2018/01/28

計画年休 運用上の論考

計画年休の詳細はネット上随所に解説されていますのでそちらを参照ください。ここでは、労使協定締結と時季指定権・時季変更権のかかわりや運用についての論考です。

計画年休の設定で、労使協定を要求(労基法39条6項)していますが、なにが労使協定特有の免罰効果があるのかというと、労働者・使用者双方にみとめた形成権(時季指定権・時季変更権)をはく奪しているからです。そして数ある他の労使協定と違うところは、実際の計画年休日を指定して労働者に権利義務を附帯する労働契約の一面をもちあわせています。他の労使協定には見られない特質です。

さて本題、計画年休日が到来して、5日しかもってなかった人がいたら、という質問をよく見かけます。

心配いりません。計画日にでなくその労使協定を締結した時点で、協定した計画年休日数分につき労働者の付与日数を減じることができます。減じて5日を割り込まなければいいのです。

一方で締結日には、5日+計画年休日数以上もっていたのに、計画日に5日割り込んでいたけど、特別の有給休暇あたえなければなりませんかという質問があります。先に述べたように、協定締結時点で労働者が保持する保有日数から5日残して計画日数分消滅します。ですので締結日から計画日までの間に、残りの保持日数を消費してしまっても、計画日においては消滅させた日数からあてがいます。

計画年休日到来前に消化しきった、というのは、日数管理のミス、といことになるでしょう。協定制定例にあるように、出社いただくか、特別の有給休暇付与することとなるでしょう。

具体例をあげていきます。

例)協定の年間計画日数 7日

締結日において

保持日数   消滅日数   消滅後の保持日数
 7日の人  2日消滅    5日保持(5日不足)
10日の人  5日消滅    5日保持(2日不足)
12日の人  7日消滅    5日保持
14日の人  7日消滅    7日保持

次に計画日が到来したら、締結時に消滅した休暇日をあてがいます。あてがいつつ不足していた人については、次の計画日と新規付与日の後先で次のように決せられます。

計画日が先:協定に記した「特別有給」「事業主責めの休業手当」「出社させて労務提供」といった措置
新規付与日が先:不足分が充当される。ただし最低5日を割り込めない。


毎年付与日を統一してする一斉付与のタイプですと、計画年休協定も同時に締結し、管理上計画日数分減じておくのが望ましいです。


いずれにせよ、計画年休日が到来する前に退職する人は、未到来の計画年休日数も休めることができますので、注意が必要です。

計画年休の労使協定は、他の労基法で定める労使協定とは意味合いが異なります。労使協定とは、違法行為に対し、要件をそろえば免罰される効果を生み出します。しかし協定だけでは、労使間になんらの権利義務は生じず、別途就業規則、労働協約による規定を必要とします。たとえば36協定だけでは、使用者の違法行為(法定労働時間を超えて労働を命じること)に対し、司法官憲の取り調べを免れるだけで、労働者には、時間外労働命令に従う義務は生じません。協定とは別途就業規則等の定めを必要とします。

しかし、この計画年休の労使協定にあっては、協定にとりきめた計画日において、労働者の時季指定権はく奪する(違法行為への免罰)だけでなく、その日において休むませるという拘束力も生じています。その点が、他の労使協定と違いがあります。


(2018年01月28日投稿、2021年10月2日編集)

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2018/01/14

振替休日と代休の違い

両者は、法定の制度ではありません。厚労省通達に言及ありますが、就業規則に規定して、取り扱い等労働条件としておく必要があります。以下厚労省通達をベースに回答します。

振替休日代休
事前に入替える労働日と休日を指定左記以外、休日に働いてから休む日を決める等
事前に入れ替えているので働いた日は労働日、休んだ日は休日働いた日は休日、休んだ日は労働日
週40時間超えた部分は時間外労働、変形週休制をとっていない場合、週外に法定休日を振り出すことはできない。変形週休制も同じく、特定4週外に法定休日を振り出せない。休日労働が、法定休日にあたれば、休日割増。法定外休日なら週40時間超えた部分は時間外割増。

振替休日とは

振替休日は、休日を労働日とする、あらかじめ使用者が命じる業務命令です。そのためには未到来の「休日」と「労働日」を日付特定し、入れ替え指示をします。これにより、入れ替えられた元休日は通常の労働日となり、元労働日は通常の休日となります。

後付けで指定したり、入れ替える日を特定しないでした命令は、単に休日出勤命令で、振替休日にはあたりません。それで休ませた場合は、次に述べる代休です。

振替休日によって、法定休日を週外、または変形週休制における特定された4週枠を超えて入れ替えすることはできません。また入れ替えにより、法定労働時間の週40時間を超えた労働は、時間外労働として、時間外割増賃金が必要です。

代休とは

休日労働した労働者に対し、後付けで通常の労働日を労働者が休めること、または使用者が休ませることをいいます。休日労働しなくとも累積した時間外労働を、ある一定の規則のもとで休みとする場合も、就業規則に規定し代休とする場合もあります。

代休日が、無賃または賃金控除するかは就業規則の定めるところによりますが、労働者が希望して代休する場合はノーワークノーペイが可能です。一方で、使用者が休ませる場合は、使用者責めの休業に該当しないものとして、就業規則に無給の代休の制度を制定しておく必要があります。いずれの場合でも、休んだ(休ませた)からといって、代休日が休日に転化しません。休んだ(休ませた)労働日は労働日のままです。

なお、休日労働につていは、代休させたとしても時間外労働・休日労働させた場合の法定割増賃金支払い義務は免除されません。ただし時間外労働にあたるかは、週40時間枠で判定するので、同一週に休ませた、あるいは同一週に年次有給休暇をとったなど、実働40時間に収まるなら、時間外労働にあたらない場合があります。

給与との関係

振替休日、代休共に労働日と休日の関係であって、その場合の賃金が支払われる控除されるのかは、お勤めの就業規則(支払い規定)によりますので一概にはいえません。おおよそのことを表にしてみました。

 振替休日代休
日給制働いた日数分の賃金がでる。時間外労働にあたれば、1.25倍割増賃金支払い。左に同じ。代休日は無給可
月給制変動なし。上表参照、時間外にあたれば、割増の0.25部分支払い。1.00部分は所定賃金として支払われているため。休日の賃金支払い、代休日の賃金控除
完全月給制上に同じ左に同じ

小学校の運動会

小中学生だった時分、日曜日運動会の振替休日がありました。それをそのまま大人の会社でも行っていいのだから、ここに書いた代休を振替休日と呼んでいいじゃないかと、お考えの方がいらっしゃいますでしょうか。

社内の制度をなんと呼称しようと社内に限り通用しますが、外部では国(厚労省)の通達をベースに論考が積み重なっていますので、それにあわせて質問しないと、語彙の齟齬を埋める手間、場合によっては無駄な論議に勃発してよけいな時間を食っていしまいます。

さて、小学生の運動会ですけれど、日曜運動会でお休みは翌日の月曜とあらかじめ日程が決まっているのが普通ですから、これはれっきとした振替休日です。日曜の運動会終わってから、さてお休みをいつにしようか(こちらが代休に相当)といっている学校はまずないでしょう。

日曜開催の運動会の振替も、ここでいう振替休日だということです。

(2018年01月14日投稿、2021年10月10日編集)

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1カ月単位の変形労働時間制における労使協定の意義

あとから制定された他の変形労働時間制(協定必須)との整合性?をとるために、元からあった1カ月単位の変形労働時間制にも、労使協定締結届け出(こちらは任意)を後付けで付け加えた制定経緯があるために、なんとも不思議な制度になっています。

正しくは、10人以上の事業場において

・就業規則
・労使協定

10人未満の事業場は上に加えて、

・就業規則にかわる書面

となります。ただそれぞれ概観すると、

就業規則による場合、制定(変更)する手続き(※後述)で導入完結します。

労使協定による場合、締結届け出手続きのほか、上、就業規則の整備が必要です。どうしてかというと、労基法の労使協定は労働条件の定めでなく、使用者触法行為の免罰書面でしかなく、労働者を従わせるには変形労働時間制による場合の労働条件を就業規則に盛らないといけないからです。その場合の、始業終業時刻、休憩時間、休日のありかたは、就業規則絶対記載事項でもあるからです。なお、労使協定による場合は、有効期限の定めが必要ですので、期限切れ前に再度協定締結するか、就業規則のみでも存続可能な様態にする必要があります。以上を見るに、一番柔軟なのは、協定によらない就業規則だけによる運用です。

最後に、就業規則にかわる書面による場合、制定周知で完結します。

※補足として、就業規則の制定(変更)は、形式要件としては周知意見書徴取、労基署届け出(10人以上事業所)ですが、労働者不利益変更にあたるので、実質要件である労働契約法に定めた変更手続きがかかせません。

最後に、就業規則単独で一か月単位を導入できるのに、後付けで労使協定可としたために、それによる場合はなんとも盲腸的な手続きとなります。ただ他の変形労働時間制(ただし清算期間1カ月以内フレックスは締結だけで協定届け出不要)も協定と就業規則のペアであるのは同様なのですが、協定締結は必須の位置づけであり、導入(有効期限のあるものは存続させるの)に協定手続きにおいて常に労働者をかませるのです。そこが1カ月単位のと違うところです。

(2018年1月14日投稿、2023年8月21日編集)

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2018/01/04

派遣受け入れ企業と2018年問題

派遣法と2018年問題は、問題意識のある識者による提起がいくつかネットで公開されていますので、詳細はネット検索されてそちらをご参照ください。それらはどちらかといえば、改正法の要点や5年超の無期転換をからめた解説、そして派遣元に重心をおいての記述です。

 

ここには、逆に受け入れ(派遣先)企業のとるべき対応を、メモ程度に書き置きします。書きかけ試行錯誤しますので、ご指摘あればなんなりと。

 

まず、派遣先台帳・契約書の綴りから受け入れ派遣社員のデータベースを作ります。事業所ごとに必要です。派遣先責任者は、他の事業所の派遣先責任者を兼ねられません。本社で一元管理をしても、事業所の長の受け入れ態勢の整備はかかせないでしょう。なお、受け入れ派遣社員を含め5名以下の事業所は派遣先責任者の設置を免れますので、直近上位の授業所派遣先責任者をあてるといいでしょう。

 

  • 派遣元名
  • 派遣契約年月日
  • 事業所名
  • 部課名
  • 派遣者名
  • 派遣開始日
  • 派遣終了日
  • 早期に終了したならその日

 

1の契約でも入れ替わりにあるいは同時に何人でも送り込まれてくるなら、その人員ごとに必要です。契約日も平成27年9月29日以前ですと、旧法の適用となります。旧法の抵触日は、事業所ごとに派遣先が認識していなければならないので、別作業となります。ただ、旧法の抵触日と、新法の派遣開始は接続しませんので、旧法の要求事項に対応すればよく、勘案不要です(厚労省FAQ第2集参照)

 

一方、新法で契約(平成27年9月30日以降契約)した派遣労働者で、派遣開始日から事業所単位の3年が起算されます。対象となる派遣労働者の派遣開始日からの起算となります。ただし次の労働者は対象となりません。詳しくは、上の第2集Q&Aを参照ください。下に記した派遣労働者だけとなった場合、抵触日のある派遣労働者が最後に就業した日から3カ月をこえてのクーリング期間成立したら、事業所単位の抵触日がリセットされます。合間が空かなかったら、当初の抵触日が活きます(あいた合間分抵触日はスライドしない)。

 

  • 派遣元を無期雇用されている派遣労働者
  • 60歳以上の派遣労働者
  • 派遣先有期の事業で終期が明確な事業に就労する派遣労働者
  • 育児介護休業者の代替派遣
  • 短時間就業(派遣先の一般労働者の所定日数半数以下でかつ月10日以下業務)

 

上2つは、期中で変更があれば派遣元から派遣先に変更内容を伝える義務がありますが、履行されたためしがありません。更新して、あるいは年齢到達してはじめて知りえますから、いつ切り替わったか、派遣元に確認が必要です。3年の期間計算に重要です。

 

個人単位の3年は、派遣元をかわっても、派遣先の就労する組織単位が同一なら通算します。ただ派遣先組織単位を違えれば、引き続き派遣受け入れできますが、次の注意が必要です。

 

・事業所単位の3年制限抵触日ひと月以上前に、事業所労働者過半数代表(過半数組織労働組合)を選出しての意見を聞いておく必要がある

・派遣社員の特定行為をしない(別のセクションにかわってもらうのに、特定目的行為をしてはなりません。派遣元と労働者が別セクションを希望するのであって、それに指名したり介入してはなりません)

 

事業所単位の派遣期間の延長は、3年以内の期間であれば、長さは自由に設定できます。これにより他の事業所で先に設定した延長期間と揃えるとこが可能です。あくまでも延長のほうであって、最初の3年は法で固定されています。

 

事業所単位、個人単位の3年制限の違いは、厚労省パンフを参照ください。

抵触日エピソード

事業所単位の抵触日平成33年10月1日と通知しましたら、その日付はありえないと派遣会社営業さんに言われたことがあります。

改正法施行日は平成27年9月30日でした。その日の契約で、翌日スタートした60歳未満有期雇用の派遣さんが複数いまして、その後3年間3カ月のクーリング期間成立することなく、入れ代わり立ち代わり派遣さんが出入りしました。

この最初の3年期間は法定ですので、H27.10.1~H30.9.30が受け入れ可能期間、翌日が抵触日になります。抵触日が近づく1カ月以上前に事業所労働者代表の意見をきいて更新させました。この更新後の受け入れ期間は3年以内の任意の期間を決めることができるので、派遣先は他事業所の抵触日とそろえることが可能です。

この時あらたに3年ちょうど受け入れ期間を延長しましたので、H33.9.30までとしました。翌日が抵触日です。派遣の営業さんは勉強熱心なかただったのでしょうが、改正法施行日を1日おそく勘違いされていたようです。

(2018/1/4投稿 2021年9月22日編集)

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