2023/04/19

労働関係書類の保管期間

令和2年の法令改正で、改正民法にあわせ労基法の時効が2年から5年(当分3年)に延長されました。その案内Q&A中に、保管義務をさだめた書類である「その他労働関係に関する重要な書類」の一覧が示されました。

 種類書類例保管起算日
労働者名簿労働者の死亡、退職、解雇の日
賃金台帳最後の記入をした日※
雇入れに関する書類雇入決定関係書類、契約書、労働条件通知書、履歴書、身元引受書等労働者の死亡、退職、解雇の日
解雇に関する書類解雇決定関係書類、解雇予告除外認定関係書類、予告手当または退職手当の領収書等労働者の解雇の日
災害補償に関する書類診断書、補償の支払、領収関係書類等災害補償を終わった日
賃金に関する書類賃金決定関係書類、昇給・減給関係書類等書類記入完結の日※
その他労働関係に関する重要な書類出勤簿、タイムカード等の記録、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類(使用者自ら始業・終業時間を記録したもの、残業命令書及びその報告書並びに労働者が自ら労働時間を記録した報告書)、労使協定書、各種許認可書、退職関係書類、休職・出向関係書類、事業内貯蓄金関係書類等書類記入完結の日※

上記のほか、保管期限が同様に延長される書類として、次の書類があります。

⑧時間外・休日労働協定における健康福祉確保措置の実施状況に関する記録(則第17条第2項)
⑨専門業務型裁量労働制に係る労働時間の状況等に関する記録(則第24条の2の2第3項第2号)
⑩企画業務型裁量労働制に係る労働時間の状況等に関する記録(則第24条の2の3第3項第2号)
⑪企画業務型裁量労働制等に係る労使委員会の議事録(則第24条の2の4第2項)
⑫年次有給休暇管理簿(則第24条の7)
⑬高度プロフェッショナル制度に係る同意等に関する記録(則第34条の2第15項第4号)
⑭高度プロフェッショナル制度に係る労使委員会の議事録(則第34条の2の3)
⑮労働時間等設定改善委員会の議事録(労働時間等設定改善法施行規則第2条)
⑯労働時間等設定改善企業委員会の議事録(同第4条)

今回の労基法改正で、賃金債権が2年から当分3年に延長されましたが、関係書類の保管期間は元から3年でしたので、実質延長は、賃金債権にからむ起算日に関連して、次の書類の記入完結の日よりも、その書類にかかる賃金支払日がおそい場合は、賃金支払い日が保管期限の起算日となる変更となります。たとえば、3月20日締め3月中に記入完結しても、4月10日支払なら、後となった支払日が起算日です。

②賃金台帳
⑥賃金に関する書類
⑦その他労働関係に関する書類
⑨~⑯(上記参照)

出典:改正労働基準法に関するQ&A(令和2年4月1日)

(2023年4月19日投稿、2024年1月9日編集)

表の表示が崩れる場合は、横長画面か、ウェブバージョンでご覧ください。

2023/04/15

36協定における休日の限度時間

時間外労働させるに必要な36協定は、労働者過半数代表選出し、代表との36協定を締結し、労基署届出て効力を発します。届出で発効する点が、他の労使協定と異なります。

その記載事項に、日の限度時間を記載する箇所があります。ただ月、年とは違い、締結する日の限度時間数に上限は法定されていません。そこを3時間でも4時間とでも記載したら、その時間超えての時間外労働はできません(理論上は日15時間が上限)。

で、休日労働させた場合はどうなのか、たまに質問を目にします。ここでいう休日労働には、法定休日労働と、法定外休日労働とがあります。前者は、36協定届の一般条項枠欄下部に記載します。必須ではありませんが協定で時間数取り決めたなら、それに縛られることになります。後者は、法定外休日労働のすべてが時間外労働となるわけでなく、日8時間、週40時間超過したところから時間外労働です。

そこで本題、日3時間限度と記載したなら、週40時間すでに働ききった週の法定外休日労働そのものが3時間しかできないのか、という疑問がわきます。協定のしかたにもよりますが、ただ単に3時間と取り決めた場合、8時間超過したところからが日の限度時間の対象となります。あわせて11時間労働が可能です。

ただし、週40時間使い切っている場合、始業から時間外労働ですので、他の協定枠、週(任意)、月、年の限度時間を超過することはできませんので、その点は注意が必要です。

余談として、働き方改革で36協定届様式が刷新され、月、年の限度時間(一般条項)が法定されたのですが、これらを超えて働かせる場合の特別条項に、日枠欄が出来たのには正直驚きでした。日枠に法定上限がありませんので、はっきり言って、任意欄は書かない方が無難です。日は一般条項欄で多めに取っておかれるといいです。その欄に3時間とし越えそうだったら特別条項発動にさいし、記載された手続きをとるに、上司がからむなら、夜間お休みしている上司に延長していいか連絡が入るはめになるからです。

(2023年4月15日投稿)

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法律条文のてにをは

法律文は、ときには準用やら置き換え、読み替えで、政令への委任条項と、要件効果を読み通せないことかぎりない(読みこなせば限りはあるのでしょうけど)のですが、単純にして悪文といえるのもあります。たとえば、比較的平易な条文がつづく労働契約法の中で、13条はどうでしょう。

(法令及び労働協約と就業規則との関係)
第13条 就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第7条、第10条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。

何をいいたいか、一読してわかりますでしょうか。主語が2つあるようですし、「については」も2つあります。見ようによっては、「てにをは」の「が」のあとに「は」が4つ並んでいます。 意訳してみたらこんな感じでしょうか。

就業規則が、
  • 法令
  • 労働組合との書面で同意した労働協約
に反する場合
就業規則のその反する部分は、より有利な法令又は労働協約を適用するのであって、
この法律により、労働者の労働条件において就業規則が適用される場合があるとする、
  • 労働契約を結ぶにあたり就業規則の役割を定めた第7条
  • 個別合意なく就業規則を変更する手続きを定めた第10条
  • 就業規則におとる労働契約の無効を定めた第12条
 就業規則の該当部分については、この3条を適用しない

としています。法や協約に反する部分なのですから、この法で適用するという効果を排除しているのです。

(2023年4月7日)

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労基法上の歩合給

労基法では「出来高払制その他請負制」によって定められた賃金について規制を設けています。歩合給もその一種ですが、労働者のがんばりにどう報いるかは、導入する企業の各社各様です。ここでの説明では、「歩合給等」で統一します。

平均賃金計算

歩合給等も日給・時給とあわせて、平均賃金計算のうえで、計算期間中の労働日数で除した6割という最低保証の対象とします(労基法12条1項1号)。

時間外等の時間単価

歩合給等の総額を、給与計算期間の総労働時間で除した額をもって時間単価とします(施行規則19条1項6号)。他の日給や月給の賃金手当と違うところは、月間所定労働時間ではなく、歩合給の対象とした総労働時間で除すことです。総労働時間をかけて稼ぎを生み出したとみなし、割増賃金の1.25倍のうち、1.00部分は歩合給本体として支給済みと考えます。なお特定の労働部分に対する歩合給等ですと、総労働時間でなくその労働時間とします。

 【時間外割増賃金】
時間単価×1.25
×時間外労働時間
【所定賃金】
← 所定労働時間 →← 時間外労働 →
 
 割増部分 0.25
【歩合給】
←  所定労働時間  +  時間外労働  →

年次有給休暇

年次有給休暇をとった日の休暇日賃金を、所定労働時間分の賃金とする場合は、歩合給等も計算の対象とします。休暇した日に成果をあげていないのだから支払わないということができません。

歩合給等の総額を、給与計算期間の歩合給の対象とした総労働時間で除した額をもって時間単価とします(施行規則25条1項6号) なお、この期間に出勤がなく歩合給がない場合は、直近の額(最後に支払った額)を採用します。この点が時間外労働等時間単価算出とは異なるでしょう。

保障給

成果に見合う歩合給は無し、賃金を一銭も支払わないということができません。働いた時間に応じた一定額を保障し、賃金支払いをせねばなりません(法27条)。

最低賃金

最低賃金算出においても、歩合給等は算入対象です。その計算期間の歩合給の対象とした総労働時間で除した額になります(最賃法施行規則2条1項5号)。

(2023年4月1日投稿)

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