382,405,422,442,452,463,477,488,497,508,525,548,575,601,620,634,650,664,679,692,698,703,708,708
神奈川,309,329,349,373,397,419,432,445,461,475,486,500,520,545,572,600,619,634,648,662,677,690,696,701,706,706
新潟,281,301,319,341,362,382,394,407,421,434,444,457,476,499,523,545,563,576,589,602,616,626,632,637,641,641
富山,285,304,322,344,366,386,400,410,426,438,447,461,479,502,527,549,566,579,593,605,618,629,635,640,644,644
石川,285,307,322,345,367,386,400,412,426,438,448,461,480,503,528,550,568,580,593,606,619,630,636,641,645,645
福井,282,300,320,342,363,383,395,407,422,435,444,458,476,500,524,547,565,577,590,603,616,628,632,637,642,642
山梨,286,304,323,346,367,387,399,412,426,439,449,462,481,504,528,551,568,582,595,608,622,632,638,643,647,647
長野,286,304,323,345,367,386,401,412,426,438,448,461,480,503,528,551,568,580,594,607,619,630,636,641,646,646
岐阜,293,311.75,332,355,378,399,412,425,440,454,464,478,497,521,547,570,588,603,616,628,641,653,658,663,668,668
静岡,294,312.5,332,356,379,400,413,425,441,454,464,478,498,522,548,571,589,603,617,630,645,656,662,667,671,671
愛知,302,320.88,340.38,364.13,387.5,409,422,435,450,463,474,488,507,531,557,580,598,613,626,640,654,665,671,677,681,681
三重,293,312,332,355,378,400,412,425,440,454,464,478,497,521,547,571,589,602,616,629,642,652,658,663,667,667
滋賀,282,300,319,342,365,385,397,410,425,437,447,461,480,503,528,550,567,581,596,609,623,635,640,647,651,651
京都,296,315,342.5,368,392,413,426,439,455,468,477,490,508,527,553,577,595,609,624,637,650,661,668,673,677,677
京都(北),-,-,325,348,371,391,404,416,431,445,456,472,495,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-
大阪,315,330,350,375,402,423,435,450,465,480,490,503,523,547,575,601,620,634,648,662,677,690,695,699,703,703
兵庫,296,315,335,359,382,403,415,430,445,458,468,482,502,527,553,577,594,608,620,634,648,660,666,671,675,675
奈良,276,294,313,337,359,379,392,405,420,433,442,457,477,502,527,550,568,581,595,608,621,632,638,643,647,647
和歌山,286,304,322,345,367,386,399,411,426,438,448,461,480,503,528,550,569,582,594,606,619,630,635,641,645,645
鳥取,268,286,304,326,346,364,376,387,401,413,422,435,452,474,497,518,534,547,559,571,584,595,600,605,609,610
島根,270,287,302,323,345,363,374,386,400,412,421,433,451,472,496,516,533,546,558,570,582,592,598,603,608,609
岡山,277,296,314,337,359,379,391,403,418,431,440,454,473,496,520,542,560,573,587,600,613,624,631,636,640,640
広島,278,296,315,337,361,380,394,405,420,433,442,456,475,498,525,545,564,577,591,604,615,627,633,638,643,644
山口,276,295,313,336,358,380,390,402,417,430,439,453,471,494,520,543,559,573,585,597,610,623,627,632,637,637
徳島,268,286,304,325,346,365,377,388,402,414,423,436,453,475,498,520,536,550,563,574,588,597,602,607,611,611
香川,268,286,304,326,347,365,377,388,402,414,423,436,453,475,499,520,537,550,565,577,590,602,608,613,618,618
愛媛,268,286,304,325,346,365,377,388,402,414,423,436,453,475,498,520,536,550,563,574,588,597,602,607,611,611
高知,269,287,305,326,347,365,377,388,402,414,423,436,453,475,498,520,536,550,562,573,585,596,601,606,610,611
福岡,280,300,319,341,363,383,395,407,422,435,445,459,477,500,525,547,564,578,591,603,617,628,634,639,643,643
佐賀,261,280,297,318,339,358,369,381,395,407,416,429,446,468,491,512,528,541,554,566,579,590,595,600,604,605
長崎,261,280,297,318,339,358,369,381,395,407,416,428,446,468,491,512,528,541,554,566,579,590,595,600,604,605
熊本,261,280,297,318,339,360,369,381,395,407,416,429,446,468,492,513,528,541,555,567,580,590,595,600,605,606
大分,261,279,297,318,339,360,369,381,395,407,416,429,446,468,491,512,528,541,554,566,580,591,595,600,605,606
宮崎,261,280,297,318,339,358,369,381,395,407,416,428,446,468,491,512,528,541,554,566,579,589,595,600,604,605
鹿児島,261,279,297,318,339,358,369,381,395,407,416,428,446,468,492,512,528,541,554,566,579,590,595,600,604,605
沖縄,261,280,297,318,339,358,369,381,395,407,416,429,446,468,491,512,528,541,554,566,579,590,595,600,604,604
加重平均,-,315,334,357,379,399,411,423,438,451,461,474,492,516,541,565,583,597,611,624,637,649,654,659,664,664

2023/02/05

虚偽求人企業ともくされないために

平成30年1月改正職業安定法が施行されました。

その中に、虚偽の労働条件を提示して求人することは前から処罰対象であったのですが、それに加えてハロワーや職業紹介業者に同じく虚偽求人をたてることも刑事処罰対象となりました(法65条10号、懲役6月、罰金30万円)。

たてた求人票をみて応募してきた求職者と面接等折衝するうちに、就業条件を変更、特定、追加、削除したくなるでしょう。特に、「給与 20万円から25万円」と求人票に記載してある場合、応募してきた求職者の給与を22万円と決定することは、ここでいう「特定」に当たります。

そのことを本人へ伝えるのに口頭説明ですますのでなく、あわせて書面を用意しておき「提示」でなく書面「交付」が必須となっています。本人希望すれば、書面に換えて、ファックス、電子メール等でも交付可能です(施行規則4条の2第4項)。これが免罰要件となるのですから、確実に実施したいものです。

書面形式としては、新旧対比表といった形で、求職者にわかりいい方法をとるなど工夫が望まれます。

新旧対比表のイメージ

     様

この度は弊社求人にご応募いただきありがとうございました。あなたのご要望をうけ就業条件につきましては、下記の通り変更しますので、なにとどご検討のほどお願い申し上げます。

項目
給与額(特定)20万円~25万円22万円
通勤手当(変更)月限度額2万円まで同3万円まで
試用期間(取消)入社後6カ月(なし)
転勤範囲(追加)長野支店限定本社、長野支店に限定

最悪、雇入れを伝えるときの交付義務書面、労働条件通知書に該当箇所をアンダーラインをひいておくなりして、求人票からの変更等の部分だと言い渡しておく必要があります。

(2023年2月10日投稿)

2023/02/01

古いままの就業規則

一度作った就業規則を10年20年手つかずに放置しているのはよくあるようで、ところどころ部分改正するのでしたら、いっきに全面刷新してしまうのが一番でしょう。そうでなくどこから改正に手をつけたらいいか、就業規則の最終改正時期を目安に、逆年表というか足掛かりを作ってみました。就業規則の箇所だけでなく会社が取り組む計画策定、社内規定等の範囲もふれてあります。重複する項目は、最新のみ掲載している場合があります。詳細は労基署ほか関係各庁ホームページを参照ください。改正時期等の正確性や網羅性は保証してません。あしからず。

凡例:灰色文字は採用任意ながら、適用している場合は要見直しの場合あり
(◇)は、当ブログ内の参考記事へのリンクです。
毎年10月ころ最低賃金引き上げ
2025(R7)年4月希望者全員65歳までの雇用の場提供義務完全実施(◇)
2024(R6)年4月
  • 建設事業等の時間外休日規制適用(◇)
  • 雇入れ通知書(記載事項増)(◇)
  • 裁量労働制拡充(要締結協定見直し)(◇)
  • 障害者雇用率引き上げ(◇)
2023(R5)年4月時間外割増賃金(中小企業月間60時間超5割増し)(◇)
2022(R4)年7月男女(正規、非正規)別賃金比率公表(301人雇用以上企業)
6月内部通報者保護対応改正
4月、10月育児介護休業法(有期雇用者の制限緩和、出生時育児休業他(ほぼ全面見直し))(◇)
4月
2021(R3)年4月希望者全員70歳までの就業の場提供努力義務
1月育児介護休暇の時間取得可(Q&A)
2020(R2)年6月ハラスメント対応改正(中小は2022年4月)
4月賃金消滅時効5年(当面3年)関係帳簿の保存期間5年へ延長(当面3年) (◇)
2019(H31)年4月働き方改革法施行
  • 年次有給休暇の年5日指定義務(◇)
  • フレックスタイム制の拡張(◇)
  • 時間外休日労働の上限規制等(◇)
2018(H30)年1月虚偽求人とみなされない対応(職業安定法改正)(◇)
2016(H28)年4月障害者雇用差別の禁止、合理的配慮提供義務
3月青少年雇用情報シート開始(職場環境開示義務)(◇)
1月マイナンバー対応制定
2013(H25)年4月
2011(H23)年4月仕事子育て両立支援行動計画策定公表義務(301人雇用企業から101人雇用企業に拡大)
2010(H22)年4月H22労基法改正
  • 時間外割増 月間60時間超5割増し(中小は2023年4月)
  • 特別条項適用時の割増賃金率
  • 時間単位年休、代替休暇

(2023年2月1日投稿、2024年1月4日編集)

関連項目

労働者過半数代表 

就業規則制定(変更)届 

新設の社内規定は、就業規則の一部なのか 

労働局の就業規則案内 

就業規則案内見本 

労働法関連の改正時期一覧 


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