2022/05/28

特定受給資格者、特定理由離職者

特定受給、特定理由、よくにた言葉ですが、前者と後者の一部は会社都合ともいわれており、雇用保険の失業給付(基本手当)を受給するうえで、給付制限がつかず、給付日数も特段厚い。それ以外の特定理由離職者は、給制限は付つかないものの、給付日数は一般と同じと、制度的にもこみいった内容となっています。下表に区分けがわかるようにまとめてみました。離職されて上段のどの区分に属するといった具体的なことは、ハロワーの認定のさい照会ください。

離職理由待期
期間
給付制限受給資格
被保険者期間
基本手当
給付日数
特定受給
資格者
倒産・解雇(重責を除く)により離職7日
あり
なし下記に加え離職前1年間に6か月手厚くなる(離職時年齢・被保険者期間による)
特定理由
離職者
更新希望ながら雇用期間満了により離職上に同じ※2
正当な理由により離職被保険者期間による
その他定年・期間満了により離職離職前2年間に12か月
自己都合退職2カ月※1
重責解雇3カ月

※1:令和2年10月1日以降の過去5年間に2回を超える自己都合での離職の場合、3か月間

※2:離職の日が平成21年3月31日から令和7年3月31日までの期限付き暫定措置。到来のつど延長されてきました。

(2022年5月28日投稿、2023年10月20日修正)

※タイトル及び文中、「特定理由資格者」を「特定理由離職者」に修正しました。

参考記事

自己都合か、会社都合か 

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2022/05/22

求人票、雇い入れ通知書、就業規則

 たまに、雇入れ時に就業規則を交付すればいいか、という質問を見かけます。求人条件の提示とその異同を見てみましょう。

求人票雇入通知書就業規則
職業安定法5条の3,規則4条の2第3項労基法15条1項、規則5条労基法89条
従事すべき業務内容従事すべき業務内容 
契約期間契約期間 
 有期の場合更新基準 
試用期間  
就業場所就業場所 
始業終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日始業終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換始業終業時刻、休憩時間、休日、休暇、就業時転換
賃金額(臨時の賃金賞与を除く)賃金の決定、計算、支払い方法、締め日、支払日、昇給賃金の決定、計算、支払い方法、締め日、支払日、昇給
 退職(解雇事由を含む)退職(解雇事由を含む)
 退職手当(範囲、決定、計算、支払い方法、支払い期)退職手当(範囲、決定、計算、支払い方法、支払い期)
 臨時の賃金、賞与、最低賃金臨時の賃金、賞与、最低賃金
 労働者負担とする食費、作業用品労働者負担とする食費、作業用品
 安全衛生安全衛生
 職業訓練職業訓練
 災害補償、業務外傷病扶助災害補償、業務外傷病扶助
 表彰制裁表彰制裁の種類程度
 休職制度
適用される社会保険  
労働者を使用する事業者名  
派遣労働者として雇用する旨  
受動喫煙防止措置  
  労働者すべてに適用される定め

就業規則に、たとえば就業場所の明示がありませんが、事業所単位でそこに働く労働者に集団的に規律する規則ですので、性格を異にしており、明示の必要はないわけです。雇入れ時に就業規則を交付してすますには、あなたを労働者として雇う旨、従事させる業務内容、契約期間に関する事項、就業場所、賃金額といった個別に適用される項目を補充する必要があります。中には就業規則でなく、求人票交付でいいかという質問も同様に、雇う旨、中列にあって左列にない事項の補充が必要でしょう。

労働条件の相違

求人票と雇入れ通知書の相違は、職業安定法違反虚偽求人企業として、刑事処罰の対象です(懲役6カ月、罰金30万円)。


65条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

八 虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者

九 虚偽の条件を提示して、公共職業安定所又は職業紹介を行う者に求人の申込みを行つた者


ところが雇入れ通知書と事実の相違は、刑事処罰の対象でなく、即日退職の権利を労働者に付与しているだけです。通知書そのものの不交付は30万円の罰金です。


(2022年5月22日投稿、2023年2月18日編集)

関連項目

労働条件通知書(有期雇用向け) 

労働条件通知書(無期雇用向け) 

雇用契約書と雇い入れ通知書 

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2022/05/03

法律の改正作法

 日本の法律はおよそ1900あるといわれています。国会の両院で審議され幾多の法案が法として成立し公布されていきますが、六法全書にかかれているような状態であるのは、制定されてから1度も改正されてない場合です。全面改正(旧法を廃し、新法を制定する)をするのでなければ、改正法は下記の表のような条文構成をとっています。溶け込み方式とも呼ばれ、見る人が見てもどこが改正されるのか、まったくわかりません。これをはじめて官報で見たときは、コンピュータープログラムのアップデート、現プログラムのどの位置のどの部分をどう書き換える(マージとかいいます)命令のかたまり、プログラミング言語そのものだと思いました。既存の法律を、別の法律で書き換えを命じる、そういう力関係にあるのでしょう。

労働基準法は昭和22年に制定公布され、その後幾多の「労働基準法の一部を改正する法律」という名の法律、または他の改正法の附則などに書かれているのを含めると、50はくだらないのでしょう。イメージで言うと昭和22年制定「労働基準法」+「労働基準法の一部改正する法律」+「労働基準法の一部を改正する法律」+「…」という約50個の法律を束ねた形が現行の労働基準法本来の姿です。六法全書で見かける現在形の「労働基準法」という法律文の状態ではありません。全書を編纂する出版社が、「一部改正法」が出るたびに、現在形の法律文を書き換えて次年の全書に掲載出版しているのが実情です。中には公布したが施行していない改正法を改正する「…法の一部を改正する法律の一部を改正する法律」といったものも(あるいは他の改正法の1条項として組み込み)でてくる始末です。

この溶け込み式をやめて新旧対照表の形でだそうという動きもあります。改正省令公布では見うけられますが、法案としては添付参考資料にとどまっています。

甲乙法の一部を改正する法律

第1条 甲乙法(昭和 年法律第〇号)の一部を次のように改正する。

  第〇条中「ABC」を「ADC」に改める。

  第□条第1項中「BCD」を削る。

  第n条を第n+1条とし、第n-1条の次に次の1条を加える。

  第n条 ASD…。

  第△条第m項を削り、第m+1項を第m項とする。

  第◇条第1項中、「
 
」を「
 
」に改め、「
 
」を削る。(※)

第2条 …

附則

第1条 この法律は公布の日から施行する。ただし第2条の規定は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

※:ボックスは、条文中表形式を用いる場合の例示です。また、行頭の高さ(官報は縦書き)位置も変更関係をあらわす重要な要素ですが、下記対照表を含めここでは踏襲していません。


甲乙法(昭和 年法律第〇号)一部改正の新旧対照表の例

  (参考:アンダーラインの引き方等、独自のルールがあるようです。)

改正後改正前

第〇条 ADCEFG。

第□条 HIJ、KLM。

第n条 ASD…。

第n+1条 NOPQ。

第△条 RSTU。

   (削る)

   ZZZ。

第◇条 (以下略)

第〇条 ABCEFG。

第□条 HIJ、BCDKLM。

   (新設)

第n条 NOPQ。

第△条 RSTU。

   VWXY。

m+1 ZZZ。

第◇条 (以下略)

最後に、昭和22年制定の労働基準法には、条番号はありますが、項番号はありません。行頭をさげて、あたらしい項をあらわしている形になります。六法全書の凡例と照らし合わせてみてください。

(2022年5月3日投稿、2023年11月18日編集)

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労働法関連の改正時期一覧 

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