2017/10/15

労使協定

労働諸法にいう労使協定の締結について、締結手順について記載します。多くの使用者は便宜的にえらんだ代表とはいえない労働者に盲目的にサインさせて済ませていますが、有効期間中に紛争に発展して否定されては、使用者の免罰効果が生じず、労働犯罪者として処罰されかねません。

注意 なおここに記載した事項についてはなんらの保証を与えるものではありません。

まず、労使協定で誤解のもっともたるものは、「本社で締結すれば、支店・工場、末端の営業所に至るまで有効である」ということはありません。こういったパターンで有効に締結する手順も後述します。企業全体で過半数組織組合があっても、ある事業場で、労働者の過半数にたっしていないない事業場には効力はありません。そういった事業場には、別途下にのべる過半数労働者代表を選出する必要があります。

また、労働協約と区別がつかない、あべこべに使用する人がいます。労働協約とは、労働組合との合意文書のことです。その組合が事業場の労働者過半数を占めており、かつ労働諸法で言及のある協定であってはじめて、労使協定であり労働協約といえます。労働諸法に定めのない条項を過半数組織組合と締結しても、それは労働協約ですが、労使協定ではありません。また過半数に達していないのに、書面にしても協約ですが、労使協定を締結したことになりません。

前置きが長くなりましたが、手順です。

1.締結する協定内容を事業場に周知し、過半数の信任を得た代表を選ぶように促します。

ここでの過半数を計算する総労働者数は、その事業所の正社員、パートアルバイトを含みます。部長といった法41条管理監督者でも労働者数に入ります。派遣されてきている労働者は含みませんが、派遣されよそで働きに出ている自社社員を含みます。また在籍出向社員は、受け入れ送り出し双方に含みます。以上は、いわゆる選挙権で言う投票権者です。その数を集計して事業所の過半数がいくらであるか計算することになります。

次に立候補者にあたる被選挙権者に、法41条管理監督者を選ぶことはできません(ただし例外有)。いわゆる管理職者もこのましくないでしょう。この選出過程で、周知された内容を吟味させる意味合いもあります。複数立候補者が競い合うことで、自分の意見にそう立候補者を選ぶ、という民主的過程が大事です。なお、選挙権者は、その事業場に所属していることが絶対要件ですが、一方被選挙権者に管理監督者でない者という制約以外はありませんので、支店の従業員が、立候補した本社の同僚を選出する、というケースも可能です。

互助会代表を指名するのは不可、という解説が見受けられますが、会社が推薦指名したうえで、上の選出過程に会社が関与せずに事業所労働者過半数の信任をえさせれば、何の問題もありません。問題なのは、選出過程を踏んでないことです。

2.選ばれた代表と、協定内容を協議します。持ち帰りたい、ということであれば拒否できません。事業所規模によりますが1週間なり10日なり期限を切るといいでしょう。締結拒否されればそれまでです。

3.合意に達すれば署名押印します。協定書のそれぞれの控え、正副2部とりかわすようにします。協定書は就業規則同様、周知義務がありますので、事業場の労働者の見えるところに掲示するなりします。労基署届け出義務のある協定は、協定届を作成、届け出します。

協定の代表例(*は労基署要届け出、類似の制度を含む)

労働基準法関係
・賃金控除
*36協定(届け出受理が効力発生要件)
*変形労働時間制
・フレックスタイム制
・年次有給休暇の計画取得

育児介護休業法関係
・育児介護休業対象外労働者

高年齢者雇用安定法
・継続雇用の選定基準(H25.3.31までに締結のこと)

派遣法

・標準賃金(派遣元)

・受け入れ可能期間の延長(派遣先)

助成金関係にも労使協定がうたわれていますが、上の手順が必要です。

最後に、本社の協定が各事業所にも共通としたいなら、各事業所においても、本社選出代表を指名推薦したうえで、各事業所で過半数信任の選出過程を踏ませれば、企業単位の統一した協定書の締結が可能です。ただし、届け出義務のある協定は、届け出に耐える書面にして、事業場ごとの労基署に届け出ておくことが肝要でしょう。届け出を要しない場合でも、後々の紛争に備え、選出過程をふんでいることの証憑を残しておくことも必要です。

(2017年10月15日投稿、2021年12月26日編集)


関連項目

労働者過半数代表 

就業規則制定(変更)届 

労使協定の協定項目 

労働協約と労使協定 

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