2022/07/27

社会保険拡大適用・いくら余分に働けばいい?

2022年10月から、企業単位の(従業員数でなく)被保険者数101人以上(500人未満)事業者の勤め先が、社会保険拡大適用されます。通常の労働者の4分の3以上が被保険者対象だったのが、所定週20時間以上、所定8万8千円以上といったいくつかの条件を満たした短時間労働者も、社会保険対象となります。



時給1050円、週3日24時間勤務だと、保険料がいくら増えて手取りがいくら減るか計算してみます(残業、通勤手当なしとします)。まず月額賃金は


1050円×24時間×52週/年÷12=109,200円/月

厚生年金保険料 4等級(標準報酬月額110千円)10065円

健康保険は保険者により保険料率がことなります。そこで協会けんぽ(東京)を例に、


   
健康保険料 7等級(同) 介護保険なし 5395円  介護保険あり 6297円

カバーしようと賃金増える分、雇用保険料(3.5/1000)も増えますが、100円未満の世界ですのでこれは無視します。


(厚年)10065円+(健保・介護あり)6297円=16362円

これに対する源泉所得税は、控除する社会保険料が増えるので、被扶養者の有無にもより確実に減るとは言えないので、これも無視します。求まった保険料総額を時給で割ってみます。


16362円÷1050円=15.58時間

そうすると、月当たり15時間半余分に残業して働くか、週あたり半日(約4時間)余分に働く契約をして、もとの手取りを確保できる計算になるのでしょう。ただ、そうすると、3カ月平均をとる定時算定により、おそくとも来年9月(源泉は10月)2等級上の保険料適用となり、2300円ほど負担が増えます。4月~6月に支払を受ける賃金、言い換えると3月~5月の働きを残業なしにするか、来年9月からもう2時間強増やして、増える保険料をカバーするかでしょう。ただし半日余分に本年10月契約ならその契約をもとに資格取得時決定になります。


週24時間契約の方は、時給単価が異なっても、比例するので多少でこぼこがあっても15時間半が目安になります。


契約時間数が異なると

同じ時給者同一条件で週30時間未満における2時間刻みで計算してみした。


週契約時間(時間)
2826242220
発生保険料(円)(a)1874217552163621457713090
余計時間(時間)
(a)÷1050円
17.816.715.513.812.4

20時間以上30時間未満の長短で、埋め合わせできる時間数が異なるようです。25時間も24時間と同じ等級に属するといったこともありますので、こういった傾向にある、というふうにとらえてください。


ここで前もってお断りした、「手当に通勤交通費が含まれる」、「時間外につく割増賃金」以外にも、資格取得時に従前からする残業時間をこみで算定に付される、年齢(保険ごとに加入が異なる)、保険者により異なる健康保険料率、雇用保険料(2022年10月からは保険料0.5/1000値上)、最低賃金の上昇、扶養家族の有無による源泉所得税の発生、働く配偶者のうける家族手当や税扶養の影響、といったもろもろの条件は考慮していません。

ちなみに月8万8千円ちょうどですと、健康保険料約4300円(協会けんぽ(東京))、厚生約8000円 計約12300円といったところ。40歳以上だとさらに介護保険700円プラスとなります。

(2022年7月27日投稿、2022年11月7日編集)

参考記事

協会けんぽ・都道府県別料額表

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給与明細書の仕組み 

社保拡大適用 

2022/07/07

2カ月ないし6カ月平均

働き方改革法で、時間外休日労働の上限規制が数値として法制化されました。いままでは法の外、大臣告示の基準として示達されていただけに、労基法70年余の歴史上、数値法定化は画期的な出来事です。そのひとつに、法定休日労働を含む時間外労働時間が、単月100時間に達してはならず、2カ月ないし6カ月平均で80時間を超えてはならないというものがあります。計算方法は煩雑なのですが、例示してみましょう。

年月R4.2R4.3R4.4R4.5R4.6R4.7
時間外労働時間806045355579
法定休日労働0201510300
合計808060458579
 
 6カ月平均
 5カ月平均
 4カ月平均
 3カ月平均
 2カ月平均
 
 6カ月平均5カ月平均4カ月平均3カ月平均2カ月平均
合計時間429349269209164
平均時間71:3069:4867:1569:4082:00

先月の時間外が単月80時間に収まっていても、平均をとったところ80時間オーバーでは、法違反となります。おわってからの計算で80オーバーと気付いたのではあとの祭りです。この例では6月が終わった段階で、今月(7月)は何時間が上限か算出可能です。平均を求める算出式を変形しています。労務担当者はぬかりなく算出したうえで、社内通達して今月の上限時間を徹底する必要があると言えるでしょう。なおその最小値が100時間(以上)とでても、単月100時間に達してはなりませんので、99時間59分という値になります。

あらかじめ6月終わった段階の7月上限計算例です。

6カ月×80時間-[2~6月]=a480-350=130
5カ月×80時間-[3~6月]=b400-270=130
4カ月×80時間-[4~6月]=c320-190=130
3カ月×80時間-[5~6月]=d240-130=110
2カ月×80時間-[6月]=e160-85=75

[括弧内]の月範囲は、その期間の時間外・休日労働時間の合計数値です。求まるa~eの最小値が今月(7月)の時間外・休日労働時間上限となります。上の例では、7月の最大は75時間が上限だったわけで、それを求めずにいると平均80時間以上働かせる危険性があります。場合によっては今月上限0に近い数値がでることもありますので、毎月早急に今月可能時間外・休日労働時間数をもとめて、部門長に厳命する必要があるでしょう。組織が大きければ大きいほど、動きを急に止めることはできませんから、あらかじめ部下を持つ上長に対し、新労基法のしくみを周知徹底し、体制を整えておくのはいうまでもないでしょう。

特別条項の年間発動回数は、対象期間が終わればリセットされますが、この2~6カ月平均は、新法による36協定期間であれば期をまたいで求めます。この例では、仮に4月から新36協定期間でも、2月3月の時間を用いて6か月5カ月平均を求めます。また転勤してきた人も、前職の時間外休日労働時間数も対象ですので、自己申告いただくようにしてください。

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36協定に書く数字 

時間外労働のカウント 

(2022年7月7日投稿、2022年11月12日編集)

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