2024/03/15

交付書面の交付タイミング

前回投稿「無期転換は5年以上、5年超?」の続きです。

有期雇用の雇い入れ時の交付書面(労基法15条、法令事項が網羅されていればタイトルは「雇用契約書」でも「雇い入れ通知書」でもなんでも可ですが、ここでは「交付書面」で通します)、本年4月から増える記載事項がいろいろありますが、そのうち有期特有のには、次のものがあります。

・更新上限の記載

・無期転換に関する事項

有期雇用にあって、交付書面の交付のタイミングが問題になります。雇い入れ時は入社しても渡せてないのは論外ですが、入社当日も実は遅いのです。あなたを雇います、来週から来てくださいと言い終わらないうちに、求職者の手になければなりません。そして、有期の場合は更新くりかえすごとに交付です。更新決定した段階で交付しなければなりません。

さて後者の無期転換関連ですが、転換権発生する契約期間に向けての交付書面には、「転換権が発生し申し込み可能」と明示せねばなりません(労働条件通知書(有期雇用向け)「その他の有期雇用向け」参照)。そしてもう一つ、行使した場合の無期転換後の労働条件も記載せねばなりません。雇用期間以外に労働条件変更が伴わない、有期時分と同様なれば、「なし」とだけ記載すればいいことになります。変更点あるなら、列記もしくは別紙にて交付せねばなりません(労働条件通知書(有期・別紙)参照)。それではこれら記載したものをいつ交付せねばならないかみてみましょう。

1年契約を6回くりかえせば、6回目の契約部分で、5年を超える時点をふくみますので、無期転換権が発生し、その期間が申込受付期間であることを前回説明しました。

では、その記載書面をいつ交付することになるでしょうか。受付期間の6回目を控えた、5回目の終わりごろ、6回目契約を更新すると決定した時点にて交付することになります(本図1回目▲参照)。5年超える部分がなくてもです。以後、申し出なければ同様に記載して交付することになります(本図2回目▲参照)。

最後に、無期転換権行使された場合、無期雇用の交付書面は、無期直前で交付すればいいのでしょうか。これについてふれた記述を見ていませんが、労働者の申し出が使用者の承諾を兼ねているので、申し出時点で交付となりましょう。

(2024年3月15日投稿)

関連資料
厚労省パンフ
関連項目

労働条件通知書(有期雇用向け)

労働条件通知書(有期・別紙)

無期転換は5年以上、5年超?

2024/03/01

無期転換は5年以上、5年超?

5年の有期雇用でよくみかける無期転換の質問からです。無期転換は労働契約法第18条に根拠があり、要件満たした労働者が雇用主に宣告したら、労働者の宣告そのものが雇用主の承諾を兼ねる、という法律構成となっています。ようするに宣告受けた雇用主は拒絶できないということになります。

さてその5年ですが、5年「以上」でなく、5年を「超える」と条文にあります。すなわち、1年契約を5回くりかえし(更新はあいまの4回)ても正味5年ですが、契約5回のどこを見ても、5年を超える部分がありません。更新5回目、1年契約6回目にして5年を超える部分を有しますので、無期転換権を得、宣言すればその契約の終わった翌日(6年と1日目)から無期雇用となります。

では、1年契約できた労働者、実は試用期間的に3か月の有期雇用を初回にしていればどうでしょうか。1年契約の5回目にして、5年を超える部分を持ちますので、通算にして4年3カ月以降の時点で無期転換権を得、宣言すれば、その契約のおわった翌日の5年3カ月にて無期雇用となります。本図では、6回目の1年契約の部分が無期雇用となります。

この違いの1番わかりいいのは、3年契約を繰り返した場合です。1度更新した2度目の3年契約、5年経過をまたずに通算3年1か月で無期転換権を得、権利行使すれば、2度目の3年契約終わった6年と1日目から無期雇用となります。これが5年契約だとすると、1度の更新した2度目の5年契約期間中に無期転換権を得、同行使により2度目の5年契約終わった10年と1日目に無期雇用となります。

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労基法の有期雇用契約 

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