2022/04/16

36協定に書く数字

働き改革法により新調された36協定。締結できる協定時数が、法定されました。その法定時数こえた協定は結んでも全体が無効です。そこで入り組んだ時間数を表にして区別してみました。任意記載欄は記載しなくともよいので、略しています。一般条項なる呼称は、特別条項に対して名付けています。

 協定できる上限個人を働かせ
られる上限
休日労働を含み月100時間未満、2カ月~6カ月平均80時間以下※3
一般条項時間外労働上限なし※45(42)時間※1360(320)時間
休日労働上限なし※2
特別条項時間外労働(記載任意)年間6回最右欄
参照
720時間
休日労働 ※4 

※:日の上限は論理上翌日始業までにあたる15時間(=24時間-法定8時間-休憩1時間)

※1:カッコ内は、変形期間3カ月超の1年単位の変形労働時間制をとる場合の上限(右隣年枠についても同じ)。

※2:(下記記事参照)

※3:年間協定時数(回数)は、協定期間が終了すればリセットされるが、この2カ月ないし6カ月平均80時間算出は改正法適用期間であるかぎり前協定期間までさかのぼり算出する。雇用主が異なっても適用されます。よってこの情報は5カ月前にさかのぼり本人同意を得て前雇用主に情報提供いただくか、または本人に自己申告してもらうことになります。(なぜ6カ月でなく5カ月かは下記「参考記事」参照ください。)

※4:日の上限の特別条項記載が任意になっています。一般条項でめいっぱい上限時数を設定し、日の特別条項記載しない方が無難です。記載してしまうと、日勤者であれば、一般条項の限度時数をこえる夜中に、特別条項発動手続きに関係者を巻き込むことになるからです。

法定休日の日数

ここでいう休日労働とは、法定休日のことで、0時から24時までの時間帯の労働時間が対象です。一方法定休日労働は、日8時間週40時間という法定労働時間をこえてはじめて時間外労働にあたります。この欄への記載日数について、月を単位にすると法定休日の最大出現数は次のようになります。

 曜日固定曜日不定
週休制5日6日
変形週休制5日8日
割り増し率

特別条項を協定する数字には、一般条項の限度時間数をこえた最大時数だけでなく時間外割増賃金の割り増し率があります。上の表の※1協定した時間を超え、月60時間(年720時間)までの時間外労働に対して、割増率2割5分増し以上の率を定めます(労基法37条2項5号、同法施行規則17条1項6号)。

(2022年4月16日投稿、2023年11月15日編集)

参考記事

36協定のチェックボックス 

月間時間外集計 

36協定における休日の限度時間 

2カ月ないし6カ月平均 

時間外労働のカウント 

法定休日とはいつか 



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2022/04/14

労働保険・社会保険の任意適用

労働保険は、おもに労災保険と雇用保険とで構成されています。強制適用ながら、わずかに任意適用と言って、適用が強制されず、事業主が手続きすることで適用となる事業があります。保険適用の手続きしていない事業主に雇われていても、労働者である限り、業務上被災、通勤災害による労災保険給付は労働者が請求すれば保険給付されます。ところが任意適用で未適用の事業主雇われていれば、労災保険給付されません。そこで、任意適用の事業をリストアップしておきます。労災と雇用とではわずかに違いがあるようです。


労災保険の暫定任意適用事業

個人事業者で5人未満の労働者を使用する
 ・農業(特定の危険又は有害な作業を主として行う事業を除く)
・畜産
・養蚕
・水産(総トン数5トン以上の漁船による事業を除く)
・林業の個人事業者で常時労働者を使用しないか、しても年間延労働者数が300人未満

雇用保険の暫定任意適用事業

個人事業者で5人未満の労働者を使用する
 ・農林の事業(土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採他)
・畜産、養蚕又は水産の事業(動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖他)

社会保険の任意適用

これが社会保険(健康保健・厚生年金保健)の任意適用となるとよくわからなくなります。法人は強制適用ですが、

種別5人未満5人以上
法人事業全事業強制適用
個人事業※下記の事業任意適用強制適用
※以外の事業任意適用
a製造業、b土木建築業、c鉱業、d電気ガス供給事業、e運送業、f清掃業、g物品販売業、h金融保険業、i保管賃貸業、j媒介周旋業、k集金案内広告業、l教育研究調査業、m医療保健業、n通信報道業

a~nの事業で5人以上使用する個人事業は強制適用。そして「※」以外の事業とは何なのか、そこで、年金機構の説明は

・個人事業者で5人以上使用する事業所で、サービス業の一部(クリーニング業、飲食店、ビル清掃業等)や農業、漁業等の事業

となっていました。令和4年10月からは、5人以上使用する士業(弁護士事務所等)は強制適用となります。ということは9月まではサービス業の一部に属していることになります。

なお社会保険には、事業所の任意適用のほかに、被保険者としないケースを定めています。

日々雇入れられる者引き続き1カ月超えて使用される場合、1カ月超えた日から被保険者となる
2カ月以内の雇用契約2カ月超えて使用される見込みのある場合は、雇入れ当初から被保険者となる
所在が一定しない事業に雇用される者例外なし
季節的業務(4カ月以内)4カ月超える見込みの場合は、雇入れ当初から被保険者となる
臨時的事業所(6カ月以内)同上(6カ月)

(2022年4月14日投稿、2023年10月2日編集)

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2022/04/02

労働者過半数代表

労働基準法の中には、労使協定の締結、就業規則の意見聴取するための労働者代表が登場します。その役割についてまとめてみました。

労側代表者

法第41条管理監督者でないこと(その事業所に管理監督者しかいない場合、締結できる協定(たとえば強制貯金協定、賃金控除協定)により、管理監督者の中から選出することになります。)

過半数代表者、代表になろうとした人、代表としての正当な行為にたいし、不利益取扱をしてはならない。不利益取扱には、解雇、減給、降格等が含まれる。正当な行為としては、締結拒否、1年単位の例外運用の不同意が含まれる

締結手順

次の事項を明らかにして選出される選挙等であること。

  • 労使協定の締結当事者
  • 就業規則の制定変更につき使用者から意見を聴取する労働者

使用者の意向によって選出されるものでないこと

選挙、挙手等のほかに労働者の話し合い、持ち回り決議等、労働者の過半数が当該者の選出を支持することが明確である民主的な手続きです

派遣労働者は派遣元との協定は、派遣事業所の労働者と派遣中の労働者を含む。派遣先が異なり意見交換の機会がない場合、労働者代表の選出と合わせ意見希望を集約することが望ましい

事業場ごとに過半数組織労働組合があれば、本社において会社と組合とが締結した協定に事業所ごとの協定事項を網羅してあれば、それをもって事業所所轄労基署に届出て差し支えない

複数の事業所のうち、事業所労働者過半数で組織する労働組合がある事業所は、組合代表者と事業主とで同一内容の協定を締結することができる。組合員過半数に達しない事業所においては、その事業所の過半数代表の選出が必要。この場合に、会社側当事者は事業所の使用者代表でも、会社代表でも可

過半数要件

その事業所に労働者過半数組織組合がある場合、その組合と締結すれば足り、その他の組合と協定する必要はない

要件を具備していれば、使用者、第1組合、第2組合の連署も可

事業所に常用労働者と日雇い労働者がおり、常用労働者がその事業所の過半数を代表するなら、そのものとの締結で足りる

事業所の労働者過半数が加入する労働組合であれば、支部分会代表が設置されていなくとも、当該組合との締結が必要

労働者の範囲は協定の対象者限定でなく、事業所に所属する管理監督者、病欠、出張者、休職者すべてを含む

送り出し派遣社員はカウントに入るが、受け入れ派遣社員は人数にはいらない。ただし一斉休憩時間除外協定は、受け入れ派遣社員を含む。

短期の有期雇用者を雇入れこれらを含めた締結時点の労働者過半数代表であれば足りる

労使協定の効力

労使協定の効力は、協定に定めるところにより労働者を使用しても労基法に違反しないとするものであって、労働者の民事上の義務は協定から生じるものでなく、就業記憶、労働協約に根拠をおく

私見

以下は、通達等を読んで導き出した私見です。すでに通達が出ていた場合、確立した判例がある場合はそれが適用されます。

過半数組織労働組合と締結した労使協定は、その後組合が過半数割れを起こしても、協定の効力に影響はありません。一方でユニオン・ショップ協約をむすんだ労働組合が、過半数割れをおこすと、その労働協約は失効します。

事業所の一部の労働者に適用される協定、就業規則は、適用される労働者の過半数でなく、事業所の所属労働者の過半数です。なお、事業所のパート有期労働者に適用される場合、その労働者群の過半数の意見をきくことが努力義務となっていますが、労基法の手続きを経てない限り、その代替とはなりません。

労働組合は常設機関ですが、労働者代表は一部を除き、常設機関ではありません。上の見出し「締結手順」の通達にもあるように、締結等必要な都度、案件を明らかにして選出手続きを経ねばなりません。それをすることがない任期制等の労働者代表等は、案件を民主的手続きをもってもんでいない以上、労働者代表に締結権限は生じません。

常設を予定される労働者過半数代表

  • 1年単位の変形労働時間制における労働日・労働時間の例外運用における同意者
  • 労使委員会の労側委員の欠員補充

企業全体で共通した協定(就業規則)であっても、本社で過半数従業員代表と締結しただけでは、その効力は締結した本社のみしかありません。いわゆる選挙権者(投票権のある人)は、事業所ごとにカウントし過半数を認識し、その事業所ごとの過半数でもって選出させます。一方被選挙権(いわゆる立候補、選ばれる人)は、事業所内に限定されず、事業所の過半数が信任するなら本社の労働者が選出されることもありえます。また複数事業所をもつ企業全体の労働者過半数といった選出は無効です。あくまで本社に属する人数、支店に属する人数の過半数です。

代表を選出させようと苦労することがあります。あらかじめ立候補がない場合は、会社推薦することがあるとしておき、立候補がでなければそこで推薦者の信任を事業所労働者たちに取り付ければいいことになります。会社が推薦してそのままでは労働者代表にはなりえないということです。

(2022年4月2日投稿、2024年3月24日編集)

関連項目

労働局の就業規則案内 

就業規則制定(変更)届 

労使協定の協定項目 

労働協約と労使協定 

労使協定 

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