2024/02/15

賃金手渡し

賃金を現金で手渡しって合法なんですか、という質問が立つくらい銀行振込がポピュラーになりました。とはいえ、6年前の調査ですが、銀行振込でない、給料手渡しする勤め先は、全国平均で10%と、まだ一定数あるようです。地域差も顕著で、関東東海は7~8%である一方、中国四国は20%と意外と高率です。郵貯以外で、地元の地方銀行1行、信用なんとかと名くのつく金融機関があればいいほうで、都市銀行1行もない地方もあるのだろうと想像に難くないです。市街地にあるならともかく、郊外だとアクセス悪いですし、事業者だって金子(きんす)そろえるのも一苦労でしょう。両替だけでなくコイン取り扱いも手数料とるご時世、銀行であってもコインは手間以外の何物でもなく、今後銀行振込が地方くまなく浸透していくのでしょうか。

労働基準法24条に賃金払いの原則が規定されています。

  1. 通貨で
  2. 直接労働者に
  3. 全額を
  4. 毎月一回以上
  5. 一定の日に

という内容で賃金払い5原則と呼ばれています。それぞれの原則に対しこまかな例外が定められていますが、銀行振込はこのうちの通貨払いの例外にあたります。

そこで、銀行振込に関する通達のうち参考になる分をピックアップしてみました。

・銀行振込するには、労働者の同意が必要だが、どういう形の同意取り付けでもよく、賃金振り込んで欲しいとの銀行名口座番号かかせた書面でもって、同意を推測できるとしてよい。

・振込は、賃金支払日に全額払いだせる形を要する。

・口座振込を実施する事業所は、労使協定の締結を要する(注:法令に根拠はなく、行政の要請でしょう。)。

・口座振込日に、賃金額、控除額、振込額を記載した書面を労働者に交付すること。

・振込日の午前10時までに口座から引き出し可能とすること。

・賃金計算を外部委託する場合であっても、振込実行は使用者がなすこと。

(2024年2月15日投稿)

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2024/02/01

職場情報開示にむけて

このたびの厚労省労働制作審議会分科会で、「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」の作成について資料提示されていました。前々から話題にしていた、新卒向けの職場情報提供義務の中途採用版です。義務化なのか、またスケジューリング等はあきらかではありませんが、いよいよ始まるといったところです。資料から目についた開示事項等抜粋してみました。

  • 残業時間
  • 有給取得率
  • 賃金(含む手取低下しないか否か、中長期見通し)
  • 子育て支援(休業取得実績、時短制度)
  • 女性比率
  • 中途採用者割合
  • 人材育成支援
  • 在宅、テレワーク、兼業の可否
  • 配属部署、同世代入社者の声
  • 研修制度、フォロー体制、転勤の有無

開示に関しては、労(求職者)使、有識者から、いろいろな意見が上がっています。同じく目についたものを拾ってみます。記述に関しては筆者の主観がまじっています。

  • 企業単位のみならず配属先の情報の2本立てが重要
  • 開示できないなら、できないでその理由を併記して情報開示に前向きな姿勢を示すべき。改善の道筋を提示することも有用。
  • 情報開示は、求職者の就職先決定というよりも、検討対象選定に利用されている。
  • 研究開発に従事するに重要なのは就職先の研究対象であり、職場情報はさして重きをおいていない。
  • 社員数が少ないとデータに偏りが生じる
  • 提示するデータに各社で算出方法が異なる。算出方法や背景説明をあわせて明記すべき。
  • ネガティブな情報開示姿勢がかえって信頼を勝ち取る場合や、イメージギャップ解消につながる場合もある。
  • 多量の数値公開はかえって見たい情報にたどりつけない。情報更改頻度が落ちる、陳腐化といった問題がある。
  • 聞き出しにくい情報は、職業紹介業者をとおす、(採否を前提としない)カジュアル面接で聞き出すという手法もある。

労使それぞれ思惑言い分があるでしょう。かくされたネガティブ情報に失望を生むことで離職率高進する半面、あらかじめ開示しておくことがギャップ失望を生まずそういう企業なのだとの受け止めたかがすすみ、定着率に寄与する側面もあるとの理解がまたれます。開示できないしたくないそして企業努力もできない事業者は、求職者に見むきもされず労働市場から退出いただきたいものです。以下は、事前にアンケートした内容の抜粋です。

活用している情報源
  • 企業ホームページ
  • 求人情報サイト
  • ハロワインターネットサービス
  • ハロワ窓口
知りたい情報
  • 給与賞与額(年間収入)
  • 具体的職務内容
  • 始業終業時刻残業時間
  • 勤務地
  • 企業がもとめる人物像
  • 休暇取得実績
  • 処遇(賃金水準、昇進、配置)
  • 経営者の人柄考え方
  • 同僚上司となる人柄考え方
  • 1日の仕事の流れ
  • 職場環境
  • 出産育児介護復職にかかる支援
知りたくても調べられなかった情報
  • 職場の雰囲気、社風
  • 仕事内容
  • 経営者の人柄
  • 評価制度
  • 給与収入
  • 勤務時間残業時間
  • 定着率
手引きが公表されました
厚労省労働報道資料

(2024年2月1日投稿、2024年4月1日編集)

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