2022/10/16

就業規則案内見本

各労働局の就業規則手続き案内を探索してみましたら、貧弱なページが大半(なかには作りかけなのか「就業規則」というタイトルだけも)でした。そこで秀逸な北海道労働局さんのページをベースに、せめてこれくらいのページは作成をしてもらおうと、ここに応援ページをつくりました。

就業規則を作成したら届出、周知しましょう

 就業規則とは、労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律などについて定めた職場における規則集です。職場でのルールを定め、労使双方がそれを守ることで労働者が安心して働くことができます。あわせて労使間の無用のトラブルを未然に防ぐことができるので、就業規則の役割は重要です。

1 就業規則を作成しましょう

 常時10人以上の労働者を使用している事業場では、就業規則を作成する義務があります。複数事業場をもつ事業者は、企業共通の就業規則であっても常時10人以上の労働者を使用している事業場ごとに作成する義務があります。(労働基準法第89条)。

※「10人以上の労働者」には、正社員だけでなく短時間労働者、有期契約労働者なども含まれます。送り出しする派遣労働者を含み、受け入れている派遣労働者を含みません。在籍出向者は受け入れ送り出し双方の事業者に含みます

2 就業規則の記載に関する事項

 就業規則に記載する内容には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、当該事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)があります(労働基準法第89条)。

◎必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)

  1. 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
  2. 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項(臨時の賃金等を除く。)
  3. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

◎定めをする場合に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)

  1. 退職手当に関する事項
  2. 臨時の賃金(賞与等)、最低賃金額に関する事項
  3. 食費、作業用品など労働者に負担させる場合、それに関する事項
  4. 安全衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰、制裁に関する事項
  8. その他全労働者に適用される事項

退職金や育児介護休業の定めを就業規則とは別規定にできますが、就業規則の一部ですので、制定したり変更した都度、届け出周知の手続きが必要です。

 モデル就業規則はこちら(厚生労働省サイトへ)

 就業規則作成支援ツールはこちら(スタートアップ労働条件)

3 労働者代表の意見を聞きましょう

 常時10人以上の労働者を使用している事業場をもつ事業者が就業規則を作成、変更したときは労働者に提示して、事業場の過半数組織労働組合がなければ事業場の労働者の過半数代表を選出してもらいましょう。事業場過半数組織労働組合または過半数労働者代表からの意見を聞き、意見書に記入してもらいましょう(労働基準法第90条)。意見は本社だけでなく、労働者10名以上使用する事業所ごとに労働者代表を選出、意見を聞かなければなりません。

4 就業規則を届け出ましょう

 常時10人以上の労働者を使用している事業場が就業規則を作成したときは、過半数組織労働組合または労働者の過半数代表者からの意見書を添付し、所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。就業規則を変更したときも同様です。(労働基準法第89条、90条)。本社だけでなく、労働者10名以上使用する事業所ごとに作成届け出をお願いします。

 管轄監督署はこちら(〇〇労働局管内労働基準監督署一覧のページへ)

 就業規則(変更)届・意見書の用紙はこちら(厚生労働省サイトへ・任意様式)

注:就業規則本体に変更はなく、別冊の育児休業規定の変更を例にしました。制定だけの場合は、届出書、意見書、制定規定の組み合わせになります。
        
  育児休業規定(本文) 
  新旧対照表(変更時) 
  意見書 
 

就業規則(変更)届    

  
 
  
 
  
   
   

 就業規則届は2部(うち1部は写しでかまいません。)提出していただいています。受付印を押し、1部を控えとしてお返ししています。管轄の労働基準監督署への郵送での届け出も受付します。2部送付する場合は、控え返戻用の返信封筒(切手貼付、返信先明記)を同封ください。

 電子申請もできます。申請方法はこちら

 本社から全事業所一括申請もできます。申請方法はこちら

5 就業規則を労働者に周知しましょう

 制定、変更した就業規則は、労働者に周知しなければなりません。周知していない就業規則は、有効になることはありません。締結した労使協定もあわせて周知しましょう(労働基準法第106条)。

◎周知方法

(1)常時各作業場の見やすい場所に掲示する、または備え付ける。

(2)書面で全労働者に交付する。

(3)電子的データとして記録し、かつ、各作業場に労働者がその記録の内容を常時確認できるパソコンなどの機器を設置する。


※ご不明な点は、〇〇労働局労働基準部監督課または最寄りの労働基準監督署にお尋ねください。


以上、未製の各労働局様のための応援ページでした。

(2022年10月16日投稿)

関連項目

労働者過半数代表 

就業規則制定(変更)届 

新設の社内規定は、就業規則の一部なのか 

労働局の就業規則案内 

表の表示が崩れる場合は、横長画面か、ウェブバージョンでご覧ください。

2022/10/12

新設の社内規定は、就業規則の一部なのか

社内規定をあたらしく作ったのはいいのですが、これが就業規則の一部として、意見書整えて労基署に届け出する規定なのか迷うことがあります。

たとえばハラスメント防止規定というものを作ったとしましょう。就業規則の一部なのでしょうか、いやいやそれは中身の条文によります。担当窓口は何課が受け持つ、相談を受け付けたら速やかに事実調査といった内容が書かれていると思いますが、労働者の権利義務に言及すると、これは就業規則にあたります。「調査を受けた労働者は協力しなければならない」、「受けた調査の内容を他言してはならない」、といった労働者に何かをさせる内容を含んだ条文です。

そこで言い回しをうまく工夫することで、手続き規定としての社内規定として制定できます。さきほどの文言は、主語を労働者からはずし、「調査担当者は、関係者から個別に呼び出して事情を聴取する」「担当者は、聞き取り内容について他言しないように、調査に先だって伝える」とする工夫です。

どうしても労働者への規律として必要であれば、別規定(あるいは就業規則に1章立てして盛り込む)の2本立てにします。制定した規定のうちその部分を就業規則としての制定変更の手続きをし、のこる純粋の社内の手続き規定を外部に露出することもなくなります。

(2022年10月12日投稿、2022年10月16日編集)

関連項目

労働者過半数代表 

就業規則制定(変更)届 

労働局の就業規則案内 

就業規則案内見本 

労働法関連の改正時期一覧 

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